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想定訓練 上

智坂徳が特殊メイクをして間にすでにコスプレを完了した戦闘要員一同はある会議室に集められていた。




「これより、我々は智坂氏を入れての実戦訓練に入るわけだがその中で二つほど決め事を作ろうと思う。」




上伊集院はそう言ってホワイトボードを手に持っている棒で叩いた。


棒はアニメでよく教師が持っている感じのものだ。




「智坂氏の戦闘能力は先日の地下帝国の戦闘で見てもらった通りかなりのものだ。ハッキリ言って我々の中の誰よりも強いだろう。そんな智坂氏がコスプレをしてさらに能力を跳ね上げればその実力は智坂氏をつけ狙う犯罪者に匹敵する可能性がある。故に今回の訓練では全員が智坂氏と当たる様にやってもらう。無論、倒せるようなら倒してもらって構わない。ただ、戦う順番だが以前の我々の戦闘能力の測定時に一番弱い者達から順番に戦い最終的に本命の晶君が戦うものとする。これは、智坂氏が襲われた時に晶君がそばにいなかった場合、もしくは晶君が変身コスプレしていなかった場合の時間稼ぎの練習だ。各自は無理に勝とうとせずに、最善を尽くして時間稼ぎに徹してもらって構わん。三十分。それを凌げば晶君が到着すると想定して戦う。以上だ。」




「「「「「了解!」」」」」




全員が敬礼の姿勢を取って返事を返す。


その瞳には「やってやるぞ」という熱い炎が宿っていた。




「というわけで、晶君。悪いが君は最初の三十分の間に着替えてくれないか?」




「え?!」




晶はせっかくしたコスプレを着替えろという指示に驚きの声を上げる。




「君の力では美坂御琴の能力を操り切れないだろう。それに、これは君の移動と着替え、変身の練習でもある。悪いが開始と同時に着替えに戻ってくれ。」




「分かりました。」




上伊集院の提案をしぶしぶだが素直に受ける晶であった。




と、そんな話し合いが開始前にあったために開始と同時に工場内にいた者達は全員が智坂に対して臨戦態勢に入るのだった。




(よし・・・ やるか・・・)




智坂も久々の実戦を想定した訓練に燃えていた。


今までのどう頑張っても勝てそうにない状況と違いこの戦いではほとんど戦力的な差はない。


そこに彼は燃えていた。




まず、最初に戦うのは工場内に残った。


二つのグループ。


七色さん率いるチーム夜典の守護騎士。


そして、フェイトシリーズから4人が残っていた。




「まずはチームフェイトが戦うから我らは様子見だ。いいな。」




七色さんはシグムントさんになりきって指示を出す。




「おう」




「ええ」




「承知した」




他のヴェーダ、マルシャ、ザフィは短く了承の意を返す。




「先手は貰うぞ。」




4人いるフェイトシリーズからの一番手は魔槍≪ゲイボルグ≫を持つ青の槍兵≪ランサー≫だ


ランサーは赤い槍を構えて攻撃の姿勢を取る。


智坂も礼言になりきって戦闘態勢に入った。




「ふん!」




まず動いたのはランサーだった。


その健脚で一気に間合いを詰めると強力な突きを放つ。


ランサーになりきっている中の人もこのコスプレのために槍の修行を積んでいるため動きがスムーズで素早いキレのある一撃が礼言を襲う。




「ふん」




鼻息を一つ鳴らして礼言は放たれた突きを避けるとランサーの目の前まで一瞬で移動した。




「フン!」 (寸勁!)




ドゴン!




