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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 ~終わりを選び、未来を奪い返せ~  作者:
第二章:未確定領域 ― 選択の連鎖

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第1話:外側侵入


空は、静かだった。

――そのはずだった。

「……来る」

クロエが呟いた瞬間。

音もなく、空が“剥がれた”。

青が裂ける。

その奥にあるのは、空ではない。

色にならない色。形にならない何か。

“外側”。

次の瞬間。

地面が消えた。

「っ――!?」

クロエの足場が、存在ごと抜け落ちる。

だが落ちない。

落ちるという“結果”が、成立しない。

「なにこれ……!」

ノクスが低く笑う。

「いいな、ルールがねぇ」

セレナが即座に動く。

「固定する」

光が走る。

周囲の空間を“現実”へと縫い止める。

崩れていた地面が、無理やり形を取り戻す。

「足場、確保!」

クロエが着地する。

「助かる!」

だが。

次の瞬間。

“それ”は現れた。

人の形。

だが、輪郭が定まらない。

見えているのに、確定しない。

そこにいるのに、“存在していない”。

「……なんだ、あれ」

クロエが眉をひそめる。

ノクティアが応答する。

「観測前状態の存在を確認」

「定義不能」

“それ”が、動いた。

動いた――はずなのに。

過程が存在しない。

気づいた時には、目の前にいた。

「――っ!?」

クロエが反応するより早く。

腕のような何かが振るわれる。

だが。

当たらない。

当たった“結果”が、成立していない。

「は?」

クロエが一瞬止まる。

その隙を。

“それ”は見逃さない。

セレナが割り込む。

「下がれ!」

光が展開される。

断罪執行ホーリー・ヴァーディクト

直撃。

だが――

「……通ってない?」

確かに当たった。

だが、“当たったという事実”が残らない。

エルが前に出る。

「構造干渉、展開」

白が広がる。

空間そのものを書き換える。

「存在を――“確定させる”」

その瞬間。

“それ”の輪郭が、一瞬だけ定まる。

クロエは迷わない。

「そこ!」

踏み込む。

影走シャドウ・スライド

一瞬で距離を詰める。

終焉一閃ラスト・レイヴン!」

黒が走る。

今度は――

「……当たった!」

確かな手応え。

“それ”の一部が、崩れる。

だが。

崩れたはずのそれは――

“なかったこと”になる。

「はぁ!?」

クロエが叫ぶ。

元に戻っている。

最初から、何もなかったかのように。

ノクティアが告げる。

「現象確認」

「結果の否定」

セレナが歯を食いしばる。

「……因果そのものを、拒否している」

“それ”が、再び動く。

今度は複数。

空間のあちこちに、“同時に”出現する。

「増えたんだけど!?」

クロエが構える。

ノクスが笑う。

「いいねぇ、最高だ」

エルが冷静に分析する。

「単体ではない」

「“可能性”そのものが侵入している」

つまり。

一つではない。

確定していないから――

いくらでも“存在できる”。

クロエが小さく息を吐く。

「……なるほどね」

理解した。

「普通にやっても無理じゃん」

セレナが頷く。

「ああ」

短く。

だが、はっきりと。

クロエが笑う。

「じゃあ――やり方変えるか」

黒が揺れる。

終焉が、わずかに深くなる。

エルが視線を向ける。

「……何をするつもりだ」

クロエは答える。

軽く。

当たり前のように。

「全部まとめて“終わらせる”」

その瞬間。

黒が、空間ごと広がる。

戦場のルールが――

さらに一段、壊れた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


それぞれの選択がどのような結果を生むのか、引き続き見守っていただけると嬉しいです。


よろしければ感想や評価などもいただけると、今後の励みになります。


次回もよろしくお願いします。

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