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第18話:神官

 第18話です。




 いよいよだ。

 私は定例会議の席についた。

 絶対に策を悟られないように、感情を封印する。



「では、定例会議を始めたいと思います。まずはミズキさんお願いします」

「はい……」


 ひとまず、いつも通りに会議を進行させる。


 30分ほど経って。

 場が温まってきたタイミングで、一言を放つ。


「……そういえば、聞いた話なんですが。私のクラスメート、いえ異世界の英雄の1人が、()()されそうになったらしいんですが、何か情報とかってあったりしますか?」


 まるで世間話のように、軽く言葉を扱う。

 あくまで、私が全てを知っていることを勘付かれることのないように。


 ──しかし、ゆっくりと教皇と目を合わせると、私は身体中の毛が逆立つのを感じた。


「……………………」


 教皇の目の『色』が、消えていた。

 それは、どこまでも虚で、全てを吸い込んでしまうような何か。


「………!?」


 ガタッ。



 私は大きな音を立てて、椅子から立ち上がってしまった。動揺を悟られてはいけないとは思っていても、生存本能が体を動かしてしまった。


 感じたのは、『殺意』。この世界に来てから初めて、いや、生まれて初めて感じるほどの、悍ましい感情。


「…………ミズキさん」


「っ…………」


()()()()()()()()()()()()()()()


 悍ましい瞳が、近づいてくる。

 私は萎縮して動けない。


「……い、いえ。たまたま耳にしただけなので……噂程度ですよ?」

 必死に声を絞り出すが、上手く話せない。


「そうですか。………………………………ミズキさん、嘘をついていますね?」


「え…………?」



「知らなければ良いことも、あるんですよ?」


 教皇が、右手を挙げた。


「………う゛っ!?」


 その瞬間、私は激痛と息苦しさに襲われる。

 喉を押さえ、体を丸め、その場に崩れ落ちた。


「『洗脳:聖』」




 〜(おさむ)side〜


「……まずいな。様子がおかしい」


 俺、夜川平(よるかわおさむ)は城の外部から会議室を直接魔法で監視していたのだが、前田さんが暗殺について触れた瞬間、場の雰囲気が一変した。


(……まさかここまで露骨にくるとは……これでは何かあると言っているようなものだが……何が目的だ?)


 俺は思考を巡らせる。


(……教会には、何か考えがあるはずだ。例えば…………既に前田さんをどうにかする技術があるとか)


 魔力の流れを細かく観察する。

 すると、教皇の体付近に何やら魔力の塊が見えた。


(……なんだこれは)


 攻撃魔法とは違う気がする。

 だが、危険なものである可能性は十分あった。


「知らなければ良いことも、あるんですよ?」


 教皇が手を挙げる。



(……っ、そういうことか!!)


 俺は真っ先に城へと魔法で転移した。

 このタイミングで、教皇たちがやるとすれば──



「……『解除』!!!」

「……な!?貴様は何者だ!!」


 転移した瞬間、俺は前田さんに『解除』の魔法を発動する。これは、基本どんな強力な精神異常でも解除することができる魔法だ。


 この場で教皇たちが動き、前田さんに何かするとすれば、精神異常系の魔法をかける可能性が高い。何故なら、物理攻撃系の魔法が効かないのは、前田さんがランクSの異世界の英雄である時点で明白だからだ。


「………」

 容態は安定した。

 俺はすぐさま前田さんを抱える。


「き、貴様、まさかヨルカワか!!勝手に会議室に侵入するとは、どういうつもりだ!!」

「お前らには言われたくないな。俺の仲間にいきなり洗脳魔法をかけるとは」

 大臣と思われる1人が俺の肩に掴みかかるが、俺はそれを振り払う。


「『洗脳:聖』」


 教皇が前田さんに使ったのと同じ魔法を、俺にも使用したようだが、俺には『洗脳耐性』のスキルがあるので、意味はない。

 だがここで、俺は違和感を覚えた。

 全員の動きがおかしい。

 俺は鑑定魔法を発動する。


(なるほど……)


 転移魔法を構築し始める。


「……なっ、なぜ効かない!?」

「悪いが、ここまで敵対的な行動を取られては彼女をここに置いていくことはできない。じゃあな、()()()()


 俺は再び転移魔法を使用し、前田さんを抱え会議室を後にした。




     ***




「……ん…………あ……あれ?」

「起きたか」

 前田さんを連れ出し、ベッドで休ませてから約5時間後。

 彼女は突然体が浮くように目を覚ました。


「夜川君……一体何が……?…………っ!!頭が痛い……」

「洗脳魔法を教皇が前田さんに使ったようだ。魔法の影響でその場で意識を失ってしまったから、抱えて転移魔法で戻ってきた」


「そうだ……私、教皇に魔法を使われたんだった……」

「しかも、かなり強力な洗脳だな」


「洗脳……私大丈夫なの……?」

「魔法で解除したから心配ない」

「そう……?」

 何か不服そうな顔をするが、直ぐに思い出したように真剣な表情になる。


「えっと……で、これからどうすれば良いのかしら……?正直、一言目でいきなり洗脳してくるとは思わなかったのだけれど……」

「ああ、それならプランはもう決まっている」

「プラン?」


 ──洗脳魔法が前田さんと俺に発動されたとき、『魔力』の在処は確かに教皇だった。だが、『魔法構築』の在処は教皇ではなかったのだ。もともと構成された魔法を、教皇がそのまま魔力を流し込んで使っているに過ぎない。


「すなわち、俺たちが真に意識すべきは教皇ではない。教皇に魔法を貸していた人間、あの神官だ」


 俺が去り際にあの場にいた人間を鑑定した結果、1人の神官を除いて全員が強弱様々な洗脳をかけられていた。そしてその神官こそが、洗脳魔法の『魔法構築』の在処だった。


 あの場にいた者の中でも、特に強力な洗脳をかけられていたのは、かの教皇だ。見た目的におそらくまだ10代前半であろう少女に、あの神官は誰よりも強い洗脳魔法をかけ、操っていたのである。


「おそらくだが、教皇はただ利用されているに過ぎない。見た目よりもやけに大人びているのも、そのせいだろう」

「そんな……」

 ただ、教皇が常に強力な洗脳で操られていたのか、あの場だけ強力な洗脳で操られていたのかは分からない。

 どこまでが教皇の意思なのか。

 それとも、意思なんてものは最初から持たせてもらえなかったのか。


「教皇の右隣から2つ目の席に座っていた神官について、何か知っているか?」



 ―第18話 完―

 お読みいただきありがとうございます。

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