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第20話:共闘

 第20話です。





「ち、違うんです!!」

「……な!?待ちなさい、メイ!」

「お父さんは黙ってて!」


 急に話に入ってきたので少し驚いた。

 どうやらこの男の娘らしい。


「ヨルカワ様、私の話を聞いて下さい」

「ええ」


「私たちは、確かに教皇派を弱らせたいとは思っています。でも、血を流すような真似がしたい訳ではないんです。私の父は、教皇様をとにかく救いたいとずっと思っていたのです」

「それで?」

「だから、私は命にかえても教皇様を救い出します。あの子には、普通の子供としても、ちゃんと幸せになって欲しいんです!!」


 普通の子供として、か。


「あなた方には私たちの後ろ盾になってほしいんです。約束します、私たちが教会を立て直す立場になれたなら、教会の魔力の横取りも混乱が生じないように段階的に辞めさせます。そして、教皇様は『名ばかりの王』から、『教会の顔』として、もっと自由に暮らしてもらいます」

「なるほど」

「当然、異世界の英雄はもちろん、どんな相手であろうと『暗殺』で決着をつけようなどとはしない組織にしてみせます!」


「……」


 随分と感情がこもっているな。

 そして、覚悟を持った目をしている。


 ……だが、結局のところ、属性神派が健全な運営をするかどうかはわからない。俺が協力して、結果さらに酷いことになっては元も子もない。共感を得ようとするのは、詐欺師の常套手段だ。

 仕方がないが、()()を使うとしよう)


感情の(エモーショナル・)一体化(インテグレーション)



──

【魔法名】感情の(エモーショナル・)一体化(インテグレーション)


【属性】光/サポート


【魔力消費】4500


【効果】対象の大まかな感情を自身に宿す。


【範囲】対象と自身

──



(……ふむ)


 彼女の感情には、『焦り』『緊張』『覚悟』『熱意』が多く含まれていた。

 少なくとも、『悪意』や『嘘』は含まれていない。


 俺は他の人間にも『感情の(エモーショナル・)一体化(インテグレーション)』を使用する。


 すると驚くことに、全員『悪意』がないことが分かった。普通、必ずと言って良いほど、組織には権力を求める人間がいるものだが、この人たちは本気で教会を変えたいようだ。


「……分かりました。協力しましょう。……ただし、もう少し作戦を練りましょう。もし良ければ、明日またここで集まりましょう」

 これなら、現段階では信用して良いだろう。



 ……それにしても、やはりこの魔法は、他人の心を覗き見するようであまり気分の良いものではないな。




     ***




「……ねぇ夜川君、本当に大丈夫なの?私が協力してくれるかもって言ったからなんだけど……あの人たち、ちょっと胡散臭くなかった?」

「とても胡散臭かったな。普通なら詐欺を疑うところだが、幸いこの世界には嘘を見抜ける魔法がある。少なくとも悪意や嘘は見つけられなかったんだ。まぁ、協力はしてもいいんじゃないか?」


「……夜川君がそう言うなら」


 さて、これからのプランだが、既にある程度の道筋はできた。大まかに言えば、『前田さんと属性神派の人間が教皇を保護している中、()()()()()()()()()あの神官を捕らえ、全員の洗脳を解く。そして、教会という名の政府を再構築する』といった具合だ。


 そこで俺は、明日再び属性神派に会った時に洗脳について話すことにした。調べたところ、属性神派の人間は洗脳されていなかったからだ。


「という訳だから、これからの教会はあいつらに運営してもらうとしよう……。しっかり洗脳も解いてだ。それなら、前田さんも暗殺の危険が無くなって安心できるだろ?」

「そ、そうね……」


 さて、明日は大荒れだ。




 ──そして翌日。


「……えっ、せ、洗脳!?」


「ええ。魔法で調べた所、どうやらあなた方は無事のようですが、教会の多くの人間が洗脳されているのは間違い無いでしょう」


 俺は属性神派との会議にて、洗脳の事実とそれを行なった容疑者についての情報などを共有した。多少の混乱はあったが、想定内だ。


 そして、2日後の夜に作戦を決行することに決定した。




     ***




 12年前。


 神聖ミナ属性神教立王国大教会附属『孤児院』にて、ある少女が生まれた。


 彼女は、明るくも真面目な性格で、孤児院で幼い時から勉学で優秀な成績を修めていた。

 そして、大人たちを驚かさせるほど、生まれつき魔力量が多く、7歳の時に『聖属性』の魔法をほぼ全て取得し、戦闘においても並の大人では敵わず、回復系の聖魔法の回復力にはどんな魔術師も勝つことができなくなっていた。


 そんな中、8歳の誕生日に彼女は大教会本部へと呼ばれた。これは本部にて、神官たちが()()()()を行うためだ。


 ある儀式──それは聖女の儀式という。これは魔力量が格段に高く、聖属性の魔法に非常に秀でている少女を8歳の誕生日の後に教会の泉に浸からせるというもの。浸かった泉の水がオレンジ色に光り輝くと、その少女は『聖女』として属性神に認められたとされるのだ。


 そして、その儀式で彼女は『聖女』となった。


 彼女はアリス。


 明るく元気でありながら、すべきものを見失わない『強い』彼女は、もういない。



 ―第20話 完―

 お読みいただきありがとうございます。

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