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対談

改定後と直しておりますが、ほとんど改定しておりません。

地下帝国の強襲から一夜明けて、俺は秋穂姉さんが作った朝食を口に運びながら朝刊を読む。

朝刊には昨日の地下帝国の襲撃による被害が載っていた。

俺が昨日、襲撃をかけた工場は運送用のトラックの爆破と工場の一部とそこで製造していた薬品の全損と書かれていた。

逆に言うとそれしか書いてなかった。

違法ドラッグ製造の証拠は見事に全焼してしまった。


(俺が火をつけなければ・・・・)


俺は激しく自分の行いを後悔しながら頭を抱える。

事前に地下帝国の襲撃があるとわかっていればこんなことにはならなかった。

そう思いながらも昨日の襲撃は以外過ぎた。

地下帝国の連中が何を考えているのかについては、実は悪の組織にもわかっていない。


狙いはおそらく、俺達と同じ世界征服のはずなのだが、彼らは悪の組織と手を組まない上にこちらのルールを無視してどこからでも侵略を開始する。

なので、悪の組織としても自分たちの征服拠点を守るために戦わなければならない事がある。

そう、俺たち悪の組織は正義の味方だけでなく、地下帝国や地下帝国と同じように共闘を望まないその他の組織と戦ったりもしているのだ。


(おかげでこっちはいろんなモノを監視しないといけないんだよな・・・)


俺の所属している悪の組織やその他の共闘を望む悪の組織は、正義の味方に共闘を拒む組織、悪の組織以外の犯罪グループや犯罪者を監視しないといけない。

そうでないと今回のような事態になる。


(元々一人では情報の収集はあまりできない訳だけど・・・)


昨夜の内に支部の方にはメールで連絡してあるのである程度の事態は向こうも把握しているだろう。

だが、完全に俺の落ち度による作戦の失敗は否めない。


(晶たちと共闘しなければ・・・)


などともしもの可能性を考えてしまうのは俺の心が弱いからだろう。


「はい。どうぞ。」


秋穂姉さんが俺の前にお茶を出してくれる。


「ありがとう。」


俺はお礼を言ってから一口お茶を飲んで新聞を置くと食事に集中した。

食事が終わると俺は食器を台所の水につけて、部屋を出ようとした。

そこで後ろから秋穂姉さんに声をかけられた。


「大広間にお義父さんと克さん達がいるからお茶持って行ってくれる?」


そう言ってかなり多いコップに2L用のペットボトルに冷えたお茶が入った物を2本渡された。

さすがに一人で持ちきれる量ではなかったので秋穂姉さんと二人で大広間へと向う。


ススー


大広間に着くと秋穂姉さんが廊下で正座してからゆっくりと障子を開ける。


「お茶をお持ちしました。」


そう言って一礼して中に入る。

俺も同じように中に入ろうとして広間の中にいる人をしてギョッとした。

広間の中には上座に父と兄の克が、下座の方には晶と上伊集院を先頭にその後ろに昨日会った上伊集院の仲間たちが正座してならんでいる。


(いったいなにがあったんだ・・・・?)


俺は探偵業(嘘)がバレたのかと思いドキッとした。

それとも探偵業が嘘であることがバレたのかと思い必死に頭を動かす。

しかし、俺にはこれと言ってバレる要素がないことをすぐに思いついて胸をなでおろす。

上伊集院達がバラした可能性はあるがこの話し合いが俺抜きで始まっていることからきっと俺には直接関係ない事だろう。


しかし、父や兄が放つ重苦しい雰囲気には息が詰まるものがある。


「はいどうぞ。」


俺は秋穂姉さんと共に客人である晶の仲間達にお茶を配った。

皆、俺を見て少しだけ顔を綻ばせるがその顔には緊張が張り付いている。

俺を見て少し顔を綻ばせたのは全く知らない人達がいる場所で唯一の知り合いを見つけた時のような安堵感からだろう。

だが、その程度ではこの場の張りつめた空気はそう簡単には拭えそうにはない。


(まぁ、この状況なら大体の想像はつくな・・・)


