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レッドさんを監視しよう

砂浜でのバーベキューを終えた俺達は海で遊ぶ予定だった。

予定だったということは予定が変更になったということを意味する。

ではなぜ予定が変更になったのか?

それはリリカルハニーである高町香ちゃんの母であり、元正義の味方であるリリカルバニーこと高町芳さんからもたらされた元戦国戦隊ゲコクジョウジャーのレッドさんとホワイトさんが仲直りしたという情報を聞いたからだ。


別に二人が仲直りすること自体は問題ではない。

問題なのは仲直りした二人がまた破局した場合だ。

以前の遊園地内での戦闘は大きなニュースにもなったがあの時はレッドさんは一命を取り留めた。

だが、今度もそうだとは限らない。

人死にが出れば正義の味方のイメージがダウンしてしまう。

これは協会にとっては由々しき事態だ。

悪の組織の俺はそうなっても全然問題ないのだが、現状ではブレザーハートに姪の晶というヒーローに囲まれた状態なのでそうはいっていられない。


せめて、戦国戦隊ゲコクジョウジャーが解散していなければブルーにイエロー、グリーンの3人が何とかしてくれそうなんだが・・・

彼らは戦隊解散後、自分たちに宿っている戦国武将たちの生前に住んでいたところに引っ越してしまった。


(なぜ、こんな時に限ってヒーローっていないんだ・・・

いや、だからこそいろんな場所にいろんなヒーローがいるんだろうけど・・・)


「あ、そうだ。この地域のヒーローに応援を頼めばいいんじゃないですか?」


俺は妙案を思いついたかのようにそういうとブレザーハートの子達も「ああ、確かにそれがいいかも」と賛同してくれた。

黒条さんも「このエリアは私達の管轄ではありませんし、その方がいいかもしれませんね」と頷いていた。

やはり正義の味方も悪の組織同様にエリアごとの縛りがあるのか勝手に行動するのはよくないのかもしれない。


「残念ながらそれはできません。」


だが、そんな彼女たちと俺を佐部さんがバッサリと切り裂いた。


「なぜ、だめなんですか?」


橙子ちゃんが聞き返す様に質問すると佐部さんはいつの間にか手に持っていたノーパソの画面をこちらに向けてきた。

書いてある内容はこのエリアを守護するヒーローの名前の一覧表だ。


『ご当地ヒーロー一覧表

ロックメン 上杉二十五将 ブルームーン メタルマン 武田二十四神将 ブラックサンダー ・・・エトセトラ』


「このおもいっきし上杉と武田の名前を掲げている人たちはどなたですか?」


俺は思わずノーパソの画面を指さして尋ねる。


「それぞれ、上杉・武田に仕えていた名将たちの力を宿した人たちです。」


佐部さんはハッキリとそう述べた。


(あぁ・・・ だいたいそうじゃないかなとは思ったけど・・・)


こうして、このことは協会には内密にすることになった。

だって上杉謙信と武田信玄の力を宿した人達が付き合っているなんてこの人達が知ったらどうなるか・・・

ガチで上杉軍 対 武田軍の戦争が始まっちゃうって・・・


そうなれば、この街はいったいどうなるのだろうか・・・

上杉と武田の実力が拮抗しているのは歴史的に有名な話だ。

その二人が戦っただけでも長引きそうなのにお互いに軍勢を率いたりなんかしたら・・・


「か、壊滅ですかね・・・」


俺は恐る恐る尋ねると周囲にいるブレザーハートの子達も上伊集院さん達も顔を青白くして震えていた。


「ま、まだこの二人ならば私達とブレザーハートで止められるかもしれないが・・・ この軍勢が加われば私達では抑えきれない。下手に戦いに参加すれば三つ巴の戦いに発展しかねんぞ。」


上伊集院さんは「絶対に協会にバレるなよ!」とでも言いたげに視線を皆に向ける。

というか、眼が血走っていてものすごく睨んでいる。

それだけこの街は現状、危険な状態ということだろう。


「よし、作戦を決めよう。」


上伊集院さんは早く早くと言わんばかりに作戦を立案する。

といっても迅速に行動を開始するために適当に人を配置して作戦は状況に応じて臨機応変に対応するというものだ。


「レッドとホワイトにはそれぞれ監視をつける。あと、上杉二十五将と武田二十四神将にも監視が必要だろう。これは私達サポート班と戦闘班の中でも追跡や隠密に優れた者を出す。最重要人物であるレッドとホワイトの内、レッドは悪いが智坂君。君にお願いしたい。」


「分かりました。」


俺は上伊集院さんの指示を受けてまたしてもレッドさんの監視をすることになった。


(アレ? 悪の組織も正義の味方もやってることは変わらないかも・・・?)


そんなことを思いながらも俺は早速レッドさんを探しに出かけることにした。


「これをどうぞ。何かあれば連絡してください。」


佐部さんがそう言ってインカムを渡してくれる。

俺はそれを受け取って装着して通信できるかを確認してから出かける。


(レッドさん・・・ 頼むから早まらないで・・・!)


そんなことを考えながら走ったけれど、よく考えれば女の子との旅行中にナンパや二股ってすることないよね。

なんで、俺達ってこんなに必死になってレッドさんを探すことにしたのかな・・・?


