3-9 顔合わせ その2
若干気まずい雰囲気の中、空気を読まずにやってきたのはオレンジ色の髪の、左目に眼帯をした不死族の男だった。
「ケケケッ、お前最高だよ! いいもん見たぜ。翼人族って羽が弱ぇんだな、初めて知った」
「じゃあ情報料として金貨3枚だ」
「.........ケケッ、嫌いじゃないぜ、そういうの。おいらはジャック・O・ラントだ。よろしくな」
「よろしく」
ジャック・O・ラント。姓があるということは貴族だろうか。それにしては、振る舞いがチンピラのようだが.........。
ジャック・O・ラント LV43
不死族 冒険者 貴族
HP:1700
A:2140
G:1940
M:14300
S:13010
《魔法》
・幻影魔法
・霧魔法
・音魔法
・水魔法
《装備》
・化南瓜のマント:B
・化物達の義眼:A
・幻影槍:A
《スキル》
なし
4桁越えの欄が2つある代わりに他がものすごく低い。攻撃が当たれば大ダメージを負うだろうが、そもそも当たることが少ないだろう。幻影や音で敵を惑わして水魔法や幻影槍やらで攻撃するスタイルだと思われる。
なかなかにいやらしい手だが、嫌いじゃない。
気になったのは装備2つ。
化南瓜のマントと化物達の義眼。
効果が全く予想できない。魔法の威力をあげるとかだろうか?
まぁ、いいか。敵になるのは結構後だし。その時考えよう。
「俺様は人獣族のディーンだ! 気に入らなかったらぶっ潰すからな!」
あ、あれー?
さっきジャックにとってた態度と違うんですけど。
ねぇおかしくない? おかしく、ない?
ディーンは犬の人獣族だ。まるで犬に話しかけられているかのようで、すごい違和感を感じる。
あ、あと口。口臭い。
いとこの家に泊まりに言った時、ペットの大型犬に押し倒され、顔面をベロベロと舐められた。
マジで臭かった。思わずビンタしちゃったぐらい。
そのせいで噛まれたんだけどさ。いい思い出だ。
彼の口からはそんな匂いがする。いやね、悪い人じゃないってことは何と無く分かるよ? 言葉も丁寧だったしさ。
でもそれとこれとは話が別だ。
俺はクラスメイトの優しくて、勉強ができて、ちょっぴり太っていて、口がものすごく臭い男子に、口の中がスッキリするタイプのガムを進めたことがある。
今回も同じように適当にそんな感じのガムをあげた。
不思議そうな顔をしてそれを受け取っていた。分かんないよな。
ていうか口臭のことしか言ってねぇな。
ディーン LV41
人獣族 冒険者 二重人格者
HP:4280
A:5170
G:4600
M:5290
S:6740
《魔法》
・威圧魔法
・身体強化魔法
・地魔法
《装備》
・片手剣:A
・盾:A
・力手袋:A
《スキル》
・狂狼変化#
身体能力を大幅に上昇させるが、凶暴化する。
基本ステータスから見れば、彼が1番戦士っぽい。全ての項目が高すぎず、低すぎない。装備もスタンダードだ。
万能型、だろうか。決め手にかける感じがするが、どうでもいいや。
重要なのはこちらだ。全ステータスが全然面白くないが故に、ものすごく目を引く、二重人格者と、俺以外で初のユニークスキル!
ユニークスキルだー! スゲー!
狂狼変化。効果を見る限り、彼には凶戦士モードがあるということか。全ステータス値が似た感じなので、どれくらい上がるのかにもよるが、結構な脅威となるな。
下手したらルイとも互角に戦えるんじゃないか?
