第21話:vs教会①
第21話です。
「……ではこれから、作戦を決行します。予定通り、皆さんは前田さんと共に教皇を救出して下さい。もし仮に教皇派に遭遇した際は、迷わず前田さんの後ろに隠れること。それだけは守って下さい。そして私は、皆さんが突入している隙に目的を果たします」
あれから2日後の夜8時。
ついに決行だ。
会議では、俺の目的について聞かれたが、洗脳を施したであろう神官を捕えるとだけ言った。
実は自分の中では仮説が生まれてはいるが、わざわざ言って混乱させることではない。
「ヨルカワ様もお気を付けて……」
「ええ、では、また会いましょう」
俺の言葉を合図に、全員が動き出した。
***
「……まぁ、これは問題ないだろう」
俺は予め『生命探知』を発動し、教会内部にいる人間全員の居場所を把握し、その結果教皇は最上階のホールにいることが分かった。
既に皆んなには伝えているので、彼ら彼女らは問題なく向かっているはずだ。
……ただ、一つ気がかりなことがあった。
俺が目をつけていた神官──ホワイトの居場所が特定できない。
最初は何か隠蔽することのできる魔法でも使っているのかと思ったが、どうやら本当に俺の『生命探知』の範囲外にいるらしい。
────
【魔法名】生命探知:レベル2
【効果】自身を中心として、半径10キロメートルまでの範囲に存在する生物の情報をを自身の目の前に表示する。ただし、どの生物の情報を表示するかは選択できる。また、対象となる生物の特徴により表示を分けることができる。
【魔力消費】200/1回または12000/1分
【属性】光/サポート
────
俺は今回、邪魔な情報が入ってこないように『生命探知』の範囲を教会内部のみにしたのだが、どうやら俺のミスだったようだ。
範囲をさらに広げたところ、ある場所にホワイトと思われる人物を発見した。
「まさかここまで地下深くにいるとは……」
ホワイトは、教会の真下約200m地点にいた。
明らかに、何かを狙っている様子だ。
「……仕方がない」
俺は魔法を使用し、教会の構造を再確認する。
すると、地下へと続く可能性のある構造を数箇所発見した。さらに細かく調べると、本来意味のないはずの空間の存在に気づくことができた。
──
【魔法名】転移
【効果】把握している構造内に転移できる。
【魔力消費】500/1回
【属性】光/サポート
──
すぐさま『転移』する。
そして俺は、地下へのルートを確認すると、そのまま螺旋階段のようなものを降りて行った。
***
〜?〜
「……やれやれ、まさか本当にこれを使う日が来ようとは。分かってはいても、考えたくはないものなのですね」
薄暗く、湿っぽい地下室にて、ある男が鍵のようなものを持って佇んでいた。その鍵のようなものは、青白く長めの棒に黄土色の台形のリングが付いており、リングの先からは鋭い針が飛び出している。男はそれを少し傾けると、前の壁のごくごく小さな穴に入れた。
すると、壁の一部分がひび割れていき、数秒後には壁全体が崩れ、倒れるようになった。そして男がそこを通ると、通り終わると同時に壁は何事もなかったかのように元通りになった。
男は前へと進んでいく。
そして50mほど壁から遠かったころ、景色が一変する。
目の前には、数えきれないほど重ねられた『魔法の扉』があった。
そしてその扉それぞれに鍵、いや、指紋認証とでも言えば良いのか、男本人しか入ることの出来ぬように仕掛けが施されていた。
「──」
男が何か呪文のようなものを唱えながらそれに触れると、重ねられた扉が1枚1枚開いては閉じていった。
最後の1枚が開き、男が中へと入った。
中は、『牢獄』だった。
「────お久しぶりですね、賢者よ」
男の視線の先には1人の『女性』。
その女性は、身体中を鎖のようなもので繋がれていた。
「…………」
『賢者』と呼ばれた女性は何も答えない。
目は虚で、肌は埃のようなもので薄汚れていた。
意識があるようには見えない。
「答えませんか……まぁ無理もない。私と会うことはざっと50年ぶりでしょうか?」
「…………」
「今日は貴女にやっていただくことがあってきたのです」
「…………」
「運命と言うものでしょうか?貴女が言ったように、現れました。その言葉……あれは150年前ですか。150年という私にとってはあっという間の時間も、人間にとってはやはり長い期間のようだ」
「…………」
「この世界の魔を取り除くために、英雄が現れました。しかも、その人間は今まで私が経験した中でも、最も厄介かもしれない」
男は、女性の瞳を覗き込んだ。
「私は150年前、貴女1人を封印するために甚大な被害を出してしまった」
「……」
「だから、同じ轍を踏むことはできません」
男がそう言った瞬間、男の瞳に紋章が現れた。
「──過去の英雄よ、私の僕となりなさい」
***
「……これは凄いな」
螺旋階段を降りていくと、そこに待ち受けていたのは祭壇だった。煌びやかな装飾とでも言えば良いのか、歴史の教科書に載っているかのような意匠。俺は思わず全体を眺めていた。
(しかし、降りたのは良いものの、やつの姿が見えないのはどういうことだ?)
俺はもう一度『生命探知』を確認する。
「…………2人?」
『生命探知』には、この周辺に2人の生命反応を示していた。
俺が珍しく困惑した声を発したその瞬間、祭壇が地響きと共に変形した。
「──ようこそ、ヨルカワオサムさん」
そう声を発した男は、鎖のようなもので首を硬く結ばれた女と共に、俺の前に現れた。
―第21話 完―
お読みいただきありがとうございます。




