第16話:選択の余白
風が、静かに吹いていた。
戦いの跡。
だが――完全には戻っていない。
空は、揺らいでいる。
見えない“歪み”が、残っている。
クロエは、それを見上げていた。
「……終わった?」
誰にでもなく、呟く。
セレナが、隣に立つ。
「一応な」
短い返答。
だが、その視線も――同じ場所を見ている。
完全には、消えていない。
「……残ってる」
クロエが言う。
エルが応じる。
「観測不能領域、微弱残存」
つまり――終わっていない。
セレナが、小さく息を吐く。
「だが」
一歩、前に出る。
「前よりはマシだ」
クロエが笑う。
「それな」
軽く肩を回す。
痛みはある。
だが、動く。
「……ちゃんと戻ってる」
オッドアイが、静かに光る。
不安定ではある。
だが――消えていない。
セレナが見る。
「制御は?」
クロエが肩をすくめる。
「半分くらい」
正直な答え。
エルが補足する。
「推定制御率、約60%」
「……まだ危ないな」
セレナが呟く。
クロエが、少しだけ笑う。
「でもさ」
空を見る。
「一人じゃないし」
セレナが、わずかに目を細める。
「……ああ」
エルが続く。
「共同制御、安定」
沈黙。
だが――悪くない。
その時。
風が、止まる。
ほんの一瞬。
三人が、同時に空を見る。
「……今の」
クロエが呟く。
エルが反応する。
「外部観測反応、微弱」
セレナが、静かに言う。
「……まだ見てるな」
だが――恐れはない。
クロエが、軽く笑う。
「いいよ」
一歩、踏み出す。
「見てるなら、見とけばいい」
その言葉は、強かった。
セレナが並ぶ。
エルが追従する。
三人が、同じ方向を見る。
世界は、まだ揺れている。
だが――止まってはいない。
クロエが言う。
「選ぶよ」
短く。
だが、確かに。
セレナが頷く。
「続ける」
エルが記録する。
「選択継続、確認」
未来は、まだ未確定。
だからこそ――意味がある。
風が、再び吹く。
今度は、穏やかに。
戦いは、終わった。
だが――
物語は、続く。
選択もまた――終わらない。
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