第14話:深層の警告
——逃げろ
その声は
クロエの頭の中ではなかった
観測深層そのもの
世界そのものが、
警告していた
クロエの顔色が変わる
「……おい」
ノクスを見る
「これヤバいやつか?」
ノクス
「超ヤバいやつだ」
即答だった
次の瞬間
裂け目が広がる
空が軋む
深層が悲鳴を上げる
そして
裂け目の向こう側から
“視線”が落ちた
全員の身体が固まる
見られた
ただそれだけで
存在が凍る
セレナが歯を食いしばる
翼が震える
エルの輪郭が乱れる
ノイズ
粒子化
存在固定が崩れ始める
クロエだけが違った
胸の奥
深層主の残した力が、
反応している
観測線
記録
可能性
無数の光が、
クロエの周囲へ展開された
まるで
深層そのものが、
彼女を守ろうとしている
裂け目の向こう
巨大な影が止まる
初めて
反応した
クロエへ
エルが呟く
「認識された」
クロエ
「嬉しくねぇ!!」
その瞬間
無数の観測線が弾けた。
深い青の光
世界を覆うほどの光が、
裂け目へ突き刺さる
轟音
“それ”が、
初めて後退した
ほんの少しだけ
だが
確かに
深層全体が震える
歓声にも似た波動
観測深層が、
喜んでいた
セレナが目を見開く
「押し返した……?」
ノクスも信じられない顔をする
「おいおい」
「マジかよ」
クロエ自身が、
一番驚いていた
何もしていない
ただ
嫌だった
仲間を消されるのが
それだけだった
すると
胸の奥で、
青い光が脈打つ
そして
新たな記録が開く
クロエの瞳に、
映像が流れ込んだ
遥か昔
まだ深層主が存在していた時代
無数の世界
無数の文明
そして
同じように
“外側”と戦った者達
クロエの呼吸が止まる
その中心にいた
黒い翼を持つ少女
自分によく似た誰か
彼女は空を見上げながら、
静かに呟く
『また会えた』
映像の少女が、
こちらを見る
まるで
クロエを知っているみたいに
その瞬間。
深層の最奥で
新しい扉が、
ゆっくり開き始めた
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