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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
幽霊屋敷の廃王子

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街では慶事で騒ぐ

 ヴィルヘルムの前に置かれた食事はトースト2枚と目玉焼き3つ、5枚のベーコン、一杯のワインであった。

 残念ながらスープはない。

 ここでいえばスープ台を引かれるかも知れない。年間のスープ代がわからぬヴィルヘルムとしては余計なことは言いたくもない。

 トーストに付いているバターの小ささが哀愁を誘っている。

 普通よりは豪華であってもこの小ささなのか、これでは2枚のトーストに塗りきれない。

 ヴィルヘルムはどうするべきかを考えていた。


「トーストは……バターで?」

「お好きなように。パンにベーコンの目玉焼きを挟んで食べてもいいですし」

「…………?」

「いえ、パンとパンで目玉焼きとベーコンを挟むのですよ。最近の流行りでもありますから。軍人系貴族の方々が流行らせたそうです。そちらが苦手であれば普通にナイフとフォークでお食べになってもいいのでは?」


 スープなしのパンはなかなかにきついな。

 トーストであっても……。


「そうか、なるほどな」


 ナイフとフォークを器用に使い、パンの上にベーコン、目玉焼きを乗せたヴィルヘムは、パンを乗せたところで考えていた。

 これ、このナイフでは厚くて切りづらくないか?


「これは、切れるのか?」

「いえ、そのままかぶりついて食べるのです」

「…………ん?」

「新聞でもありますが王宮や省でもここ最近流行っているみたいですね。職務の合間に軽く食べられるとか、朝食を手早く済ませることができるとか」


 給仕はおそらく帰国したばかりで最近のはやりも何もわからない貴族だと当たりをつけていた。

 まさか知らぬ分けはあるまいと。


「ベーコンの油や目玉焼きの黄身が染みて大変美味しいと。今では各劇場でも売られておりますね。一度行ってみたらいかがでしょうか?」

「そうだな、見たい劇があったら考えておこう」


 おそらく行けないだろうが、その程度の取り繕いはできた。

 なにせヴィルヘムにとってはこの料理人兼給仕は自身の生命線そのものである。

 大人しくサンドイッチというよりはハンバーガーのようになったそれをヴィルヘルムは食べていた。


「なかなかよいな。半熟卵もこうすればこぼれないというわけか」


 未開人にハンバーガーを進めたときのような感想をいうヴィルヘルムを給仕は笑わなかった。

 話を聞いたときはたしかに楽そうだと思ったものだが……。

 貴族もやり始め、朝食をこの形式だ出す店もチラホラと出ている。

 新しい料理として周知され始めている以上は知らなくて当然でもあるし、長らく国にいなかったのであればそれも当然だろうと思っていた。

 なお貴族階級に流行らせたのが変装したままそのような食事をマッセマー商会で取っていたエリーゼことエリーちゃんであることを知るものはあまりいない。


「新しき知見を得た気がする」


 見ようによっては給仕が一流料理人で貴族の歓心を買った話のようであるが、流行りものを出したら始めてみましたね美味しいですと言われただけの話である。


「今日は色々安くなっていたので昼食と夕飯はご期待下さい。慶事が続いておりますので」

「ほう、そうなのか?」

「ああ、街にいかないのですね。そうですね、昨日の夜も退勤する際に街を通るとまるでお祭りでしたよ」

「ああ、明かりは見えた。そうか、なにか良きことがあったのか?」


 ヴィルヘルムの問いかけに給仕は一瞬だけ引っかかったようであったが、彼にとっては帰国したばかりの人間であることを思い出し、なるほどと理解した。


「ええ、ほら、憶えておいでですかこの国の第2王子を」

「…………ああ」


 その言葉の重さを王族の不敬であると取ったのか、給仕は安心させるように言った。


「そこまで気を使わなくて大丈夫ですよ。その第2王子が失脚したんです。もう王族ですらありませんよ。それで昨日の夜から民衆が大騒ぎです。買える際にただだから食って行けと色々押し付けられましたよ。今日も材料を購入する際に多めにおまけをつけられたり、ステーキ肉のサービスまでしてましたね。狂乱の宴ですよ、朝から皆が酒に酔ってました。私は仕事なので瓶をいただいたのですが」

「そんなに騒いでいるのか?」

「ええ、なにせあの悪名高い第2王子ですからね。多くの店が慶事であると大盤振る舞いです。今後はみんなが料金を支払ってくれるからよろしくと。ステーキ肉を配るのは流石に驚きましたが……。おそらく慰謝料を含めて支払われたのかも知れませんね」


 なお、ステーキ肉を配っていたのはマッセマー商会系列であり、慶事であるから王子の失脚はいいことだとのアピールのためにやっている。

 もっとも主導する前から民衆が自主的に騒いで、サービスを行っていたのでマッセマー商会は空回りをしている。


「第2王子がいなくなって嬉しいか?」

「ええ、もちろん。ようやくこの国が前に進めるのですからね。前の王太子殿下も素晴らしい方ですが、今の王太女殿下も第2王子を叩き出した一点でも素晴らしいです。戦争の勝ち負けは我々にはわからぬまま終わりましたけど、明確に嬉しい出来事です。オーランデルクの滅亡よりは遥かに嬉しいですね」


 自分の失脚は仇敵オーランデルクの滅亡より嬉しいか。

 ヴィルヘルムの落ち込みは少しだけ大きかった。

エリーゼ「めっちゃ嫌われてますわね。やっぱり」

キャス「…………市井に嫌われすぎでしょう」

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