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第17話:激化②

 お久しぶりです。第17話です。





「結論から言えば────属性神教会に、俺が生徒に教えた『魔法の直接発動』によって何らかの不利益が生じたのだと、俺は考えている」


「……え、どういうこと?」


 夜川君が語ったことは、私が予想していたものとは全く違った。


「魔法の直接発動って何?」



「そうだな……前田さんが魔法を使う時、どんなイメージをする?」

 突然そんな質問を投げかけられた。



「え?普通にステータスボードに書いてある通りにやってるだけね……イメージ?なんとなく神様の力を借りてる感じかしらね?」

 それ以外に言いようがない。



「そう、異世界の英雄はそうだ。()()()()()()()()()()正しい魔法の使い方ができてしまっている。だから、この世界の人間が使っている魔法構築と違うことに気づけない」


「違う?」

 理解が追いつかない。



「この世界の人間は生まれた時から、魔法というものは『教皇』を介して、属性神の力を借りるものだと教えられている。これは俺が魔術学校で教師をやって、生徒たちのステータスと魔法構築を1つ1つ調べたから分かったことだ。魔法構築そのものを調べられたのは、俺が『賢者』のスキルを使ったことも大きい」


「……え、待って、それって意味あるの?私たちは教皇なんて通してないわよね?」


「ああ。そもそも、本来魔法を使うときに教皇など必要ない」


「じゃあ何でそんな教えを?意味がないなら……」



「……ここからが本題だ。魔法を教皇経由で使うとどうなるか。同じ魔力で同じ魔法を発動した結果、教皇経由の方が圧倒的に威力が低くなった」


「低くなった?じゃあそれって……」

 おそらく、この時の私は目を見開いていたと思う。


「俺の読みが正しければ、教会は介した魔力の一部を奪っているのだと思う」


「……何でそんなことを?」


 教会が魔力を奪っている?

 何かに使おうとしているの?


「残念だがそれは分からない。なにを目的としているのかは、本人たちに聞かないと分かりようがない」

「なるほど……」


「俺は現に、魔法を教皇および属性神教会を通さずに直接属性神経由で発動することを、生徒に教えた。既に俺の生徒だけではなく、学生のほとんどが直接発動に着手しているか習得している。目をつけられてもおかしくはない」


「……ん?じゃあ、何で直接発動をしてるってバレるの?直接発動してるなら、教皇には分からないんじゃ」


「おそらく、今まで供給されていた属性神の力の一部が一部急に供給されなくなったからだ。魔術学校の生徒は他者よりも圧倒的に魔法を使うからな」


「……間接的に分かるってことね」


「ああ。そういう訳で、悪いが俺が分かるのはここまでだな」

 夜川君は、お手上げといった感じの仕草をした。



「……ねぇ、夜川君」

「ん?なんだ?」

「もし、良かったらなんだけど」


 私は、勇気を出して言葉を捻り出した。


「……良かったら、私と一緒に、教会を調べてくれないかしら」




     ***




 ──私が1番怖かったのは、異世界の英雄を暗殺するという訳のわからない話題が、国家会議という場で行われたという事実だったと思う。


 その場には、一部の大臣と神官だけがいた訳ではない。

 いつも定例会議に参加している私以外の人間全員がいた。

 その中には当然、教皇様も含まれる。


(そんな場所にまた明日から戻るなんて……正直1人では無理……)


 完全にこれは自分の弱さだ。

 この世界の人々を守る異世界英雄──しかもランクSなんて称号を与えられた人間には相応しくないかもしれない。


 ただ、怖い。

 いつも明るく元気で笑っている教皇様も、ある程度は信頼していた大臣や神官たちも、みんな本当は怖い人なのではないか?

 知らなかったのは自分だけ?



「……なるほど。ランクSの異世界の英雄は普通別の国にいるが、ちょうど同じくランクSの俺が修学旅行にルーアに来ていたから、俺に教会の調査を手伝ってほしい、ということだな?」

「え?ええ…………まぁ、そんなところ」

「それなら俺としても好都合だ。実は俺も調査はしていたが、実際に教会の方へ行くのは躊躇っていたから、ちょうど良い」


 どうやら彼なりにプラスの方向で解釈してくれたようで、正直安心した。


「じゃあ、しばらくよろしく……夜川君」




     ***




「──マエダ様を味方にとる?」

「そうだ。彼女の様子を見て確信した。彼女は教会の異常性に気づき始めている」

「なんと!」

「……異世界の英雄である彼女を仲間にできれば、属性神派は教皇派に対して優位に立てる。教皇様を訳のわからぬ責務から解放し、信仰の本来のあり方を表すためにも、優位に立ちたいとは思わないか?」


 教会の端の1室。

 教皇派に対抗する勢力である、属性神派の会合が開かれていた。

 属性神派は現在15人で構成されており、全員がこの部屋に集合していた。


「……それはそうだが、この国の問題に他国の人間(異世界の英雄)を巻き込んでしまっては……」

「いや、何を言うか。元はと言えば、教皇派が無理矢理その異世界の英雄を暗殺しようとしたことが原因なのではないか」

「それはそうだが……」


 慎重な声がある一方、半数以上は前田水樹に期待していた。


「──とりあえず、彼女に聞いてみるのが良いのではないか?完全な協力は得られずとも、何か一つでも納得してもらえるものがあれば、儲け物だ」

「ふむ……」


「我々が、この教会を変えるのだ!」




     ***




「……で、だ。前田さんは今日もいつも通りに会議に参加してくれ。ただし、少しズラしながらそれとなく暗殺の件に触れてくれ。その際、俺はその部屋の内部を魔法で確認する。前田さんに何かあった場合は俺も動くが、何もないなら俺は会議の内容に集中させてもらう。それで良いか?」


「ええ、問題ないわ。それと、その後の国家会議には私は参加資格がないから、会議室から出てきたタイミングで合流しましょう。」


「ああ」

 まずは教会内部の把握からだ。

 悪いが不審な点は全て洗い出させてもらう。

 そして時がくれば、俺も参戦することになるだろう。


「……さて、やろうか」



 ―第17話 完―

 お読みいただきありがとうございます。

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