俺は溜息を一つつきながらこの状況を推測する。

おそらくは昨日の一件で晶のヒーロー活動がバレたのだろう。

その件で親である兄の克と祖父である俺の父に呼びつけられたのだろう。

父と兄の顔を見る限りでは晶のヒーロー活動は喜ばしいものではない。


「お前たちも一緒にいなさい。」


お茶を配り終った俺と秋穂姉さんは父の言葉により部屋の隅に座して話の行く末を見守る事になった。

座布団を用意して座ると自分たち用のお茶を入れる。

秋穂姉さんはこうなることを読んでいたのか。

コップは俺と秋穂姉さんの分もあった。


「オホン。」


お茶を入れ終わるのを確認してから、父が咳払いを一つする。

それを合図に克兄さんが話を切り出した。


「晶、なぜ家族に相談もなしにヒーローになろうと思った? ヒーローの活動は危険だ。 下手をすると命にかかわる。 未成年のお前が家族に相談もなしにヒーローになろうだなんておかしな話じゃないか。上伊集院さんも組織のトップならそんなことは重々承知ですよね?」


兄の言葉にぐうの音も出ないのか晶もその仲間達も顔を伏せて兄と眼を合わせよとしない。

ただ、上伊集院だけは兄のことをまっすぐに見つめていた。


「おっしゃっていることは理解しています。ですが、現段階ではその必要はないと我々は判断しています。」


「ほう・・・」


上伊集院の言葉に兄は興味深そうに目を細める。

隣にいる父や秋穂姉さんは口を挿もうとしない。

そんな兄や父たちを余所に上伊集院は言葉を続ける。


「まず第一に我々は公的な機関でも正式な企業でもありません。 なので、協会の認可も得ておりません。 所謂、お遊びや趣味でヒーローを『自称』している存在です。 我々は『自分たちでヒーローを作りたい』と思いから組織を作り、晶さんは『ヒーローになりたい』という思いからヒーローになろうとしていました。そんな晶さんと私達はお互いに惹かれあい今は協力している関係です。 それは、歌手になりたいと思う少女の下に彼女を支えたいと思いバンドを結成してプロデビューを果たそうとする若者の行動の延長線上でしかありません。 晶さんのご両親がそれに反対しているならともかくそうでないのならば挑戦だけしてみるのは別に悪い事ではないでしょう? ダメなら夢をあきらめる決心がつきますし、別の目標を持つためのいい薬にもなります。」


上伊集院はあくまで冷静に兄に自分の想いと状況を説明する。


「私たち家族が晶がヒーローになることに関して、反対しているのか。いないのか。ということが、あなたにわかるのですか?」


兄は上伊集院の意見に真っ向から勝負を挑むかのようにそう口にした。


「晶さんからのお話と我々の調査結果ではそうであると判断しました。」


上伊集院のこの言葉に兄と晶は驚いたような顔を向ける。

その表情を見る限りでは晶はそんな話をしていなさそうだ。

これは調査結果があるのかどうかは怪しい所だ。


「ほう・・・ 娘の反応を見るに、そんな話はしていなさそうですが?」


兄は晶を一瞥してから上伊集院に目を向けて睨みつける。


「いいえ、確かに彼女は言いました。家族は『私の能力ではヒーローになるには力不足だろう』と言っていたと。ねぇ?晶さん?」


上伊集院は晶の方に顔を向けながらそう促す。


「え、ああ・・・ そんな話ならしましたね。確か能力発現当時ぐらいに・・・」


その言葉に俺は「おい」と突っ込みたくなった。

晶が能力を発言したのは小学校の3年生でだぞ。

そんな昔の話を持ち出すのかよ・・・


しかもその話は、家族が冗談で『晶の能力じゃ克さんみたいにヒーローにはなれないわね』と秋穂姉さんが冗談めかして言ってそれを家族皆が「そうだね」と頷いたレベルの話だぞ。

