第4話:深層主
深い青の底。
そこから、
“何か”が浮上してくる。
巨大。
あまりにも巨大。
輪郭が見えない。
いや。
見えているのに、
脳が認識を拒絶していた。
クロエが顔をしかめる。
「……なんだよ、アレ」
水面が揺れる。
深層全体が、
呼吸しているみたいだった。
“観測されなかったクロエ”が、
静かに呟く。
『深層主』
ノクスが舌打ちする。
「マジで居やがったか……」
セレナが翼を広げる。
「知っているのか」
ノクス。
「噂だけだ」
「深層の底で、
失敗した世界を喰ってる存在」
クロエ。
「サラッとヤバい事言うな!?」
その瞬間。
巨大な影が、
ゆっくり“目”を開いた。
青い瞳。
深海みたいに暗い。
だが。
その瞳の中心には、
無数の景色が映っていた。
崩壊。
戦争。
消滅。
終わった世界。
全部、
飲み込まれている。
エルのノイズが激しく乱れる。
「危険度――」
ノイズ。
「測定不能」
「観測深層全域へ、
干渉開始」
クロエ。
「だから簡単に言えって!」
エル。
「逃げろ」
即答だった。
次の瞬間。
深層主の瞳が、
クロエを見た。
世界が止まる。
水面が凍る。
呼吸できない。
クロエの身体へ、
無数の記録が流れ込む。
知らない人生。
知らない死。
知らない絶望。
全部、
“クロエ”。
クロエが叫ぶ。
「っあぁぁぁ!!」
黒い羽が暴走する。
紫黒のノイズが、
空間へ広がった。
セレナが即座に抱き止める。
「クロエ!!」
だが。
クロエの瞳が、
微かに変色していた。
右が青。
左が紫。
その奥に。
“もう一つ”、
黒い光が混ざる。
ノクスの顔色が変わる。
「おい……」
“観測されなかったクロエ”が、
静かに呟く。
『深層に触れた』
『始まる』
その瞬間。
深層主の周囲で、
巨大な扉が開き始めた。
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