開章:未確定の始動
※本作は「黒翼契約譚」の続編となります。
前章からの流れを踏まえた内容となっておりますので、未読の方はそちらからの閲覧をおすすめします。
本章では“未確定”をテーマに、これまでとは少し違った視点で物語が進行していきます。
引き続き、お楽しみいただければ幸いです。
風が、まだ吹いている。
穏やかで、優しい風。選べる世界になってから、初めて訪れた“静かな時間”。
クロエは空を見上げる。
青い。けれど――どこか、薄い。
「……やっぱ変だよね」
隣で、セレナも同じ空を見ていた。
「ああ」
短い返答。だがそのタイミングは、あまりにも自然すぎた。
まるで――最初から、同じ呼吸をしているかのように。
セレナはわずかに視線を動かす。その違和感に気づきかけて――やめる。
「安定はしている。だが、“固定されていない”」
それが、この世界の前提。
揺らぎ。分岐。未確定。
本来なら異常。だが今は、それが“正常”だった。
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遠くで、空間が微かに歪む。
ほんの一瞬。見間違いとも言えるほどの揺らぎ。
だが――
「……見えた?」
クロエが呟く。
セレナは頷く。
「あれは……自然な揺らぎではない」
⸻
少し離れた場所で、エルが空を観測している。
「分岐数……増加傾向」
一拍、わずかに遅れて言葉が続く。
「……いや、違う」
自らの発言を修正する。
「通常範囲を、逸脱している」
ノクティアが応答する。
「観測不能領域、拡張速度上昇」
エルは、すぐには結論を出さない。
ほんの一瞬。“考える余白”が生まれる。
「……外側からの干渉の可能性」
⸻
その言葉に、クロエが振り向く。
「また来るってこと?」
セレナが答える。
「来ている、が正しい」
すでに――始まっている。
⸻
空が、わずかに“剥がれる”。
青の奥に、別の層。
色にならない色。形にならない構造。
“外側”。
それはまだ、完全には侵入していない。
だが確実に――
クロエは、それを見ていた。
ほんのわずかに。
“懐かしさ”にも似た感覚を覚えながら。
「……近づいてるね」
軽く笑う。
恐れではない。拒絶でもない。
どこか――受け入れているような響き。
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セレナは一歩前に出る。
「前提が変わった以上、いずれは来る」
その声に迷いはない。
「なら――迎えるだけだ」
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エルが視線を向ける。
「今回の干渉は、前回よりも深い」
ノクティアが補足する。
「観測前段階の侵入、確認」
それはつまり――
“存在する前の存在”。
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クロエが、小さく息を吐く。
「めんどくさそう」
ノクスが笑う。
「いいじゃねぇか。やっと本番だ」
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クロエは、少しだけ笑う。
そして前を見る。
「じゃあさ」
軽く。
本当に軽く。
「また、やる?」
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セレナが隣に並ぶ。
その距離は、意図したものではない。
最初からそうであったかのように、自然だった。
「ああ」
短く。
だが、確かに。
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エルとノクティアも、同じ方向を向く。
四つの存在。
役割ではなく、“選択”で繋がった者たち。
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空が、揺らぐ。
まだ小さな亀裂。
だがそれは――確実に広がっていく。
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これは、終わりの続きではない。
“選んだ世界”の、その先。
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そして――
“外側”が、本格的に動き出す。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
物語はいよいよ次の段階へと進んでいきます。
それぞれの選択がどのような結果を生むのか、引き続き見守っていただけると嬉しいです。
よろしければ感想や評価などもいただけると、今後の励みになります。
次回もよろしくお願いします。




