一平民から見る王国の近年
「王太女殿下は戦えるのですね」
「ああ、戦える」
給仕は目を輝かせていた。
「最前線でエセル国王と王太女殿下が切りあったのは本当なのですか?」
「いや……」
流石にしないだろうと思ったが、やるかやらないかで考えた場合、どちらもやっていそうであるとヴィルヘルムは考えた。
「もしかしたら真実かもしれないな」
「おお!強い国王陛下が生まれるのなら我々としたら喜ばしいことですよ」
その喜びを見てヴィルヘルムは気になって質問をした。
「今の陛下は?」
「大きな声では言えませんが、さっさと前の王太子殿下を国王になさればよかったのです。今の国王陛下は我々に何もしてはくれませんから。してもらったこともありません」
不敬で殺されるであろうことをはっきりという給仕は眼の前の男のことを王太女派閥であろうと考えていた。
5,6年前には帝都にいたらしい。そして、この時期に王都に戻ってきた。
王家から嫌われて飛ばされた公爵派閥の人間であろうと判断していた。
まさか王家の第2王子で少し前までこいつが次期国王になるしかないのかと絶望されてたとは思わないだろう。
「先代陛下の頃からよくはありませんでした。先代の宰相閣下が亡くなってからは物価も上がり、物資も不足し、高級品はあるのに市販品がない始末でしたから」
「ああ、そうか……」
「失礼、昔過ぎましたね。まだお生まれになっていなかったかも知れません。そんなときに……そうですねちょうど5,6年前に生活が良くなってきました。公爵家の方々が孤児院を設立したり、公爵家の集団が来ると帝都中に物資が行き渡るようになったのです。あのころはまた公爵家の馬車が帝都に来ないものかと思ったものです。今の御方は何もしてくれはしませんでした」
そもそももとからあった孤児院に公爵家が手を入れただけで設立はしていない。
王都の人間ももとからあった孤児院のことすら眼中にないので薄情さはさして変わらないだろう。
そもそも公爵家が納税を辞めて、帝都を干上がらせ、王都と国王の周りを追い詰めていったのであるから。
元はと言えば蛮族を支援していた先代侯爵が悪いと言えばそうだし、王位を狙うと公爵家を断絶されるため領土を減らしても潰していったサミュエル王家が原因であると言えば否定できない。
旧ロバツ地方を治めていた公爵家をロバツ王家の先祖を唆し、支援し、滅ぼした。
そして、ライヒベルク公爵家を同じ手法で責め滅ぼそうとして国家そのものが追い詰められ、たまたまライヒベルク公爵家が反攻に成功したからこそこの王国の首がつながった。
そのライヒベルク公爵家に王家は当時はまだ多少の褒章は出した。本当に多少の。
それ以降は出さなかった、そして蛮族が大きく攻勢にでてこないと分かれば蛮族を支援して公爵家を追い詰め、割譲範囲を公爵家の領土少しで蛮族との密約をかわす。
以降は大きな攻勢を行いをしてライヒベルク公爵家が勝利しても相手にしなかった。
話を盛っていると。
そしてライヒベルク公爵家が王家に愛想を尽かし、旧領の奪還にも成功してもなお冷たく……。
いや、旧領を奪還したからこそ冷たかった。
その扱いを受けた領土奪還、蛮族を破った英雄に冷たく、それを見てきた息子は王家に対して敵対を放言し始め、そして孫娘に王家を軽んじ、叩き潰すことを伝えていた。
一方で息子には最後の融和計画として王都に送り、官僚として働かせた。
もともと融和の一環で送ったら、なぜかは知らないがガリシア帝国から皇位継承第1位の皇女を嫁に取ると伝えてきたときにはさすがのこの公爵をして何があったのかと妻に尋ねたほどであった。その問いに彼の妻の答えは「理由を上げればいくらでも探せるけど、急に決めるには答えは一つよ」であった。
断る選択肢もないだろうし、むしろいい点が多いから別段反対する気もなく、公爵の自分をおいて決定が伝えられても特に何も思わなかったのはなかなか器が大きいのか、それともサミュエル王家でなければ構わないとでも思ったのか。
自分の息子がそんな高貴な女をどう口説いたのだろうと思いながら、結婚式前に詳しく聞いておこうと息子夫婦を呼んで尋ねてみれば、息子が勝手に見初められていたと理解したときには苦笑する他なかった。
生まれた子供はどちらかと言えば父に似ているので不安に思い、自分の貴族論も、王家のひどさも伝えたが……。
気がつけば母親に似てしまった。
母親は祖父に似たと言い切っているが、父親はどっちにも似てほしくなかったと嘆いていた。
本当に似ているのは小説の人物だとは誰が理解できただろうか。
それとも小説の人物のように無茶を通す祖父と母がおかしすぎるのか。
結果としてサミュエル王家が蛮族を支援し、公爵家に冷たく当たり、公爵家と敵対から殺し殺されまで到達し、生み出したのは帝国の血も入った高貴さを上げた血筋。
自分たちから王位を簒奪する一人の女だった。
サミュエル王家は自分で自分の死刑執行書を作り上げ、長い年月をかけて自分でサインをしたのだ。
アリア「これがいい、これでいい」
ゲハルト「えっ?えっ?」




