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旅館にて

俺は現在、元戦国戦隊ゲコクジョウジャーのレッドさんとホワイトさんが泊まっている旅館の一室にいる。

2人を監視するために他の監視の方々と共にやってきたのだ。


生憎と世間が夏休みという長期休暇のために部屋は、6人部屋と4人部屋の二部屋しか取れなかった。

なら普通、ここは男女で分かれるのが基本なのだが・・・

なぜか俺は現在、6人部屋でハーレム状態だった。

右を見て左を見ても女の子。


「上伊集院さん。この状況はいったいなんなんですか?」


俺はインカムを使って別の場所で待機している上伊集院さんに話しかける。


「ああ、何かあった時のために戦力は重要だろう? あと、晶君と彼女達の仲を君に取り持って貰おうと思ってね。 あと、その旅館はこの街でも高級で人気が高くてね。 泊まることになると話を聞いて女性隊員の監視希望者が増えてね。四人部屋の方も女性隊員でいっぱいなんだ。まぁ、頑張ってくれたまへ」


そう言って上伊集院さんは連絡を切った。


(向こうの部屋も女性隊員しかいないってことはレッドさんの監視は俺一人だけなのだろうか・・・)


思わず俺は溜息を洩らした。


「すみません。御馳走になってしまって・・・」


そんな俺に背後から申し訳なさそうに声をかけてくるのは橙子ちゃんだ。


「ああ、いや。全然に気にしないで・・・」


俺は振り返ってそういうと思わず彼女の姿に目がいってしまう。

食事が運ばれてくる前にお風呂に入った彼女の髪はまだ濡れており、さらには温泉旅館にある浴衣姿なのだ。

現役女子高生のお風呂上りの浴衣姿。


(なんだろう。犯罪臭がする・・・)


俺はそう思って彼女から視線を外して他の所に眼をやるが、残念ながらこの部屋に安全地帯はほぼない。


「これおいしいね。」


「碧、醤油とって。」


彼女の後ろでは運ばれてきた食事に早速手を付けているブレザーハートの他の面々と姪の晶がいる。

彼女達がこの部屋で今日、一緒に寝泊まりすることになった面々だ。

何か事が起きた時にすぐに動ける俺達の最高戦力。

それが彼女達だ。


そこに、旅館に泊まる唯一の男性の監視役である俺の計7人がこの部屋で止まるのだ。

え、6人部屋なのに7人で泊まれるのかって?

高級旅館なので部屋は十分に広いので泊まること自体に問題はない。


(問題なのは俺の理性か・・・・)


姪の晶以外は血縁でもなんでもない女の子達なのだ。

そんな子達と一つの部屋で寝泊り・・・

俺が宦官か仏、僧侶なら問題ないのだろうが、残念ながら俺はそのどれでもない。

これでも俺は健全な男なのだ。


(こんな女の子だらけの部屋にいていいのだろうか・・・)


男としてはパラダイスの様な状況なのだが相手は全員が高校生だ。

手を出せば、不純異性交遊や援助交際に間違われて俺は逮捕されてしまう。


(そうならないためには・・・・)


菩薩の様な何にも動じない精神が必要だ。

そのためには男にのみ備わった特殊機能である賢者タイムに突入しなければならない。

だが、賢者タイムになるのは非常に難しい。


なにせ同じ部屋に女の子が6人もいるのだ。

彼女たちがいる限り、この部屋で賢者になるための修行は行えない。

そして、ここは高級旅館だ。

俺が一人でくつろげる場所はあるだろうが『そこで修行が出来るのか?』と問われれば、まず不可能だろう。

そんなことをすれば変態として旅館を追い出されるだろう。


(考えても仕方がないとわかっているんだけどな・・・)


そう思いながら、俺は席について食事をとる。


「おお、うまい・・・」


思わず口からこぼれた感嘆の声。

さすがは高級旅館だ。

急遽来たお客様にこれだけいい食事が出せるだなんて・・・


(まぁその分、料金は高かったけどね・・・)


俺は提示された金額に驚いて目を丸くした。

まぁ高級旅館に11人泊まるだけの料金を払ったのだ。

仕方ないだろう。


「それにしても、この旅館ってかなり高額なのに11人分も払えるだなんて智坂さんってお金持ちなんですか?」


黒条さんがそんな質問を投げかける。

まぁ頼まれてすぐに高級旅館11人分の金額が出せたのだからそう思うのは仕方がないだろう。


「いや、仕事が忙しくて休みがあまり取れなくて使っていなかっただけだよ。今回の宿泊代でもうお金はスッカラカンさ。」


俺はそう言って苦笑いを浮かべる。

実際はまだ大分余裕があるのだがそれは言わない。

だって余裕がある理由には以前、黒条さんに襲われた時の謝罪金として協会にもらったお金を使っているからな。(詳しくは第七話に相当する『休日四日目とそれ以降。』をお読みください。)


「さ、ご飯も食べたし。俺もお風呂に言って来るかな。」


食事が終ると俺は早速お風呂に出かける。

食事が来る前はレッドさん達が泊まっている部屋を割り出すのに時間を取られてまだ入っていなかったのだ。

レッドさん達の部屋は割り出せたがさすがに旅館内では怪しい行動はできない。

レッドさん達の行動を探るためにも早く上伊集院さん達が用意してくれた盗聴器をレッドさんの衣服か何かにつけてしまいたいが、出会えないのでは仕方がない。


(まぁ、お風呂場で見張っていればいずれ来るだろう。)