まさか、そんな昔の内容を持ち出すとは露にも思っていなかったのか兄たちは上伊集院の言葉に面食らっていた。


「さらに、我々は晶君がヒーローになることを望んでいることの証拠とその当時の父である克さんの反応も調査しています。」


上伊集院はそう言って胸の谷間から資料を取り出した。

まるで四次元空間を谷間の間に作ったかの如く資料が飛び出してくる光景には驚きを隠せない。

そういえば、彼女の今日の衣装は胸の谷間が大胆に開いている。

そういう能力を持たせた衣装なのだろうか。

まぁ、胸は偽物だがね。


「こちらをご覧ください。」


上伊集院がそう言って取り出した資料を見て父や兄たちは「え・・・」と驚きの声を漏らした。

晶は「なんでこんなの持ってるんですか?!」と声を荒げる。

俺も内容が気になって資料を覗き込むとそこには・・・


『 将来の夢

                       3年生 ともさか あきら

 私の将来の夢はお父さんみたいなカッコイイヒーローになることです。(以降は割愛する)』


と言った内容の作文だった。

晶が小3の頃に書いた将来の夢についての作文か・・・

確かに親に見せるけども・・・

確かに当時は、この作文読んで兄さんは大喜びしてたけども・・・

まさか、これが親への報告文として機能するのか?


「晶さん。静かにしなさい。今は智坂さん達に私達の調査結果の報告中です。これを読んで智坂さんは非常に喜んでいたという情報を入手しています。近所の方々に自慢なさったという情報も我々は掴んでおります。」


上伊集院は声を荒げた晶に制止をかけた後で、自身の調査結果を堂々と告げる。

そんな上伊集院とは裏腹に兄と晶は顔を真っ赤にして顔を伏せてしまう。

当時のことを思い出して恥ずかしくなっているのだろう。


「この調査結果から智坂家の家族は晶さんのヒーローへの道に賛成しているが、能力的に不可能だと判断していると私達は判断しました。 なので、晶さんがヒーローになれる能力を身に付ければ問題ないという見解にいたりそのための修行や知識の提供。 その他、活動への尽力を今後もしていく方針です。 無論、正式にヒーローとして協会の許可が下りそうな時は御両親に報告をして許可を取るつもりです。」


上伊集院はそう言って言いたいことを言いつくしたのか話を切った。

はたから見ている俺にも超絶的な理論展開だが、確かに筋は通っているような気がした。

話術ってすごいなと実感する。


「オ、オホン。 では、昨日の一件はどういうことかね?ヒーローでもない君達が地下帝国の兵士と戦っていたそうじゃないか。 それは危険なことだ。 そんなことを娘に勝手にさせて! 怪我でもしたらどうするのかね?!」


恥ずかしさから立ち直った兄が話の方向性を変えて反撃に出る。

だが、上伊集院はそんなことを全く気にした様子もなく飄々と答える。


「地下帝国の兵士と戦ったのはあくまでも自衛のためです。 彼らが広範囲に渡って襲撃を仕掛けていたのは戦っていたフレイムバサラ氏なら御存じでしょう? 『危険だから戦うな』では自衛もせずにただ暴力に屈していろとでもおっしゃるおつもりですか? ヒーローが来るまでは力のない民衆は何もするな。と・・・ つまりは、そういうことでしょうか? それが正しい行動だというのは父親としてですか? それとも、正義の味方であるフレイムバサラとしてですか?」


