第22話:vs.教会②
お久しぶりです。
第22話です。
「──ようこそ、ヨルカワオサムさん」
「…………」
俺の目の前に、例の神官と知らない女性が現れた。
女性は何故か、鎖のようなもので首・手首・足首を固定された状態だ。
そして、首から伸びる鎖の先を神官に持たれ、引きずられている。
(……どういう状況だ?これは)
生命探知によれば、あの女性は人間で間違いない。少なくとも、自我のない獣ではないのだ。それが、なぜこんなことになっている?
「はは、まぁ困惑するのも不思議ではないでしょう。何せ、こんな大荷物を引きずっているのですから」
「……大荷物?」
「ええ、もう自分では何をすることも出来なくなった、哀れな荷物ですよ。……とは言え、今日に限っては私の救世主ではありますがね」
「早く本題に移ったらどうだ?」
恐らくは鎖に繋がれた彼女が、その荷物とやらなんだろう。俺はなんとも言えぬ感情を抑え込んだ。
「いやー、これは失礼。単刀直入に言いましょう。私にとって貴方は最も恐るべき存在。だからこそ、私は貴方をここで始末する」
「……俺たちが今日来ることが分かっていたのか?」
「いえいえ、私もやっと準備が終わりましてね。たまたま、ちょうど、タイミングが良かった」
「そうか」
本当かどうかは確かめようがないが、それはどうでも良い。仲間達が目標を達成できていればそれで問題ないのだから、俺は目の前のこいつをどうにかするだけだ。
「……私が貴方に今まで仕向けた刺客は皆、かなりの実力者でした。そして、この私が直接相手をしてもなお、貴方を倒すことはてきないことはよく理解しているつもりです。貴方はミズキ・マエダのようなただの英雄とはわけが違う」
「……」
「しかし、我々の長年の野望のため。我々が築いてきたこの愚かな国を、捨てることは絶対に許されない。私には、賢者である貴方を倒す義務がある」
その言葉を聞いて、俺は何か引っ掛かりを感じた。
目の前の神官は、やたらと『賢者』という1単語にこだわっているように感じたのだ。
「ふふ、なかなか情報がまとまらないようですね。おそらく貴方は我々が魔力を盗み取っていることまでは突き止めているでしょうが、その目的、そして私がなぜ賢者を消そうとしているのかまでは知るはずもない」
「……」
「せっかくです、貴方も答え合わせがしたいのではありませんか?排除する前に、教えて差し上げましょう。この国、そして私の正体を──」
──神聖ミナ属性神教立王国。
その国は約400年前、属性神ミナのお告げにより、属性神教の信者が神殿を中心として興し、現在へと至る国である。
属性神教自体はその前から存在していたが、この国が興ったことにより、人間族で信仰していない者はいないくらいの世界宗教へとなった。
しかし、世界で最も価値のある国であるこの国には、世界中のほぼ全ての人間が知らない『闇』が存在する。
それは390年ほど前のこと。
1人の神官が何者かによって暗殺されたのである。
普通であれば大騒ぎになってもおかしくないのだが、そうはならなかった。何故なら部屋で暗殺された神官は、次の日には別人と完璧に入れ替わったからだ。
そして、その入れ替わった存在は、魔法で自分の都合のいいように周囲の人間を洗脳した。
彼の名前は『ホワイト』。
彼には、大いなる目的があった。
***
~ホワイト~
私は神官に成りすまし、周囲の人間たちを一人残らず洗脳した。
私の魔法ならば、教会内を掌握することは容易かった。
この大陸にやってきてから早3年。この教会を我ら魔人の利益のために利用しようと計画を練り、その成果が実ったのだ。
その計画とは、数十年・数百年単位のものだった。
内容は、教会をさらに発展させ信仰という名のもとに魔力を奪い人間族を弱体化させるというもので、同時に我々は魔人族の武力強化・発展のためにその魔力を使う。いずれ世界全体を支配するために。
私の魔法によって、教会の人間は皆、その魔力が自分たちのためのものだと思わされた。
そして時は流れ、私が教会を掌握してから約100年間、計画は順調に進んでいた。
今から約300年前、我々はいよいよ世界支配のスタートとして、人間族の領域への侵攻を始めようとしていた。
……だが、思わぬ障害が発生した。人間族の国の一つ、ハント王国が『異世界の英雄』なる者を召喚したのだ。
奴らは他の人間族とは異なり魔力量が膨大であり、そして何より魔法を使う際に魔力を奪えないために、非常に強敵となって我々を妨害した。
そして、異世界の英雄たちとの激突により結果として100年溜めたリソースを全て使い切ってしまった我々は侵攻自体は延期する他なかった。
そしてさらに時は流れ、今から約150年前。
魔人の研究者が予測していた通り、ハント王国はまたもや力を蓄えて異世界の英雄を召喚した。
しかし今回は前回のようにしくじることがないよう準備を進めてきた我々は、油断せず前回の反省を生かし、効率化された魔法や魔道具、そして強力な魔人を揃えた結果、戦闘系の優先すべき英雄、召喚者の殺害にほぼ成功した。
ところが、優先人物の最後の一人である少女を狙ったとき、異変は起こった。
魔人領の精鋭部隊を派遣したにも関わらず、誰一人として戻ってこなかったのだ。
まだ召喚されて間もないただの少女一人に、魔人領は翻弄された。
どうやら少女は、『賢者』という今まで見なかった役職をもった人間で、その特性上魔法構築の全てを瞬時に理解できるとのことだった。
教会が魔力を奪っているのではないかと、初めて気づいたのも彼女だった。
何としてでも少女を殺害しなければならず、しかも、さらに少女が成長してしまえば余計に状況は悪化するため、急がねばならなかった。
だが、勝てない。どうあがいても少女に勝つことができなかった。
だから、躊躇うことなく『溜め続けた魔力』を全て使った上で、数多くの犠牲者を出しながらも少女を封印することにした。
我々は魂をも捧げ、禁術ともいえる魔法を発動した。
それにより、少女を無力化し拘束することに成功したのだ。
-第22話 完-
投稿再開します。