という考えのもと。

非常に居心地の悪い部屋から逃げる様にその場を後にする。

なんたって部屋の中は俺以外が全て現役の女子高生なのだ。

居心地の悪さは半端じゃない。




「ふぅ・・・」


俺は体を洗ってからお風呂につかり一息つく。

残念ながらレッドさんの姿は見受けられないがここで待っていればいずれ来るだろう。

のぼせてしまわない様に気をつける必要があるし、ここ以外にも風呂場はあるのでもしかしたらそっちに行くかもしれないが男の諜報員は俺は一人しかいないのだ。

ここは女性陣に複数個所を抑えてもらって盗聴器を仕掛けてもらおう。

女性は男よりも荷物が多いから紛れ込ませやすいしな。


そんなこと思いながらお風呂でのんびりしていると不意に声をかけられた。


「おう。久しぶり。」


振り返って声をかけてきた人物の顔を見るとそこには昔なじみの顔があった。

俺の中学時代の黒歴史を思い起こさせるあまりいい思い出のない人物だ。

俺は中学時代に超能力に憧れて何人かと厨二病にかかり、そいつらとつるんでいた。

こいつはその中の1人のとどろき 雷峰らいほうだ。

なぜ、いい思い出じゃないのかって?


それは彼が単なる黒歴史を共に過ごした仲間だからではない。

彼が俺と違って厨二病にかかった時に本当に超能力に目覚めてしまったからだ。


「久しぶりだな。こんなところでどうしたんだ?」


俺は久しぶりに会った友人に返事を返しながらも苦笑いを浮かべる。


「ははは。いや~。この街のヒーローをしながらこの旅館で住み込みのバイトをしてるのさ。今は休憩中だからお風呂に入りに来たのさ!」


そう言って彼は濡れた髪を手でかき分ける。

彼は超能力に目覚めて以降、少しナルシストになっている。

なので俺は彼のことを少し苦手にも感じている。


「そ、そうなのか・・・ ヒーローって忙しい仕事もしてるのに大変だな。」


俺は(休憩中に風呂に入っていいのか?)と疑問を浮かべながらも彼に返事を返した。


「いや~。そうでもないさ。この黒き雷と呼ばれる≪ブラックサンダー≫の手にかかればどんな問題も瞬時に解決さ!」


と轟は自慢気に語る。

≪ブラックサンダー≫それは彼のヒーロー名であり、彼の能力である『黒き雷』のことでもある。

正直、それほど強力な能力ではない気がするのだが彼はその能力をものすごく気に入っている様だ。


「それにしても、君。何か僕に相談したい悩みがあるんじゃないのかい?」


そう言って雷峰は俺のすぐ隣に座ると「何でも相談に乗るぜ?」と言わんばかりに微笑みかける。


(別に相談事などないのだが・・・ いや、もしかしてこいつもレッドさん達のことを気にかけているのか?)


「お前、もしかして気づいているのか?」


俺は恐る恐る轟に尋ねる。

彼のヒーロー名であるブラックサンダーはこの街を守るヒーロー名に存在した。

つまり、彼がレッドさん達のことを嗅ぎつけてきている場合。

他のヒーローも知っている可能性がある。

上杉と武田の配下たちの力を持つ人たちがこの件に気づいているとしたらそれはまずい。

いち早く手を打たなければならないだろう。


「ふ・・・ この俺が気づいていないとでも?」


そう言って轟はまた自慢げな顔をする。

「お前の事はすべてお見通しさ」と言わんばかりの清々しい自慢顔が少し憎たらしいが我慢しよう。


「そうか。それはどれくらいの人が気づいているんだ? できるだけ、内密にして欲しいんだが・・・」


俺が小声で頭を下げながら質問すると彼は俺の方に置いて「大丈夫だよ」とでも言いたげにウインクしてきた。


「安心したまへ。この件についてはまだ僕しか知らないさ。大丈夫だよ。どんな事情があるかは知らないが僕に任せておけば問題ない。」


彼は力強く頷きながら握り拳に親指を突き出したグッドのハンドサインを突き出してきた。


「そうか。よかった。」


俺は安堵の息を漏らして彼に助けを乞うことにした。

あまりいい思い出はないし苦手な奴だが、さすがはヒーローをやっていることはある。

ナルシストなのは変わっていないが轟は頼れるやつに成長していた。


「だから、俺に事情を説明してごらん。何かわけがあるんだろう。」


そういって彼は事情を尋ねてくる。

どうやら俺から情報を聞き出したいらしい。

旅館で働くという潜入調査をしているのできっと浜辺でのことが気になるのだろう。


「えっとだな。浜辺ではいい感じだったんだ。でも、他の女の子ともLINEで連絡を取り合っていてその子達ともいい感じなんだ。俺としてはそっと自然に分かれるのが一番だと思うんだ。そう、できれば浮気がバレるんじゃなくてもっと自然に・・・ なんていうのかな・・・」


俺はしどろもどろになりながら轟に説明する。

轟は俺を見て驚きの表情を浮かべていた。

どうやら彼はレッドさんが浮気をしているとは思っていなかったらしい。


こうして、情報を彼に渡して俺はその場を後にした。

レッドさんの監視は旅館で働いている彼に任せた方がよさそうだ。

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