父は娘には敵わない
雷光の煌めきに驚きつつも決着がついたようなので役員と共に現場へと向かう私達。
錬金術師チームに出来うる限りで元の状態に戻してもらいながらも完全に元に戻すとはできなかったが、それでも高速道路風に作った現場を地面と同じ高さに戻すことはできた。
(作戦終了後に起きた雷光・・・ 普通に考えれば晶の最後のあがきだ。 そしてそれは、フレイムバサラには通用しない。)
普通なら・・・
そう、普通なら通用しない。
しかし、上伊集院の中では晶の勝利の可能性がわずかにだけあった。
それは、願望や希望が混じったまさに奇跡の様な状況だろう。
だが、彼女が晶を自分たちを代表するヒーローに選んだのはただ自身の持つ能力との相性だけではにない。
ヒーローになろうという強い想いと正義を貫かんとする純粋な心。
その二つがあるからこその選択であり、それはアニメやドラマのヒーローが必ず持っているものだ。
(そんな彼女だからこそ、この絶対的不利な状況下でも勝利できるのではないか・・・)
そんな夢物語を思い浮かべた私が確かにそこにいた。
「いました!」
先頭を走っていた七色が声を上げて叫んだ。
それを聞いて私も速度を上げて走る。
(もう少し・・・ もう少し・・・)
結果を見るのが怖かったが結果を見なければ先には進めない。
そんな二律背反な思いに駆られながらも駆けた先には・・・
娘に覆いかぶさるようにして抱きついたフレイムバサラと抱擁を受ける美坂御琴にコスプレした晶の姿があった。
「よく頑張った」とでも父親に励まされているのだろうかもしれない。
そんな情景に私達は足を止めて立ち尽くしてしまった。
「あ・・・! みんな!! やったわよ!」
そんな私達を見つけて晶が手を振りながらそう叫んだ。
私達は最初、その言葉の意味が解らなかった。
「・・・! まさか・・・!」
最初にそう叫んで走り出したのは正義の味方派遣協会の役員である小杉さんだった。
それに続いて私達も走り出す。
「・・・! す、克さん!大丈夫ですか!?」
フレイムバサラの顔が見える位置まで来た小杉さんは驚いた表情にまるで奇声を上げるかのように叫びながらフレイムバサラに駆け寄った。
私達も駆け寄るとフレイムバサラはぐったりとしていて力なく晶にもたれかかって気絶していた。
「い、いったいどうやって・・・」
「それは・・・ まぁ、企業秘密で・・・」
小杉さんが事情を聴くと晶はバツが悪そうに笑って返した。
どうやら、正攻法で勝ったわけではないらしい。
しかし、勝利は勝利だ。
「ふふふふ。これで合格は確定ですよね・・・」
とりあえず私は悪女の様な顔で笑いながら小杉さんの肩を掴んでそう言った。
どんな方法であれフレイムバサラに勝利したのだ。
(これで合格でなければ協会を訴えてやる!)
私はそう誓った。
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「はぁ・・・ はぁ・・・」
娘の繰り出した超強力な攻撃を何とか燃やし尽くした私は大量の汗を掻き、呼吸も荒くなっていた。
それほどに神経を削って必要最小限の被害で、必要な成果を出さなければならなかったのだ。
私の力がもっと弱ければここまでの苦労はなかったのだろうが、そうは言っていられない。
私には娘を家族を守る義務がある。
そんなヒーローとしてではなく一人の父親としてこの場に立っていたことが後から考えれば私の敗因だったのだろう。
炎で巨大な砲弾を燃え散らすと辺りは私の炎の影響を受けてかかなり熱くなっていた。
遠くの方で娘が心配そうに私の方を見ていた。
自分で撃っておきながら私の心配をしている娘を見て「甘い」ではなく「優しい子だな」と思ってしまったのは親馬鹿だからだろうか。
だが、そんな娘の表情が私を見つけると同時に明るくなるがその表情は長くは続かなかった。
次の瞬間には暗く沈んだものとなった。
おそらく、先程の攻撃が彼女達の最強の持ち札だったのだろう。
その切り札ともいうべき作戦の失敗は敗北を意味する。
アレだけ強力な切り札を持っていれば普通はヒーロー試験は合格だろう。
だが、娘を合格させるわけにはいかない。
なにせ弟を狙っているのはあのスーパーマンの息子であるスーパーマンジュニアなのだ。
彼の戦闘能力は噂でしか聞かないが、それでも相手にするには危険すぎる。
(弟を狙っているのが彼でさえなければな・・・)
父として娘が同じ職業を目指してくれたことは誇らしくありうれしくもある。
そして、娘がこれほどの力を手にしていたことは予想外であった。
(これほどの力があるのなら弟の護衛としてではなく普通のヒーローとして・・・)
そんなことを思ってしまうのは私が娘に甘いからだろう。
しかし、約束は約束だ。
それに彼女の能力はコスプレという非常に曖昧な力だ。