「く・・・」


上伊集院の言葉に兄は言葉を失ったのか歯を食いしばって両手に拳を作って強く握る。

話題の変換という『逃げ』に走った時点で兄の負けは決まっていたのだ。

そんな兄に対して上伊集院は追撃をかける様に隣にいた晶に話しかける。


「晶さんはヒーローになりたいんですよね?」


「え、あ・・・ はい。」


突然話を振られたので晶は一瞬戸惑ったがはっきりとした返事を返す。


「今回の戦いで危険な目にも遭いましたがそれでも意見は変わりませんか?」


上伊集院は少しだけ不安げに晶を見つめて問いかける。

晶はそんな上伊集院の瞳をまっすぐに見つめて一度だけ深呼吸をしてから返事を返した。


「はい。皆となら私もヒーローになれるんじゃないかと今回の戦いで実感しました。」


その力強い言葉が決定打となったのか。

兄は肩をガックリと落としてまるで魂の抜けた人形の様に動かなくなった。

父として同じ職種を選んだ者として止める訳にはいかないとでも思っているのか。

はたまた、ただの親馬鹿なのかは分からないが、強引に晶の意志を無視してヒーローへの道を阻止する気はないらしい。


「それで、今後はどうするのですか?」


話が一段落した所で、今まで口を開かなかった父が口を開いた。


「どう、といいますと?」


上伊集院が父の質問の意図を察しきれずに聞き返す。


「私は孫の進路に口を出す気はない。」


「な、父さん!」


父のこの一言に兄が声を荒げるが、父は左手で兄を制して黙らせると言葉を続ける。

兄は不満そうな顔をするが、とりあえずは父の話が終わるのを待つことにしたようだった。


「ヒーローの様な活動をすると言ってもこの街では怪人や悪の組織はほとんど出て来ない。 昨日の様なケースは稀だ。 そうなると別の場所に行くか。 ヒーローになるための学校に行くかの二択だ。 だが、私達は娘の未来への選択肢は多く持ちたいと思っている。 娘の能力がヒーローに向いていないというのは我々の共通認識だからこのことについては御理解いただけるはずだ。 だから、私の希望も簿理解いただけますね?」


父のこの言葉に上伊集院は頷きだけで返事を返す。

元よりヒーローになる学園では個人の能力での修行や能力の向上を図る場所なので上伊集院達の様なサポートがいることを前提にヒーローなる晶では入学しても卒業はできないだろう。


ちなみに、俺がヒーロー育成支援学校について詳しいのは悪の組織の一員としての予備知識だからだ。

上伊集院が頷き返したのを見て父は話の続きを喋り始めた。


「うむ。 ワシは孫の晶には普通に学校に通って貰いながらならヒーローの活動を許可しても構わんと思っておる。 無論、学業が疎かになるようなら反対させてもらうつもりじゃ。」


ここまで言って晶達と兄はお互いに頷く。

晶達はヒーローを賛同への道が兄はヒーローを反対する道がお互いに開けたのだ。

お互いに思惑はあってもここまでの話に悪い点はない。


「しかし、正式に協会に認められていないお主らが勝手に他のエリアで活動するのはどうかとワシは思う。 この町ならば克の管轄内じゃから好きにしてもらっても克が何とかできるからいいんじゃが・・・ 知っての通りこの町はほとんど平和なんじゃよ。 克の力が強すぎて悪の組織がこの町にはやってこんからの。」


そこまで言って晶や上伊集院達、そして兄と俺、義姉さんも父の言いたいことが分かった。

つまり、ヒーローになるために活動するなら活躍の場が必要だがその場を用意できないのでなるのはあきらめた方がいいと言っているのだ。

父の言う通りこの町にいても活躍の場はもうないだろう。


かと言って正式に協会に認められていない晶達が他の町でヒーローとして活動すれば問題が生じる。

それについてどうするのかと父は言っているのだ。

どうにもできないのならば頑張るだけ無駄だから諦めろと・・・

父の言っていることは正しい。


どんなに練習しても試合のできない部活動にいても意味はない。


高校生という人生の内でたった3年間しかない時間を大切にして欲しいという父の想いを感じた。

この言葉を聞いて晶達は一気に追い詰められた。


『反対はしない。賛成してもいい。でも、結果が出せそうもない所に娘を預けるわけにはいかない』


直訳するとこうなる父の言葉に晶達は言葉を失った様だった。


(まぁ、そうなるよね・・・)


俺は溜息を一つついて父の優しい説得に自分も納得してしまった。

現状をしっかりと把握して、相手の意見を組んで、その上で反論できない様に完璧に否定する。

これが年の功という奴だろうか。


さすがの上伊集院もこの返しについての反論材料は持っていなかったらしく下唇を噛んでいる。

勝負は決まった様だった。

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