礼言はランサーの腹部に掌底を一発いれる。




「カハ・・・」




寸勁により体重の乗った平手打ちは腹部から衝撃が内臓に伝わり吐き気を催すほどの思い一撃をランサーに与えた。


ランサーはふらつきながら後退して地面に座り込む。


それを後ろで見ていた赤き弓兵≪アーチャー≫とそのマスターである近坂憐このさかれん、白き剣聖≪セイバー≫が襲い掛かる。


アーチャーが左、セイバーが右、正面から憐の魔法弾が襲い来る中で礼言は笑っていた。


勝つことのできない不利な状況にとても不幸な状況に思わず口角が上がってしまったのだ。








「智坂さんの再現率が上昇しました。」




戦況をモニタールームで確認していた佐部さんが特殊メイク時に仕込んでおいた身体情報を読み取るセンサーから情報を読み取る。




「礼言は自他関係なく不幸を喜ぶ性質があるからな。その為だろう。」




上伊集院がモニターを見つめながら戦いの様子を見守る。


実はこの時のために昨日、急遽監視カメラの数を増やしたのだ。








セイバーは剣を振り上げ、アーチャーは二本の剣を振り上げる。




ドドドドド




それよりも憐の早く魔法弾が着弾し礼言の視界を魔力の爆散が煙幕が覆う。


再現率が低い憐にはこれが精いっぱいの援護射撃だった。




「ふん!」




「はぁ!!」




視界がふさがれた瞬間を狙って左右から二人が剣を振り下ろした。


視界を塞いだ左右からの同時攻撃、おまけに相手は丸腰だ。


この一撃で決めるために二人は気迫を込めた渾身の一撃を振り下ろした。




ガキン




しかし、振り下ろされた剣は礼言の黒剣によって阻まれる。


礼言が魔力を使って刀身を生成していた。


再現率が低いので刀身の長さは軍用のナイフほどだが、逆にその長さが智坂にとっては使いやすい物だった。


2人は攻撃を防がれたことで咄嗟に距離を取るために同時にバックステップ。


それを支援するために憐が魔法弾を放った。


しかし、それよりも早くアーチャーの下に礼言が駆ける。




(く・・・ 早い!)




礼言の突撃にアーチャーは右手の剣を振り上げて迎撃する。




「アーチャー!」




セイバーがアーチャーに襲い掛かった礼言に向かい後退し着地した直後にその足で前進を開始する。




礼言は振り上げられた右手に持つ剣を交わすと右手でアーチャーの右手首を掴んで引っ張った。


アーチャーは礼言に引き寄せられると同時に半身の状態になりおまけに背後を礼言に取られる。




ドスン




礼言の左拳がアーチャーの背中に突き刺さった。




「カハ・・・!」




背後からの八極拳を殺人術に昇華した礼言の拳が突き刺さる。


おまけに拳は肺の間裏から打ち込まれたためか呼吸困難に陥った。


アーチャーはそのまま地面にゆっくりと倒れると瀕死の虫の様にピクピクと動きながら立ち上がれなくなった。




ドドドドド




「く! セイバー!」




憐の魔法弾の着弾でまたも視界を奪われる礼言。


その隙にセイバーと共に立て直しを図ろうと憐が声をかけるとほぼ同時に




ドサリ




と、セイバーが倒れた。


セイバーの鎧には黒剣が突き刺さっていた。


黒剣は非殺傷設定であるために普通のナイフの様に突き刺さるが人体に当たると剣の部分が魔力に再変換される仕組みになっている。


ただ、変換時にスタンガンを浴びた様な衝撃が発生する。


その衝撃でセイバーは気を失った。


礼言に襲われたアーチャーに視線を集中していた憐にはなぜセイバーに黒剣が刺さっているのか理解できない。




(なぜ・・・)




それは地に倒れ伏したセイバー自身にも理解できなかった。


彼女はアーチャーの援護に向かう為に瞬時に前進を進めた。


だが、それ判断がいけなかった。


セイバーの視界は最初に憐が放った魔法弾による煙幕が晴れていなかったのだ。


そんな状況での考えなしの選択が彼女の敗因となった。


礼言が煙幕を逆に利用して黒剣を投擲したのだ。


元々が投擲武器である黒剣は一直線にセイバーに向かう。


そして、煙幕に隠れていた黒剣はセイバーの認識の外から胸元に突き刺さったのだ。


セイバーとしての再現率が高ければ、あるいはアーチャーの下に行かずに後退後にその場に留まっていれば防げた一撃であったが残念ながら実戦経験の少ないただのコスプレイヤーにその判断はできなかった。




「もう、なんだってのよ!」




憐は圧倒的に不利な状況に怒鳴りながらも体勢を立て直す為に一旦、逃げることを選択した。


そんな憐を逃がすまいと礼言が駆ける。




「紫電一閃!」




そんな憐を守る様に頭上からシグムントが剣を振り下ろす。


礼言はすぐにサイドステップで攻撃を避けるとシグムントを無視して憐を追う。




「いくぞ!アイゼン!」




「Jawohl (ヤヴォール) (了解)」




ヴェーダはすぐに憐と礼言の間に入ってハンマーを構え、礼言が射程距離に入ると振り下ろした。


礼言はバックステップと同時に黒剣を投げつける。


ハンマーを振っている最中のヴェーダには回避も防御もできない。




「ふん!」




そこにザフィの腕が伸びてきて攻撃を防ぐ。


盾の守護獣であるザフィには再現率は低くとも防御魔法が使用できるためそれを使って攻撃を弾いた。


バックステップで攻撃を避けた礼言を真横からシグムントの剣が襲い掛かる。


剣は炎を纏っているためにその熱量で目視で確認することなく礼言はシグムントの接近に気づいた。


シグムントは下から剣を振り上げる。


炎を纏った一撃が礼言を襲う。




ドス!




しかし、礼言は回転しながらあっさりと剣を避けながらシグムントに接近すると腰を落とし裏拳を右脇に叩きこんだ。


ザフィもヴェーダもシグムントを縦にする形で逃げられたので助けることができない。




「ぐぅ・・・あ!!」




想定外の事態と想像を絶する力にシグムントは顔を歪めながらザフィ達のいる方向にはじけ飛ぶ。




ガシイ!