変身ヒーローの様に一瞬で変身して戦うことができるわけではない。
一度着替えなければならないのだ。
そんな中途半端な戦士をヒーローにはやはりできないだろう。
(心を鬼にしなければな・・・)
私はゆっくりと娘の下に歩き出す。
これから娘に人生の挫折を教えなければならないからだろうか私の顔は強張っていた。
だが、これからきつい現実を突きつける身としてはこの堅苦しい表情の方がいいのかもしれない。
「晶・・・・」
娘との距離が近づき声をかけると娘が顔を上げた。
その瞳には涙が溢れていた。
それを見て私は言葉を失ってしまう。
(心を鬼に・・・)
そう自分に言い聞かせて言葉を発するために口を開こうとしたその時だった。
「パパ・・・」
娘がそう言って抱きついてきた。
あの娘が私のことを『パパ』と呼び抱きついて来たのだ。
こんなことは今まで一度もなかった。
人生で初の体験だった。
子供の頃、なんとか呼ばせようとしてできなかった言葉。
変身時に声帯も弄っているためかいつもの娘の声ではなかったが、それでも娘が私を『パパ』とよんだのだ。
こんなにうれしいことはない。
「おお! 娘よ!!」
そう叫んで抱きついてきた娘を優しく包み込むようにして抱き寄せる。
そして、娘の口元がニコリと笑うかのように口角が上がった。
その瞬間だった。
落雷に撃たれるかの如く激しい衝撃が私を襲った。
電撃を受けて視界は白黒と反転した。
訳が判らず、何が起こったのか理解できなかった。
やがて落雷の様な衝撃は消え去り意識が遠のいていくのがわかった。
遠のいていく意識の中で私が聞いた最後の言葉は「ごめんね。パパ・・・」という寂しそうな娘の声だった。
次に目を覚ますと小杉が残念そうに顔を伏せながら私に結果を教えてくれた。
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ロボットアームを弾丸に超電磁砲を放った私は少しだけ後悔した。
いくらフレイムバサラである父が相手とはいえやり過ぎた感が否めないからだ。
私は炎が上がった辺りを見渡して父を探した。
そして、意外なほどあっさりと父は見つかった。
それがうれしくなかったかといえば嘘である。
正直、五体満足で立っている父の姿は私が憧れたヒーローそのものでとてもかっこよかった。
だが、そんな父の姿を見て私は絶望した。
この日のために作戦を立て血の滲むような努力を重ねてきたつもりだったが、それでも届かなかったのだ。
最終的に父を追い詰めるところまで言っていたはずだが、結局のところ父は一歩たりとも動いてはいない。
私のヒーローへの道を反対する父は役員を味方につけている。
きっと私のヒーローへの道は断たれるだろう。
こうなると再現率を上げるために高速道路を錬金術で作り出したのは間違いだったかもしれない。
ここが地形変更する前の何もない場所だったならば私の全力を役員に見せてその威力から『実力は十分だ』という評価がもらえたかもしれない。
(いまさら言っても仕方ないか・・・)
私は顔を伏せて地面を見つめながら反省点を洗い出し、今までの修行の日々を思い返しながらそれが全て無駄に合なるのかとため息をついた。
修行で一番きつかったのは徳兄さんとの一対一での戦闘だろう。
お互いにコスプレをして能力の底上げをしていたが、基本スペックで負けていたからだろうか。
第一回の想定訓練以外は負け続きだ。
第一回の戦いも嘘とハッタリで勝ったものなので純粋な勝利ではない。
だがら、一度だけでも勝利が欲しかった。
勝ちたかった。
元軍人の徳兄さんがコスプレした戦闘能力はヒーローに並ぶほどの実力があるだろうというのが上伊集院さんの下した評価だった。
そんな徳兄さんに勝つことは私の目標となった。
だが、最後まで私は勝つことができなかった。
なぜ勝てないのか・・・
その答えを徳兄さんはこう語った。
「お前には狡猾さがない。」
「勝利を確信するのが早すぎる。だから、付け込まれる。」
「勝利とは結果であり過程ではない。」
「卑怯な手段を使うことは悪ではない。勝利こそが正義であり敗北は悪なのだ。」
「守りたいモノを守るための嘘は時に真実よりも価値がある。」
徳兄さんはそう言っていたが『ヒーローとして戦う以上は正々堂々と戦い卑怯な手段は使わない。それがヒーローというもの』じゃないだろうか。
だから私はそう言って兄の言葉を否定した。
そんな私を兄は鼻で笑った。
「人の部屋のものを勝手に漁り、非合法な方法で違法薬物を生産している工場に潜入しようとしたお前が今更それを言うのか・・・」
兄の意見はもっともだったが、あの時は私も手段を選んでいられなかったのだ。
「ならお前は人を助けられなかった理由を『私は正義の味方だから』とでもいうつもりか?」
兄の言葉の意味を私は理解できなかった。
何を言っている?
