第10話:no.781①
第10話です。
「……今のところ、生徒の健康状態は問題ないな。」
俺は、目的地に向かうまでの間、『特定探知』だけではなく、通常の『鑑定』なども応用し、生徒たちが拷問などをされていないか、逐次確認する。
「そろそろか。」
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そろそろです。
そこの角を『右に』曲がってください。
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「あ、ああ。そこまで強調しなくても大丈夫だ。」
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大丈夫ではありません。早く曲がって下さい。
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「……はい。」
道を右に曲がると、ボロボロの家屋が連なる中で、それとは少し異なる印象的な建物が現れた。
「……ここか。」
見た目は、意外にも普通の酒場だ。スラム街にあるにしては作りが立派で、普通に他の地区の飲み屋街にもありそうな感じだ。
ちょうど夜であることもあって、1階の酒場はさまざまな客でそれなりに混雑している。
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この建物の地下2階に行ってください。
階段は酒場の一番奥の棚の裏にあります。
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(……棚の裏って言ってもな。これだけ客がいる中で店員の目を盗んで棚をずらすのは難しいぞ。)
「『視覚遮断』『聴覚遮断』」
仕方がないので、強行突破だ。俺は自身を透明化させた上で、存在感を消すと同時に、物音を完全に消した。
(……よし。)
俺は棚を掴むと、その感触を確かめる。音は出ないので、直接こちらを見られない限りはバレないだろうが、明らかに棚が動いているのを見られるとやっかいなので、一瞬の隙を狙う。
(……)
店員も客も誰一人こちらを見ていないタイミングで、俺は即座に棚を動かし、後ろに道が続いているのを確認すると、その中に入り込み、棚を元に戻した。
***
(……引き続きガイド頼む。)
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当然のことですが、了解致しました。
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階段を降りると、早くも分かれ道があった。
俺はガイドの案内通り進んでいく。
「……10人全員この先か。」
地下2階は、外から見えた酒場の建物よりも遥かに広い。10メートル程で道が2つ3つに分かれ、おまけに何重もの罠らしき物が仕掛けられていた。
はっきり言って、罠は俺にとってどうでも良いのだが、複雑な道は俺には致命的であるため、ガイドがなかったら間違いなく迷っていただろう。
「……さて、この奥か。」
ガイドに従い続けた結果、一つの扉が目の前に現れた。おそらく、ここが暗殺者のアジトの入り口だろう。
もう一度『視覚遮断』『聴覚遮断』が発動していることを確認すると、俺はアジトへと侵入した。
***
「……ここは?」
平がアジトへとやってくる前。誘拐されたイディアたち10人は、見慣れない牢屋のような場所で目を覚ました。
「あ、起きたぁー?」
「あなたは…………。……!?」
イディアは、自身の手が手錠によって繋がれていることに気づく。
「抵抗しようとしても無駄よー?その手錠は特別製で、魔力を通さないから。」
「……あなた、誰なの?」
「私ー?まぁ、教えてあげても良いわよ。私は『no.781』。殺し屋やってるわ。」
「殺し屋……?何で私たちをこんな所に連れてきたの?」
「それはねぇ、貴女たちの先生を、ぶっ殺すためよ?」
「………!?」
気がつけば、イディアの喉元にno.781を名乗る女がナイフを当てていた。
ここから1cmでも前に動けば、鋭利なナイフが彼女の首を切り裂くだろう。
彼女が動こうとしても、すでに首の後ろもno.781によって押さえつけられていた。
「こんな風に、ねー?」
「……っ」
イディアは、鎖で腕を封じられている以上、何もすることができない。
「まぁ、残念だけど、ターゲットがちゃんと来たら貴女たちは殺さないであげるわ。そうしないと、人質の意味が無くなっちゃうから。ターゲットを一番簡単に、確実に殺すため。」
no.781は、イディアたちを人間としてではなく、ただの駒、モノとして認識しているのが、表情に出ていた。
だが、ある程度冷静になったイディアは、あることに引っかかる。
「……ヨルカワ先生を、殺す?……正気?」
イディアがボソっと呟いた。
「んー?なんか言った?」
「……いえ、何でもないわ。」
「まぁ、そういうことだから、短い間、よろしく、ねー?」
女は、生まれて初めて楽しみを知ったかのような、純粋で狂気的な笑みを浮かべた。
***
「────はぁ、早く時間にならないかなぁー?暇だわぁ。」
時刻は現在20時。約束の0時までまだ4時間もある。
ここからルーア中央公園の噴水前まで行って準備をするのに約1時間半かかると考えても、まだ2時間以上時間があるのは、なかなか気持ちが萎える。
「……あっという間だ。油断するな、no.781。お前なら相手を殺すことは容易いだろうが、相手が何をしてくるかは分からない。」
支部長はこう言っているが、若者の2時間を舐めないで欲しいものだ。
「早く殺したいわぁ……」
ターゲットの青年。
あの青年は、死ぬ間際になったら、一体どんな表情をするんだろう?