ザフィはシグムントをしっかりとキャッチして転倒を防ぎながら一緒に後退して衝撃を逃がす。


その隙にヴェーダが礼言の背後を取る様に地を蹴り駆け抜けていく。


そして、そんなヴェーダを見ながら礼言は服の下に仕込んである黒剣を取りだし刃を形成する。




「ぶち抜け!アイゼン!」




ヴェーダは振り上げていたハンマーを振り下ろして叫ぶ。


この一撃で倒すという気迫のこもった攻撃を見つめながら礼言はあっさりと攻撃を回避する。




(くそ!)




ドガン!




ハンマーは無情にも空を切り地面を叩き床を破壊する。




(もう一度!)




ハンマーを振り上げようと顔をあげたヴェーダだが、そこには拳を今にも振り下ろそうとする礼言の姿があった。


ハンマー対拳の速さ比べ。


ただ、勝負はこの時点で決まっていた。


なぜならば、片や準備万端の礼言、片やこれから態勢を整えるヴェーダ。


ザフィもシグムントも動けない今、ヴェーダが頼れるのは




「マルシャ!」




最後の四人目の守護騎士だけだった。


もっとも、彼女はすでにヴェーダの攻撃回避時についでで投げた黒剣で戦闘不能になっているがヴェーダの位置からではそれは見えなかった。




ゴス




思い一撃がヴェーダを襲う。


咄嗟に防御の姿勢を取るヴェーダだったが女の子の細腕で受け止められるほど礼言の拳は軽くはなかった。


ヴェーダの腕の防御を弾き拳は胸に突き刺さる。


拳の衝撃でヴェーダは胸に感じる強い衝撃と痛みに意識を刈り取られた。


そして、後方にはじけ飛び地面を転がりまわると壁にぶつかってその動きを止めた。




「マルシャ! 回復だ!」




ザフィは咄嗟にマルシャの方を向いて回復してもらえるように頼むが、視線の先ではすでにマルシャは胸を剣に刺し貫かれていた。




「くそ!」




何とかシグムントを地面に寝かせるとザフィは臨戦態勢に入った。


シグムントは先程の裏拳でもはや戦える状態ではなかった。




(防御の魔法で身を覆いつつ接近戦で戦えば・・・!)




再現率が低いために防御魔法以外が使えないザフィに遠距離からの攻撃という選択肢はなかった。


全身を魔法の防御で多い突進すると中の人が肉体を鍛えるために始めたボクシングスタイルで攻撃を開始する。




(連打で押して反撃させなければ!!)




突進の勢いと共に放たれる攻撃を礼言はあっさりと交わすがそこから始まった連打に手を出せない。




(どうやらヒーローになるために相当練習しているな)




付け焼刃ではない隙のない連続攻撃に礼言は防戦一方になった。




(いける!このまま押せば、いずれは!!)




時間が経てば連続攻撃をしているザフィの方が体力的に不利であるが、防御一辺倒の礼言は連戦によって疲れている。


おまけに、時間が経てば回避や防御の方法や癖を見つけられる可能性がある。


試合経験こそないがスパーリングで相手の動きを観察したことのあるザフィの中の人はその経験を活かしてすぐに礼言の回避行動のパターンを見つけ出した。




(ここだ!!)




回避行動を読み取り回避に合わせた不可避の一撃。


それは礼言の顔面に向かって一直線に伸びて行った。




ゴス!




重い一撃が入る音が響いた。


ザフィの一撃が礼言にヒットしたのだ。




(ば・・・ 馬鹿な・・・)




ザフィの必殺と呼べる一撃を躱すのではなく、それよりも早く顔を突き出して額を激突させたのだ。


そう礼言はザフィの拳に対して頭突きを食らわせたのだ。


礼言は攻撃を加える場所である拳には防御魔法がかかっていないことを見抜きワザと隙を突かせたのだ。




「ぐわぁあああ!!」




拳に頭突きを受けたザフィの拳は当然の如く骨折した。


重い痛みと無残に散った自信と心に魔法が解除される。




ドス!




そこを見計らったように礼言が一撃でザフィを沈める。




工場内の敵を殲滅後、周囲を見渡す礼言。




「逃げられたか・・・」




そこにはもう憐の姿はなかった。


敵のいなくなった礼言は工場を後にした。

ううん。篤是さん視点のお話に変更してます。

晶がどう戦ったかは分かりにくかったでしょうがご想像にお任せします。

基本的に光の能力を幻影と作ることと姿を消すことの二種類で使用して後は智坂鬼軍曹直伝の格闘術で倒したイメージでいてくれれば問題ありません。

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