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第13話:そして次のステージへ

 第13話です。




「…………?」

「……あ、ようやく起きたか」


 突然目の前の女が倒れてから2時間ほど。

 ようやく目覚めたようだ。


「……ターゲット…………っ!?」


 そして、俺を見て明らかに動揺している。

 まぁ無理はないのだろうが、仮にも俺を暗殺しにきていたのだからもっとしっかりして欲しいものだ。


「悪いが俺は暗殺者ではないから人を殺すことはない。お前には、これから普通の仕事をして生きてもらう」


 アンジェリカが言うには、組織には親がいなかったり、親に売られたりした子供が連れてこられ、『教育』を受け、暗殺者にされると言う。

 これは、子供たちが悪いと言うより、利用するだけ利用して失敗したら切り捨てる大人が悪い。


 俺ごときが言うことではないかもしれないが、保護できるならすべきだと思う。



「……はぁっ?……というかぁそもそも……何で死んでないの、私」

「ああ、お前の体にあった呪いのことか?あれなら杜撰な構築だったから、簡単に解除できたぞ」


「は?」

 女が目を丸くした。


「口封じのために組織が仕組んでいるようだが、死なれたら困るし、とりあえず殺せば良いという考えには賛同できない。」

「…………」

「イディアはもう避難させた。『ここ』にいるのは、俺とお前、お前の仲間たちだけだ。」


「………?……!?」

 女は辺りを見回した。

 どうやら驚いているようだ。

 まぁ無理はない。なぜなら、ここは『ルーア中央公園の噴水前』なのだから。


「お前たちが意識を失っているうちに、俺がここに連れてきた。この時間、この辺りには誰もいないし、地下と違って広くて良いからな」


 そして理由がもう一つある。


「お前は俺をこの噴水前に呼び出して暗殺するつもりだった」


 つまり、ここに何か準備がされている可能性がある。


「案の定、噴水前には人が来た時に発動する罠が大量に仕掛けてあった。凶暴な魔物を出現させる、な。当然取り除いた」


 俺が撤去しにいかなければ、明日公園が開いた時に誰かが大怪我をすることになるかもしれないのだ。


「……へぇ、あの罠を完全に見破って、撤去したわけ?じゃあ、私はもうどんなに頑張っても勝てなかったのね……」


「まぁ……そうだな。残念だが、俺はこの世界に生きる人間とは根本的に違う点がある」

「……違う点?」


「ああ、それは、俺が『異世界の英雄』だということだ。」

「………………はぁ……まじか」


 意外と疑われなかったな。


「俺はこの世界の人間を守るために召喚された人間だと言うことだ。だから、俺は例え暗殺されかけようが、見捨てたりはしない。もう一度言うが俺は、異世界の英雄なのだから。」




     ***




「──アンジェリカ!?無事だったのか!!」

「あ、クリフ兄さん」


「兄妹で会えたようで何よりだ。アンジェリカ、クリフが普通の仕事を2人でやってけるように頼んだ」

「分かりました、先生」


 俺はとりあえず、アンジェリカとクリフの2人には、レメディにある魔術学校が運営している喫茶店での仕事を斡旋した。これでしばらくはなんとかなるだろう。



「……へぇ、本当にこんなことしてくれるんだ」


 女(名前は『no.781』というらしい)は現在、俺のところにいる。


()()()()()?当然のことだ」

「あんた、私よりも変人ねー」

「……そうか?まあ良い、お前もお前でやることをやってもらうぞ」


 仕事探しについては、名門の魔術学校の講師と言うだけあって、かなり顔が効くので紹介しやすい。彼女にも早く新しい仕事を与えるつもりだ。


 さて、これでようやく心を休められる。

 後は教会のことだけだ。




     ***




 〜教会内にて〜


「……何……?派遣された暗殺者が、全員暗殺に失敗しただと……?」

 ある大臣が、声を震わせた。


「はい。組織からの報告によれば、オサム・ヨルカワという異世界の英雄は、我々の想定を遥かに上回るほどの実力を持っているようです。残念ながら、裏にいる我々のことにも感づいているかもしれません」


「そんなバカな……知る限り最強の暗殺組織であるはずなのだが…………」

「……いや、そんなことよりも、我々が暗殺しようとしたことが直接ハント王国にバレれば一大事になりかねんぞ」

「くそが……暗殺組織というのは所詮その程度か……!」


「大臣よ、この件について、どう責任を取るつもりです?元々この作戦は、あなたが立案したそうじゃないですか」

「……だまれ神官よ!この作戦を貴様らだって正当化したではないか!」


「皆さん、落ち着いてください──」


「落ち着いていられますか!!国家の存亡の危機なのですぞ!!」

「大臣、教皇様にそのような態度は如何なものかと思いますが?」

「おい、少なくともそんなことを言っている場合ではないだろう。今は、暗殺に教会は一切関与していなかったということにする他ない」

「しかし……」


「…………」


「教皇様、ここは私めにお任せください。教会が関与していたことがバレぬよう、手を回そうと思います」

 神官の1人が、教皇に名乗り出た。


「……わかりました。よろしくお願いします」




     ***




「……はぁ……疲れた」


 俺は、全員のひとまずの生活の安定を確認できたので、ホテルの自室で本を読んでいた。


 一昨日、昨日、今日と非常に濃い3日間だった。

 窃盗、誘拐、殺人未遂等、普通なら経験しないようなことをほぼ2日で経験することになったのだから。


 ……まさか異世界の英雄であることを3回も言うことになるとは思わなかったが……。

 まぁ、交渉材料としてそれ以上のものがないのだから仕方がないと言えばそうか。


「…………そう言えば、もうあいつらにしばらく会ってないな」

 ふと、そんな言葉が口から飛び出した。

 愛花(あいか)、委員長、龍太郎は元気だろうか?

 ミルスさんや子供2人も元気にしていると良いが……。



 俺は、そっと本を閉じた。



 ―第13話 完―

 お読みいただきありがとうございます。

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