正義の味方だから人を助けられない?
どういう意味だ?
「疲れているからか? それとも理解したくないからか?分からないならば説明してやろう。 卑怯な手段。狡猾は方法を取れば勝てる相手に正々堂々と挑んだとしよう。 しかし、相手は狡猾で卑怯な手段を使用してお前を負かしたとしよう。 そうなった場合お前は何と言ってお前が守ろうとした人々に謝罪するつもりだ? 『仕方がない』『相手が卑怯な手段を』などと言い訳をするつもりか? お前が敗北すればその人達は死ぬかもしれないのに? 一生残る傷をおっているかもしれないのにそんな言葉で納得するとでも?」
そう語る徳兄さんは私をまるでゴミでも見る様な目つきで見下してきた。
その瞳に私は恐怖で動けなくなった事を思い出す。
「勘違いするなよ。 晶。 ヒーローが、お前が戦うのは『誰かのため』であって自分の為でも誇りをかけた騎士道精神に則ったものでもない。 『顔も知らぬ誰かの生活を守るため』なのだ。 その戦いに敗北は許されず、失敗などあってはならない。 故にヒーローは卑怯で狡猾でなければならない。 5人で1人の怪人を相手にする戦隊ヒーローの様な貪欲なまでの勝利への執念がお前には足りないのだ。 今日の訓練は以上だ。」
兄はそう言って私の元を去って行った。
そんな兄の姿と言葉が私の心に重くのしかかった。
(ああ、そうだ・・・ 勝たないと・・・ でないと・・・)
私の大切なものを守れない。
せっかく手に入れた仲間達がいなくなってしまう。
これはそういう戦いなのだから・・・
そう思うと自然と涙が溢れて出ていた。
「晶・・・」
いつの間にか父が私のすぐそばにまで歩いて来ていた。
顔を上げると父は私の顔を見て心配そうにしながら何か言いたそうに口元を歪めていた。
(まだ、勝負がついたわけじゃないのに父は所定の場所から動いた。勝利を確信したから・・・?)
『卑怯で狡猾であれ』
兄のそんな言葉が頭をよぎった。
ヒーローとしてそんな言葉を信条にするのはどうかと思うが、私には今はそんなことはどうでもよかった。
「パパ・・・」
私はそう言って父に抱きついた。
電撃を放っても父の炎で燃やされることは分かっていたから接近しなければならなかったのだ。
私が抱きつき胸に顔を埋めると父はうれしそうな声を上げて私を優しく抱いてくれた。
暖かくて優しい居心地のいい場所だった。
(ごめんなさい・・・)
そう心の中で謝った後。
(でも、これは勝負の最中だからね・・・♪)
きっとこの時の私の笑顔は悪いことを思いついた悪女の様に悪い顔をしていたことだろう。
私はできるだけ父に密着した状態で残っているすべての電撃を解放した。
父は何が起こったのか分からないまま気を失いぐったりとして体を私に預けることになった。
その後、役員さんや仲間達が駆けつけて来て私の勝利は皆が目にすることとなった。
まぁどうやって倒したかは秘密だけどね・・・
上伊集院さんが悪い笑顔を浮かべて役員のおじさんの肩を掴んでいたからこれで合格は間違いないだろう。
後日、合格通知が届きました。
卑怯ですね~。
ええ、手段を選ばすに勝利だけを見つめてますよ。
これも徳の影響かな~・・・
これで実家編は終了で次回は実家から帰るお話の予定です。
レベルリンクスよりこっちの方が今は筆が進むので交互に更新してるけど次もこっちを更新するかもしれません。




