第7話:暗殺①
半月ぶりです。第7話です。
「『生命探知:レベル2』の方は順調みたいだな。」
今回は俺への敵意を持っている人間を一覧にして表示する設定にしているが、今のところ誰一人表示されない。
ホテルを出てから2時間が経過したが、特に異常は見られないようだ。
「あ、ちょっと寄ってくか。」
今日はむしろ生徒たちから離れていた方が良いと判断したため町を普通に観光していたのだが、良い感じの喫茶店を見つけたので寄ることにした。
「──あ、一名様ですね?ご来店ありがとうございます!」
喫茶店に入ると、店員が俺を席まで誘導してくれた。
窓際で眺めが良い席だ。
まだ昼時よりも早く、空いていて良かった。
席に着くとメニューを渡されたので、しばらく眺めた後、飲み物とパスタ、パンを注文した。
ちなみに飲み物はメロンソーダがあったのでそれにした。
この世界では喫茶店以外ではなぜかメロンソーダが手に入らないので、とても貴重だ。
「おまたせしました、季節のパスタと特製パンとメロンソーダです!」
「ありがとうございます。」
「いえっ!」
さて、食べるか……
────
【注意】生命探知より通知があります。
現在地より南100メートル先の高台にて、主様に敵意を持った人間が出現しました。
詳細:10代中盤~後半の女一人。銃を携帯しています。この店の窓から主様を狙っている可能性があります。なお、仮に主様に球が命中しても命の危険はありません。
────
……今か。
「……」
俺は慎重に生命探知が示す方向を確認する。
「『視界拡大』」
────
【魔法名】視界拡大
【効果】視界を最大3つまで追加できる。また、各視界ごとに自分を中心として半径500mまでの範囲を確認できる。
【魔力消費】100/1分
【属性】光/サポート
────
「……さて、この場所は……」
生命探知が言う高台は、どうやら観光名所のようで、かなりの人が絶景を見に来ていた。
だが、その最上部にて一人の女性が物騒な銃を持っているにも関わらず、誰もそれに見向きもしない。
……魔法で姿を隠しているのか?
「……やるしかないか。」
俺目掛けて銃が放たれた場合、最悪この店にいる客や店員に被害が出る可能性がある。となればこの店から出た方が良いかとも思うが、そもそも外の方が余計に観光客がいるため、下手に出るわけにもいかない。
となれば、俺がすることは一つ。
銃を持った人間の無力化だ。
(……『束縛』。)
俺は声を上げず静かに魔法を発動する。
勘づかれる前に行動不能にしてしまうだけだ。
「……上手くいったみたいだな。」
『視野拡大』で確認した限りでは、銃を持って様子を見ていた女は、『束縛』を打った瞬間に身動きが取れなくなっている。
さて、この後どうするかな。
俺は取り合えずパスタ、メロンソーダを腹に入れ、パンを魔法で収納すると会計を済ませ、すぐさま高台へと向かった。
***
「……ターゲットを捕捉しました。これより、隙を見て銃撃します。」
「了解だ。」
ルーアにある観光名所『視神の高台』。その高さは約50mと、この世界の建物の中ではかなり高い。
その頂上にて、銃を構えターゲットを観察する者がいた。彼女の名はアンジェリカ。年齢は17歳。金髪に赤い目の人間族で、幼いときから暗殺を仕事にしている。
(……今回のターゲット、彼はクリフ兄さんの毒を見破った実力者。油断をしたら私が殺されることになる。たとえ刺し違えてでも、彼を殺さなければ。)
アンジェリカは、喫茶店の中にいる平の様子を見る。ここまで離れていればバレルことはまずないだろうが、念には念を入れ、殺意を『魔法』で抑え込んだ。
そうこうしていると、平の元に、飲食物が運ばれてくる。
「……メロンソーダ?」
記憶が、少し思い起こされる。組織に引き取られた後、クリフ兄さんが喫茶店で飲ませてくれた。
メロンソーダは、私が初めて飲んだ、甘い飲み物だ。
確か店の人が、昔異世界人が広めたものだって言っていた気がする。
一番好きな飲み物で、初めのうちはよく飲んでいたけど、最近は忙しくて全然飲めてない。
……あの人もメロンソーダが好きなんだろうか?
「……いや、ダメだ。雑念を消さなきゃ。」
思わず、声が漏れる。
……いや、そんなことはどうでもよかったのだ。
私はこの時、自身の殺気が一瞬漏れてしまったことに気づけなかった。
「……………っ、!?」
一瞬の出来事だった。
体が、動かない。
(何かされたの……?)
ターゲットは特に魔法を放つような動作は見せなかった。
そもそも、こちらを見てすらいない。
(……これが……教会の狙う人物なの、か……。)
残念だが、私はもう殺されるだろう。
何とか相打ちにでもしたかったが、呼吸がかろうじてできるレベルの拘束魔法を使えるなら、それも許してもらえないだろう。
……クリフ兄さん、ごめんなさい。
-第7話 完-
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