それから、少し走って高町さんの目撃した現場に訪れるとレッドさんとホワイトさんがイチャイチャしていた。

それはもう見せつけるかのようにイチャイチャしていた。


(あ・・・ これなら安心かも・・・・)


そう思いイチャイチャを見せつけられること三十分・・・

遂に現場は動いた。

イチャつき終わった2人が離れてお互いに別々の場所を目指す。

ホワイトさんは海に向かってレッドさんは海の家に向かって歩く。


(それぞれが何を思いそんな風に別れたのかは知らないが、とりあえず俺はレッドさんを追う。)


レッドさんは海の家に行くと売店に並んで順番を待つ。

その間、ホワイトさんの方を見れば海で泳いでいた。

遠泳でもしたいのか人のいない方に人込みを避けながら器用に泳でいるようだ。


「お兄さんカッコイイですね。1人ですか?」


俺がそんなことを思っているとなぜかレッドさんが逆ナンされていた。


(レッドさん! そんな誘惑に負けちゃいけませんよ?!)


俺の想いが届いたのかレッドさんは「いや~。ごめんね。彼女が待ってるから☆」と言ってレッドさんは逆ナンしてきた女の子を軽くあしらう。

女の子は残念そうにレッドさんから離れて行く。


(レッドさん・・・ 真面目になったんですね・・・)


レッドさんが一途なことに俺は瞳に涙を潤ませて思わず喜んでしまった。

だが、女の子が立ち去った後のレッドさんの呟いた小さな一言を俺は聞き逃さなかった。


「今の子にもう少し胸があれば及第点なんだけどな・・・」


レッドさん・・・・ 俺の涙を返してください。

レッドさんは呟いた後で手に持っていたスマホを動かして暇つぶしを始めた。

俺はそっとレッドさんの後ろに並んでスマホの中を覗き込む。

先程の発言でレッドさんへの俺の信用度はガタ落ちしたので、一応念のためにスマホの中を覗かせてもらう。

気づかれない様に俺も手にスマホを持って弄っているように見せかける。

俺の手に持っているスマホはカメラモードであり、カメラの中にはレッドさんのスマホの画面が写しだされている。

こうすることで、相手に悟られずに覗けるのだ!!(マネしないでください。プライバシーの侵害で訴えられます。)


俺が恐る恐るカメラを除くとレッドさんはLINEを行って誰かと連絡を取っていた。

内容は・・・


『今度、見に行く映画なんだけど・・・』

『今度の休みに一緒にプールに行かない? 水着新調したんだ♪』


などといった言葉がチラチラ・・・

俺は思わずホワイトさんの方を見てしまうが、残念ながら彼女は遠泳の真っ最中だ。

ということは、LINEの相手はホワイトさんではない。

映画の話と水泳の話をしていることから相手は2人いる可能性がある。


(ん? 三股ですか?)


俺の疑いはさらにひどくなる。


(いやいや、水着はともかく映画は男友達かも知れないじゃないか・・・ そうなると二股・・・)


どちらにしても、レッドさんはアウトっぽかった。

せめて、水着を新調した人が妹とか親族で恋人に見せる前にアドバイスが欲しい的な流れであることを祈ろう。


「かき氷と焼きそば下さい。」


レッドさんがそう言って海の家で買い物を済ませると俺も適当にかき氷を買ってその場を後にする。

海の家はそれなりに込んでおり、というか店の数と人口がマッチしていない。


海岸はこんな感じ(パソコンじゃないと分かりズライと思います。)

                    海の家

砂浜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~砂浜

  赤と白    人口密集地~~~~~~~~~~~~~~ここぐらいまで

海~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~海                              


レッドさんとホワイトさんは二人っきりになりたいのか人口密集地から離れたところに陣地を築いています。

俺は人口密集地の端の方でレッドさん達を観察します。

レッドさんが自分で築いた陣地(パラソルのある所)に帰るとあらかじめ設置していたテーブルの上に買ってきたものを置いて遠泳しているホワイトさんを呼んでいます。

場所が遠く買うのに時間がかかるとわかっていたからホワイトさんは遠泳していたようだ。


砂浜にホワイトさんが戻ってくるのを待って2人は買ってきたものに手をつけます。

この時ほどお2人を観察したくない時はありません。

なんたって付き合いたてのカップルの様にイチャイチャしているんですから・・・

俺も誰かに「あ~ん♪」とかしてみたいです。


(でも、なんでだろう・・・


あんな幸せそうな2人なのに・・・


レッドさんが浮気してるかもって思うと・・・


ホワイトさんが不憫すぎる!!)


ホワイトさんに「なんでまたレッドさんと付き合うことにしたんですか?」と聞きに行きたいがここはぐっと我慢だ。

それに俺が見たLINEの映像は何かの間違いかもしれない。


そう!

もしかしたら!

もしかしたらだけど!

ホワイトさんが社交的じゃないからレッドさんが代わりにホワイトさんのLINE仲間に返信を・・・!


いや、うん・・・・

言ってみただけでそれってかなり確立低いよね・・・

そうして日中、2人の砂浜でのデートを観察した俺はようやく2人が止まっている旅館を突き止めた。

人のデートを観察するってあんまり精神的によくないよね・・・


2人は結構、高級な旅館に泊まっているようだった。


「旅館を突き止めました。どうしましょう? 俺も泊まった方がいいですかね?」


俺はこっそりと隠れてインカムで通信を行う。


「うむ。ならば、2人の偵察要員を何人か泊まらせよう。」


ということになり、俺はこの高級そうな旅館に泊まることになった。

宿泊代金はなぜか俺持ちで・・・

まぁ晶達はヒーローになったばかりの零細企業だからね。

引っ越しでお金をかなり使ったのだろう。

仕方ないなと思いつつ俺はATMに向かうのだった。


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