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第5話:水都の夜②

 第5話です。




「──はい、というわけで紹介します。今日から取り合えず私と行動を共にすることになったシルフィさんです。このホテルの一室を新しく借りたので、皆さん仲良くしてくださいね」


 ホテルのホールにて。

 俺は生徒に軽くシルフィのことを紹介しつつ、彼ら彼女らを部屋へと誘導する。


 外での自由時間は19時までとしているので、これより後は外出制限が入る。


 夜中はなにかと物騒だからな。

 15歳前後の生徒たちが歩き回らない方が良い。




 ……神聖ミナ教国水都ルーア。

 表向きは綺麗な観光都市と言ったところだが、情報によると夜中のこの街はかなり治安が悪いようだ。街の一部に夜中にだけ開かれる店が集まっており、主に金持ちの観光客(貴族等)や、テロリストなどの犯罪者が集まる。




          ***




 俺は、ホテルの自室へと戻った。

 部屋は高級ホテルだけあって考えられないほど豪華な装飾が施されていると同時に、実用的な使用になっている(作業机、ベッド、トイレ、シャワー、風呂に加え、魔法使用室などの施設が付いている)。


「……ん?」


 入口のドアを開けると、違和感があった。

 昨日と開けた感覚が違う気がする。


「……『鑑定』」

 俺はドアを『鑑定』にかけた。


──

【鑑定結果】一度ピッキングされています。

──


「……?」

 俺の部屋に誰か侵入したのか?


 少なくとも今は部屋に気配はない。

 俺は部屋の奥へと入っていく。


「……荒らされた形跡はないか」


 特に大事な物は置いていないので、実際のところは入られても問題はないのだが、警戒はしなければならない。


「……何も取られてないな」


 犯人は一体何の目的でこの部屋に入ったんだ?

 このあたりの治安の悪さ、というだけで片付けて良いのか?


「……仕方ない」


 『範囲鑑定:範囲指定この部屋の壁の外まで』。


 範囲鑑定は自分が指定した範囲全てを鑑定する魔法だが、無駄に消費魔力が多いのと、少しの異常を全て報告されるため、処理が大変で疲れる。


──

【鑑定結果】部屋に置かれている、ホテルが提供する飲み水から超強力な毒が検出されました。

──


 鑑定結果の中に、見過ごせない項目があった。

 どうやら、この部屋に置いてある飲み物に毒が入っているらしい。


「……これか」

 鑑定をしたため、毒が入っている瓶はすぐに分かった。

 一見何の変哲もない水だが、毒入りらしい。


 なお、俺が今日この部屋を出ていくまでは毒は入っていなかった。それにも関わらず、毒が入っていて、しかも誰かが強引に部屋に入った痕跡があるということは……。


「……暗殺?」


 そんなことあるのか?

 異世界の英雄とは言え、敵以外から見たら俺はただの一般人なんだが。


「……というか、あいつらは大丈夫なのか?」


 もしこれが無差別に行われているとしたら、生徒も危ない。


「……プライバシーの関係上他人の部屋を『鑑定』するわけにはいかないしな」


 『鑑定』はかなり細かなことまで分かってしまうので、他人にやったらプライバシーの侵害になる。


「……仕方ない。見回りをするか」




          ***




 その後、俺は生徒一人ひとりの部屋を回ったが、俺の部屋のように毒が仕込まれていることはなかった。

 つまり、俺一人を狙い撃ちしたということになる。



「──ということがあったのですが、何か心当たりはないでしょうか?」

「……いえ、私には心当たりはありません」


 俺はとりあえず、部屋中を調べたのちハント王国の王女様に通信魔法で連絡した。政治的な問題であった場合、王女様が一番良く知っているはずだからだ。


 しかし、王女様にも心当たりは無いという。

 こうなると、俺を狙った個人の暗殺ということになるが、俺は殺されるほどの恨みを買っただろうか?


「……そもそも、神聖ミナ教国は基本的に『異世界の英雄』を容認していますし、なんならオサム様が異世界の英雄だと知っている者も僅かです。正直私には検討もつきません……。お力になれず申し訳ないです」


「いえ、ありがとうございました。王女様が謝らないで下さい。何かあったらまた連絡するかもしれません。そのときはよろしくお願いします」


「分かりました」


 通信魔法が切られた。



「……さて、本当にどうするかな」




          ***




「──何、失敗した?」


 仄暗い店の片隅。

 いつぞやの少年・少女・中年の男が再び集まっていた。


「……はい。申し訳ありません」

 中年の男に、少年が頭を下げる。


「標的について分かったことはあるか?」


「はい。だんだんと標的の情報が集まってきましたが、それによれば現在標的は自身が魔法を教えている生徒と共に修学旅行に来ているようです。ハント王国国立魔術学校の教員であるようです」


「魔術学校の教員か。少なくとも、18歳でその地位に就けるということは、かなりの実力者とみていいだろうな。ようするに、ハント王国やその周辺の重要人物か何かか。他国の人間であるなら、教会があまり情報を持っていないのも頷ける」


「はい。また、どうやら生徒の自由時間には自ら見回りをしているとか」


「やはり一筋縄ではいかないな。まぁ、これは相手の能力を図るための行動に過ぎない。すぐさまプラン2に移行すれば良いだけだ」


「承知しました」

 男の言葉に、少女の一人が瞬時に反応した。

「私が、目標を、完全に排除します。」

 そう言って、銃を掲げる。

 その銃には、魔力が纏っていた。


「……」

 その姿を、少年は複雑な表情で見つめる。



「──というわけだ。標的の隙をみつけ次第、狙撃する」



 -第5話 完-

 お読みいただきありがとうございます。

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