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閑話 違いの分かる男

思いついたので書いたのですが面白いかは謎です。

これは俺、智坂徳がまだ悪の組織、匿名希望☆に入隊して間もない頃。

この日は朝の朝食中に少しカッコイイシーンを見たんだ。


テレビに出ているタイトルはズバリ。

『違いの分かる男』だった。

何かの映画に出たイケメン俳優さんが大のお酒好きで特にワインが好きらしい。


俳優として一定の地位を築き、お金もあるので日々いろんな種類のワインを飲み比べているそうだ。

そんなイケメン俳優さんがスタジオに用意されたワインを飲み。

ワインの銘柄を当てるそうだ。


(そんなこと本当にできるのかな?)


それ専門のプロならともかく、ただのお酒好きの俳優にはできないだろうと思っていたが、その俳優は見事に5本中4本の銘柄を言い当てた。

俳優の失敗した最後の問題はプロでも難しいひっかけ問題だったらしい。


(おお、すごい・・・!)


俺はこの時、見事に俳優さんのことを違いの分かるカッコイイ男だと思ってしまった。

メディアの見せ方もそうだが、一本外してプロではないんだよ?

というところに本物に違いが分かっている人感が出ているとかはこの時、全く考えなかった。


会社に出社したその日の昼休みに俺は今朝見たテレビの内容を先輩であるネイルさんに話した。


「ほう、お前は違いの分かる男がかっこいいと思うわけだ?」


俺の話に先輩は難色を示した表情で聞き返した来た。


「はい。そうですけど。先輩は思わないんですか?」


俺は素直に感想を言って先輩の意見を求める。


「違いが判ることは重要か? 最近では何にでも『常識』って言葉を使って『知ってて当たり前』感を出してるけど。それは間違いだと思うんだ。」


そう言って先輩は最近のテレビの内容を批判した。

『箸の持ち方』や『漢字』、『常識問題』、『作法』と様々な分野を否定する。


「まず、箸の持ち方なんて親から子に教えていくものだろ? それを他の奴が『正しい箸の持ち方はこうです!』って自信満々に言うのはおかしくないか?」


確かに言いたいことは分かる。

『正しい箸の持ち方』なんてものは親が子に教えるものでそれは家庭によって千差万別だ。

それで『正しい箸の持ち方』ができるかのチェックをテレビでしてもそんなの『その人たちが勝手に言っているだけでそれが正しいとは限らない』のだ。


なにせ『箸の持ち方』なんて箸を使う文化人は毎日使っている物だから使い方なんていちいち学ばない。

上品な学校ならマナー教室で習う可能性もあるが、少なくても12年間の学生生活で俺は習ったことがない。


「確かにおかしいですね。」


「だろ? そんな正しい持ち方なんて習わないのにそういうのがあってそれができて普通みたいに放送したらそれができない親や子供に対して失礼だろう? 放送するなら『意外に知らない正しい箸の持ち方』とかにしないとな。常識って言葉を使って当たり前にするのはよくないよな。」


「なるほど、確かにそうですね。」


俺が相槌を打つと先輩はさらに饒舌に話し始めた。


「そうなってくると『漢字』や『常識問題』、『作法』ってのもどうかと思うね。漢字なんて学校のレベルによって違うし今はパソコンがあるから別に覚えてなくてもいい。常識的な問題とか言っても昔学校で習った問題が出てくるのはおかしい。人によっては覚えてる人もいれば覚えてない人もいるんだぜ? それは頭悪いとか別にしても必要ないから忘れたり他に覚えたいことがあってそっちを覚えている間に忘れた人だっているかもしれないだろう?」


饒舌に語る先輩に対して俺は頷くことしかできない。


「一番悪いのは『作法』を常識にすることだよな。 冠婚葬祭とかって常識的な作法って思われてるけど。結婚しない人や葬式に行ったことない人なんかは作法とは無縁だぜ? じゃ、どこかで習うのかと言われれば習わない。 そもそも結婚式や葬式の作法に慣れてる人ってそういうのによくいく人だろう?じゃ、行ったことない人は『作法を知らない礼儀知らずなのか?』 どこかで習うわけでもないのに?」


ううむ・・・ 何も言い返せない。

確かに『作法』って必要な時に教えて貰えばそれで問題ないよね。

結婚式はともかく、葬式に慣れてるってなんだか嫌だし・・・。


「だから、俺は違いの分かる男はカッコイイとは思わない。」


「え? そこに帰結するんですか?」


先輩の言葉に俺は思わず声を上げてしまう。


「ふぅ・・・ まだわからないのか? 違いが判るってのはそれをよく知ってるからなんだ。 じゃ、知らない俺達は無知で馬鹿なのか? と言われればそれは違う。 俺達はそれに興味がないからしらないだけなんだ。 そして、それは別に悪いわけじゃない。 興味のないことを無理に覚える必要はないからな。」


「はぁ、なるほど。」


俺は先輩に対して分かったのか分かってないのかはっきりしない返事をして誤魔化すことにした。

先輩は俺の返事を『分かってない』と受け取ったのだろう。

立ち上がると「ついて来い」と言ってどこかに歩いていく。


俺も立ち上がって先輩の後ろをついていくとそこには同期のパン○ース君がいた。

なぜ彼がこんなところにいるのか定かではないが、とりあえず同期なので挨拶を行った。


「パン○ース。これをどう思う?」


先輩はそう言ってスマフォを操作すると何かの宣伝広告を映し出す。


「う~ん。これは新素材使ってるけど吸水性が今までとあんまり変わらないんですよね。なのに値段が高いんですよ。」


パン○ース君は先輩のスマフォを覗いてそう意見を返した。

俺は何の画像なのか気になって先輩のスマフォを覗き込んだ。

そこにはデカデカと文字で『新素材を使ったオムツ登場!』と書かれていた。


「オムツ・・・?」


「お、智坂もオムツに興味があるのか? 俺のおすすめはパン○ースシリーズの原点ともいえるパン○ースの改良版であるパン○ースエクスタシーがお勧めだぜ!」


パン○ース君はすごくいい笑顔でキラキラと輝きながら自らのおすすめのオムツの画像を見せてくれた。

うん。

何が違うのかわからない。


「ちなみにパン○ースとムーニー○ンの違いって何?」


先輩はなんとなく気になったのだろう質問をパン○ース君に投げかける。


「何言ってるんですか!! 全く違いますよ!!」


その言葉を聞いたパン○ース君は猛烈に批判すると二つの二大オムツメーカーの違いについて延々と語ってくれた。

履き心地や吸水性、フィット感、漏らした時の不快さの強弱・・・・

俺には正直何が違うのか理解できなかったが、それは先輩も同じなようでパン○ース君の話を聞きながら後悔と苦痛に顔を歪めていた。

きっと俺も同じ顔をしているだろう。


こうして俺はこの日、大事なことを学んだ。


『違いの分かる人ってのは好きだったり興味があったり、仕事だったりで詳しいだけで別にカッコ良くはない。』


皆もメディアに騙されないようにね!


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