第6話:党争
第6話です。
「……どうにかならないのか?」
神聖ミナ教国、大教会。
教会の内部には、決して教皇に完全に従う者だけがいるわけではない。
「異世界の英雄を暗殺するなど、正気なのか教皇派は?」
この教会には、表向きには派閥争いのようなものはない。しかし、実際には教皇の存在が至上であると主張する『教皇派』と、属性神の存在が至上であると主張する『属性神派』に分断されていた。
「……しかし、最近の教皇派は今までに比べてより狂気が増した気がするのは私だけか?教皇様の取り巻きの連中も、もはや属性神ミナ様よりも教皇様の方が重要であるかのように考えている。確かに教皇様はこの国にとって必要不可欠な存在ではあるが……これでは教皇様は取返しが付かなくなる」
「……ああ、教皇様は本来、このような方ではないはずなのだ……」
だがそれもまた、この教会の顔の一つでしかない。
『属性神派』。派閥争いの中において表向きは属性神ミナが至上であり、教皇にあまりにも権力を持たせ過ぎてはいけないという主張をしているが、その本質は少し違う。
彼ら彼女らには、教皇派によって支配された教皇を、その支配から解放するという目的があった。
「──教皇様はまだ12歳。確かに彼女は12歳とは思えないほどしっかりされていますが、教皇派のやらせていることは彼女には酷だ……」
現教皇アリス・ミナは、この神聖ミナ教国に生まれ、5歳のときに前教皇が病によって倒れ、その後を継ぎ即位した。しかし、当然5歳の少女に国の運営の主導などできるわけもなく、実際は神官や大臣によって国は運営された。
……というのが、表向きの話だ。
そもそも、この国における『教皇』とは、絶対的な支配者ではない。
『教皇』とは、この国の魔力を支える、魔力溜めでしかない。
多く人間のの信仰によって、多くの魔力が教皇に注がれる。それは単なる信仰だけではない。魔法を行使する際に教皇への祈りを経由することで、莫大な魔力を直接得ることができる。
また、それと同時に世界の魔術師の平均レベルを下げ、この国の一部の人間(主に国直属の魔術師)のみを優遇することでさえも可能になる。
そんなことを、神聖ミナ教国は、建国から今に至るまで、数百年に渡って行ってきたのだ。当然、今そのことが知られることでもあれば、この国は一気に世界中の国を敵に回すことになってしまうだろう。
だからこそ、魔法の直接発動について、人々に知られるわけにはいかない。
だが──
「……だが、異世界の英雄を暗殺するなど、流石にあってはならない」
そんなことをすれば、魔法の直接発動がどうとか、そんなことはどうでも良くなるほどの問題が生じてしまう。
疑われるくらいならまだ良い。
もしハント王国に敵として認識されてしまった場合、この国は他の異世界の英雄全員を敵に回す上、魔人などの襲撃時に異世界の英雄の力を一切借りることができなくなってしまう。
この水都ルーアが、海に面している関係上陥落したリークのようになってしまう可能性だってある。
「……しかし、そんなことは教皇派の人間だって分かっているはずだ。……教皇派は、何を考えている……?」
***
……本当、今日はどう行動すべきか。
生徒たちは既に自由行動を取っている。
犯人は、この大きなホテルの俺の部屋だけを集中して狙って来た。
おそらく狙いは俺だけであり、無理に生徒たちを隔離しても意味はないだろうと判断した。
それにむしろ、俺と一緒にいないほうが暗殺に巻き込まれにくいだろうしな。
「とりあえずは、この魔法か」
俺は、『生命探知』を発動した。
レメディに魔物がやってきた時に使った魔法である。
なお、あの戦いによって魔法のレベルも2に上がった。
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【魔法名】生命探知:レベル2
【効果】自身を中心として、半径10キロメートルまでの範囲に存在する生物の情報をを自身の目の前に表示する。ただし、どの生物の情報を表示するかは選択できる。また、対象となる生物の特徴により表示を分けることができる。
【魔力消費】200/1回または12000/1分
【属性】光/サポート
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レベル1では、その都度発動する必要があったが、レベル2になってからは常時発動することが可能になった。魔力消費は1分あたり12000とかなり多めだが、俺は異世界の英雄なので魔力量は問題ない。
いや、というよりも魔力量以前に1分あたりの魔力回復量の方が12000よりもはるかに多いので、そもそも魔力が減らない。
「……これで、とりあえず怪しい人間は確認できるな」
俺のことを狙い撃ちしてきた以上、毒殺に失敗したと分かれば他の手を使ってくるだろう。
銃撃とかな。
この世界のためにも、愛花や秋たちのためにも、色々な意味で俺が死ぬわけにはいかない。
「……慎重に行動しないとな」
-第6話 完-
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