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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 ~終わりを選び、未来を奪い返せ~  作者:
観測深層 ― 忘れられた可能性

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第7話:外側の指

“指”だった。


巨大な扉の奥。


世界の外側から、

ゆっくり伸びてくる。


白い。


あまりにも白い。


人の指に見える。


だが。


大きさが違う。


空そのものを掴めそうなほど、

巨大だった。


クロエの喉が鳴る。


本能が拒絶していた。


アレは、

見てはいけない。


理解してはいけない。


“世界の外側”だ。


深層全体が震える。


水面が荒れる。


無数の深層残骸達が、

一斉に跪いた。


『観測者』


『観測者』


『観測者』


壊れた声が重なる。


セレナが顔をしかめる。


「……違う」


クロエ。


「何がだよ」


セレナは、

白い指を睨んだまま呟く。


「アレは“観測者”じゃない」


空気が止まる。


エルのノイズが激しく乱れる。


「観測権限、

強制上書き」


「世界境界、

再定義開始」


クロエ。


「だから説明!」


ノクスが珍しく焦っていた。


「簡単に言うと!」


黒羽を広げる。


「世界そのものを書き換えに来てる!」


次の瞬間。


“指”が、

境界へ触れた。


静寂。


そして。


世界が、

軋む。


空間全体へ、

巨大なヒビが走った。


クロエの瞳が揺れる。


深い青の空が、

割れていく。


その向こう側。


“黒”があった。


宇宙じゃない。


闇でもない。


“何も存在していない場所”。


見た瞬間。


クロエの身体が震える。


存在が薄れる。


自分が、

消えていく感覚。


“観測されなくなる”。


“観測されなかったクロエ”が、

静かに呟く。


『あそこに落ちた』


クロエ。


「……何が」


黒い瞳が、

ゆっくりこちらを見る。


『私達の世界が』


その瞬間。


深層主が咆哮した。


轟音。


深海そのものが叫んでいるみたいだった。


巨大な腕が、

白い“指”へ伸びる。


ぶつかる。


空間崩壊。


衝撃波で、

深層全体が揺れた。


セレナがクロエを抱き寄せる。


エルが前へ出る。


銀髪がノイズで乱れる。


「接続開始」


クロエ。


「は?」


エルの瞳が、

初めて強く揺れた。


「止める」


次の瞬間。


エルの身体が、

深い青の光へ溶け始めた。

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