考えただけで、ワクワクしてくる。
絶望か、怒りか。はたまた無か。
「はぁ……どんな方法でトドメを刺そうかしらぁ?」
体の中身を引き摺り出して、だんだんと痛ぶって弄ぶ?
それとも、血止めを飲ませた上で1本ずつ切り落とす?
あとは、窒息系もいいかしら!
荒い刃で切り付けてギリギリ死ななくするのもいいわねぇ。
ああ、でも、彼の生徒たちにも、絶望を味わってもらいたくなっちゃった!!彼の生徒たちに、彼が死ぬ所をはっきりと見せてあげたい!!
いや、もしくは…………
「……殺さなければ良いのよねぇ……死なない範囲で──させるのも悪くないかしらねぇ?」
苦しむ顔が、楽しみだわ。
「……本当に大丈夫でしょうか?」
私が想像を膨らませていると、それに水を差すかのようにクリフが呟く。
「……あ゛?私が勝てないって言いたいわけ?」
「……そうは言っていません。ですが、確かに貴女の『スキル』は最強かもしれないですけど、あのターゲットは、妹の狙撃を失敗させたんです。何が起こるかなんて、もう僕には分からない。」
「はぁ……ないわぁ。」
私の戦闘能力とスキルがあれば、負けるはずがない。現に、私はどんな強者がターゲットであっても、一度も失敗していないのだから。
私のスキル──それは、『能力値操作:特大』『空間認知』『暗殺』『麻痺』の4つだ。
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【スキル名】能力値操作:特大
【効果】自身の能力値を常に1倍から100倍にする。また、任意の1人の能力値を10分の1にする。
【備考】自身の能力値は常に上昇させることが可能。
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【スキル名】空間認知
【効果】自身の現mpよりも低いmpを持つ相手の位置を把握できる。
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【スキル名】暗殺
【効果】相手が自身に気付かないまま攻撃を受けた場合、その相手のhpを0にすることができる。
【備考】ただし、攻撃前にスキルを発動しておかなければならず、スキル発動から10秒が経過すると効果が切れる。
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【スキル名】麻痺
【効果】攻撃した相手が自分よりも低いhpを持っている場合、相手を麻痺状態にできる。
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これらを駆使した結果、私と戦って生き延びた者など1人もいなかった。
そもそもスキルによって相手よりステータスが圧倒的に上回っている上に、それにマッチする2つのスキルがある。そして気付かれなかったら即死させるスキルもあるのだ。負けようがない。
故に、私は心のどこかで油断していた。
──今思えば、その時の私は一つだけ失念していたのだ。自分の勝利が揺らぐ『ある可能性』を。
「──どうも、ろくでもない事を考えているらしいな。」
「…………は?」
男の声?
気が付けば、私の背後に誰かが立っていた。
「……っ!?」
私は全力で背後の人間と距離をとる。
さっきまでここにはクリフの馬鹿、支部長、私しかいなかったはず。
私は困惑しながらも、男のことを見た。
「…………………ターゲット……だと……?」
私の目の前にいたのは、何度も資料で確認したあの男だった。
―第10話 完―
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