第17話:境界を越えて
風が、違う。
クロエは、立ち止まる。
「……ここ」
⸻
セレナが周囲を見る。
崩壊も、歪みもない。
普通の街。
人がいる。
生活がある。
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「……外側の影響が薄い領域」
エルが解析する。
クロエが、小さく笑う。
「なんか、久しぶり」
子どもの声。
笑い声。
それが、妙に遠く感じる。
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セレナは、少しだけ目を細める。
「……観測対象ではない世界」
クロエが肩をすくめる。
「普通ってやつでしょ」
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その時。
一人の少年が、転ぶ。
小さなこと。
誰も気にしない。
だが――
クロエは、反射的に手を伸ばしかける。
止まる。
ほんの一瞬だけ。
「……」
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セレナが見る。
「どうした」
クロエが、軽く笑う。
「いや、別に」
だが――
その目は、ほんの少しだけ揺れていた。
エルが静かに言う。
「行動選択、変化確認」
クロエは何も答えない。
ただ、歩き出す。
⸻
⸻
少し離れた場所。
人気の少ない路地。
エルが、ふと立ち止まる。
「……違和感」
セレナが反応する。
「何だ」
エルが、空間を見る。
「観測ログに、ズレ」
クロエも気づく。
「……またか」
⸻
空気が、ほんの僅かに歪む。
だが――
戦闘になるほどではない。
エルが解析する。
「外側干渉ではない」
「より弱い……だが、似ている」
セレナが呟く。
「……上位の影響か」
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その時。
路地の奥から、声。
「……見えた」
三人が、同時に振り向く。
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そこに、一人の少女が立っている。
普通の服。
普通の存在。
だが――
「……今、揺れたよね?」
⸻
クロエが、目を細める。
「……見えてるのか」
少女は頷く。
「ちょっとだけ」
エルが即座に解析する。
「観測感度、異常値」
セレナが問う。
「なぜ認識できる」
少女は、首をかしげる。
「分かんない」
⸻
そして――
クロエを見る。
じっと。
「……似てる」
クロエが眉をひそめる。
「何が」
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少女は、少し迷ってから答える。
「……一つだった、みたいな感じ」
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その言葉に。
空気が、止まる。
セレナの瞳が揺れる。
エルが沈黙する。
クロエだけが、動かない。
「……は?」
軽く返す。
だが――
その奥で、何かが引っかかる。
⸻
少女は、それ以上何も言わない。
ただ、笑う。
「変なこと言ってるよね」
クロエが、小さく息を吐く。
「ほんとにな」
だが――
否定はしない。
できない。
⸻
セレナが静かに言う。
「……記憶か、感覚か」
エルが続く。
「未確定情報の外部漏出の可能性」
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少女は、手を振る。
「じゃあね」
去っていく。
何事もなかったように。
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静寂。
クロエが、ぽつりと言う。
「……なんだよ、それ」
セレナが答える。
「ヒントだ」
短く。
クロエが笑う。
「雑すぎるだろ」
だが――嫌じゃない。
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エルが記録する。
「新規観測対象、確定」
クロエが空を見る。
揺らぎは、まだある。
だが――
形が変わってきている。
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「……広がってるな」
セレナが頷く。
「ああ」
エルが補足する。
「未確定領域、外部へ浸透開始」
⸻
つまり――
世界そのものが、変わり始めている。
⸻
クロエが、小さく笑う。
「面白くなってきた」
セレナが並ぶ。
エルが続く。
三人が、歩き出す。
もう、止まらない。
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境界は、曖昧になる。
世界は、繋がっていく。
そして――
“選択”は、さらに広がる。
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