第20話:最初の観測
継承記録が暴走した。
青い光が、
クロエの瞳から溢れる。
「っ……!」
頭が割れそうだった。
無数の記録。
無数の世界。
無数の終焉。
だが。
今までと違う。
見えている。
もっと古い。
もっと深い。
始まりに近い記録。
セレナが叫ぶ。
「クロエ!」
エルが支える。
崩れかけた身体で。
それでも。
離れない。
クロエの視界が白く染まる。
そして。
見た。
何もない世界だった。
空もない。
海もない。
星もない。
ただ。
青い光だけが漂う空間。
その中心に。
一人の少女が立っている。
黒髪。
黒翼。
群青の瞳。
最初のクロエだった。
まだ幼い。
まだ何も知らない。
何も失っていない。
ただ。
そこにいる。
そして。
空が開いた。
静かに。
世界の外側が。
初めて。
世界を覗いた。
クロエは息を呑む。
今とは違う。
巨大な顔もない。
無数の瞳もない。
ただ一つの視線。
世界へ向けられた、
最初の観測。
その瞬間。
群青の瞳の少女が、
空を見上げた。
目が合う。
外側と。
少女の。
そして。
観測が成立した。
世界が震える。
光が生まれる。
星が生まれる。
海が生まれる。
可能性が生まれる。
クロエの瞳が揺れる。
「……まさか」
最初のクロエが、
最初に観測された。
だから。
世界が始まった。
だから。
何万回壊れても。
彼女だけは消えなかった。
観測された記録そのものだから。
映像が崩れる。
再び深層。
群青の瞳の少女が立っている。
静かに。
悲しそうに。
『やっと気付いた』
クロエの喉が震える。
「お前……」
少女は笑う。
今までで一番。
寂しそうに。
『私は記録』
『私は始まり』
『私は最初の可能性』
深層全体が静まる。
裂け目の向こう。
外側の存在が。
さらに近付く。
巨大な顔。
無数の瞳。
そして。
初めて。
口が開いた。
誰も理解できない言葉。
だが。
クロエだけは聞き取れた。
継承記録が翻訳する。
その言葉に。
最初のクロエの表情が凍る。
セレナも。
エルも。
ノクスも。
嫌な予感を覚える。
そして。
クロエは震える声で呟いた。
「……迎えに来た?」
外側の存在は答えない。
だが。
無数の瞳は。
確かに。
最初のクロエだけを見ていた。
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