ここにいる俺とフェイとルイ以外の11人の中で、最強なのはもしかしたら彼なのかもしれない。
「僕はエレン・トラポットと言います。ご覧の通り、小人族です。............1ついいですか? 女性にあのようなことはしない方が良いかと」
「はい。マジすんませんした」
体長およそ20センチの彼は俺を軽蔑していた男性陣のうちの1人だ。種族柄仕方がないが、子供にしか見えない。ショタコンであるところのアナスタシアが求婚するのも頷けるというものだ。
名字があるということは、彼も貴族なのだろうか? この組織には地位の高いやつが多いな。
エレン・トラポット LV39
小人族 冒険者 王族
HP:3900
A:9020
G:4300
M:5170
S:15020
《魔法》
・毒魔法
・分裂魔法
《装備》
・極小槍:A
・天駆者の靴:A
・断熱の外套:A
《スキル》
なし
貴族どころか。なんだよこいつ王族なのかよ。王族がなんでこんなとこにいるんだよ暇人かよ。
ていうかこれどんな風に戦うの? 僕よく分かんない。
分裂魔法というのは、俺がカームで使用した増殖の魔法? の劣化版のようなもので、使うと体が小さくなる。離れたぶんの体積だけ体が小さくなる。自分自身と接触すると元に戻る、といった魔法だ。
その気になれば見えなくなるくらい小さくなることも可能だが、そうすると風に吹かれて飛んでいったりしてしまうらしい。
あ、そのための天駆者の靴か。
天駆って言うくらいだから、空を駆けることができるのだろう。これなら風に吹かれても大丈夫.........いや、そうでもないか。触れないと戻らないわけだから、どっか飛んでいっちゃうと都合が悪いな。
まぁいいか。
毒魔法は結構危ないな。これは強いやつなら石とかも溶かす。そんなのを精製して飛ばしたり、毒沼を作ったり、霧状にしたりする。とても危ない魔法だ。
小ちゃくて、空を飛んで、有毒とか。ウイルスみたいなやつだな。
「ん? アナスタシアさん。貴女は行かなくていいのですか?」
視界の隅で、ゲツェラがアナスタシアに話しかけていた。
「いや、実は、私は彼と先ほど会ってな。自己紹介は済ませてあるのさ」
「なるほど。彼にも求婚したんですか」
「なっ......! なぜ分かる⁉︎」
アナスタシアは相変わらず馬鹿の子な感じだな。実に残念だ。
「............はああぁぁぁぁ............うーむ。ん? 誰だお前?」
寝ていた人族の男が起きたようだ。おせーよ。よく今まで寝れたね。結構騒いでたんだから起きろよ。
「お、チェシー起きたか」
「おー、おはようバイガロー............。えーと、お前ら何してんの?」
「相変わらずマイペースな野郎だぜ。あいつに自己紹介してんだよ。お前もしろ」
「あー、うん。あいよー。えーと............チェシーですどーも。............こんなもんか?」
適当だなおい。なんか他にないのか? 好きなものとか嫌いなものとか嫌いな人とか。
ちなみに俺はニートの兄が大嫌いです。
チェシー LV38
HP:6750
A:5200
G:4820
M:9140
S:7290
《魔法》
・召喚魔法
・精神魔法
《装備》
・ボウガン:A
・首輪の腕輪:A
・盾:A
《スキル》
なし
こいつは、何かを召喚して使役して戦うのか。基本ステータスは十分にあるし、自分で戦ってもいいと思うけど。
それ以外特に言うことはないな。
あ、いや、ボウガンを持っていると言うことは、遠距離攻撃ができるのか。
召喚獣と敵の戦いの隙に矢を打ち込む。
なかなか有効な手だと思います。
さて、最後にこのずっと食べてる魚人族の女。
............まだ食べてるんだ。
どこに入っていくんだろう?
そいつは体の線が細く、青色の髪を肩まで伸ばし、ダボダボのTシャツとダボダボのズボンを履いている。胸は普通で、背はすらりと高く、手には水掻きがついていた。おそらく足にもあるだろう。
そして美人だ。
うん。美人。
美人なんだけどな〜。
最近周辺に美人が集まり過ぎてんのと、ガツガツとお菓子を貪っているせいで、あんまり魅力的に見えない。
「モグモグモグモグモグモグモグモグモグ」
「ルカン。いつまで食っているつもりだ。さっさとやれ」
「モグモグモグモグ............分かった〜〜」
ルカンと呼ばれたその女は、椅子に座りながらダラっと仰向けになってこちらを見た。
「ルカンであ〜〜〜る。なんか食べ物ちょうだい」
「いや、まだあるだろそれ食えよ」
図々しいやつだな。
美人だからいいけど。
ルカン LV43
魚人族 冒険者 暴食者
HP:7214
A:6841
G:8004
M:4906
S:7848
《魔法》
なし
《装備》
なし
《スキル》
・万物吸収#
食べたものの強さの分だけだけ強くなる。胃腸も強くなる。
........................。
こいつはヤバい。
魔法も装備もないが、そんなのは問題ではない。
このユニークスキルがヤバい。
俺を含めて3人目のユニークスキルだが、より理不尽さが前面に押し出されている。
俺の万物創造大概だが、こいつも酷いな。
要するに、食えば食うほど強くなるって言うことだろ? 今は別にそうでも無いけど、そのうち半端ないステータスになるぞ。
例えばこいつが同じくらい強いやつを喰ったとしよう。
するとどうなるか?
強さが単純に2倍になる。
........................。
今のうちに殺しておくか?
いや、やめておこう。たとえ2倍になるとしても、俺の敵では無いのだ。確実に勝てる相手である。
だが、さすがに警戒はしておこう。
さて、全員自己紹介し終わったようだ。次は俺達の番だな。
さっきみたいに怒らせないようにしよう。




