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透明化

晶の行動が行き過ぎているという意見があったので晶側の視点を入れて見ました。

これで納得いただければ幸いです。

~晶視点の作品です~


その日の晩。

私はある人に電話をかけた。

家族に衣装のことがバレたためだ。


プルルル プルルル ガチャリ


「もしもし、私だ。」


「あ、夜遅くにすみません。」


私はその日あった出来事をについて話してこれからのことを相談した。

私としてはあんな目立つ衣装ではなく『普段着的な衣装にしてくれれば問題なかったのに』と愚痴りたかったが『創作意欲がわかない』と断じられるとわかっているので何も言わなかった。


「ふむ。ならば、我々もそろそろ最終フェイズに入る必要があるな。まだ経験値不足だろうがそこは一気に戦闘も経験するしかあるまい。多少むちゃな要求をするだろうが大丈夫だね?」


「はい。」


私は力強く頷きながら返事を返す。

私の夢であるヒーローへの道が開かれるのだ。

多少の困難は望むところだ。


「うむ。期待しているぞ。それから、こちらの準備が整うまではこれまで通りに訓練を続けてくれ。それから、訓練時は光の能力で姿を隠してくれ。衣服はともかく能力が見つかると問い詰められることは間違いない。服は彼氏の趣味とか言っとけば誤魔化せるだろう。」


「な・・・!」


(服装を彼氏の趣味ってことになんて出来るわけないじゃない!)


父親が親馬鹿で困っているのに『彼氏がいる』なんて話になったらいったいどうなるか。

家の全焼で済むだろうか・・・

いや、それよりも徳兄さんにそう誤解されるのはまずい。

すでにそういう誤解をされているかもしれないが、これに関しては早めに解かなければならない。

私の未来のためにも・・・!


「ははは。 恥ずかしがることはないだろう。君もそういうのがいてもおかしな年頃じゃないしな。では、またな。」


カチャリ


私が動揺している間にあの人はそう言って電話を切ってしまった。


「はぁ、全く・・・」


そう思いながら私は先程のあの人の言葉を思い出す。

光の能力で姿を消すか・・・

悪くないかもしれない。

特に、私が気になっているあのことについて調べるには・・・





翌日、私は徳兄さんが出かけたのを確認するとどこに出かけたのかを追尾する。

私には尾行なんてできないと思っていたけれど昨日の電話で話した光の能力による姿を隠す方法はうまくいっている。

問題なのは恥ずかしいこの衣装を着ないといけないことだがまぁそれには目を瞑ろう。

それもこれも徳兄さんの為だ。


私は徳兄さんを尾行する。

その理由は一つ。

徳兄さんが何か危ないことにかかわっているからだ。


昨日、徳兄さんが熱中症で倒れて家に運ばれた時に上半身の服を脱がせて濡れタオルで体を冷やしている時に見てしまった体中にある傷やアザのあと

戦場に行っていたので銃痕まであった。

だが、それはまだいい。

生きて帰ってきてくれたのだから問題ない。


問題なのはどう見ても真新しくできた傷やアザの痕だ。

あれは普通の会社員をしていてできるものじゃない。

母さんや父さんは「何か事情があるのよ」とか「俺の弟で正義感が強いから仕方ないさ」と言って傷やアザについては「自分から言い出すまで聞かないように」と言っていたけど私はそんなことはできない。


普通に問いただしてもきっと徳兄さんは答えてはくれないだろう。

あの人は優しくて正義感の強い人だから私達に心配をかけまいとする。


(昔からそうだ・・・)


友達が上級生にいじめられているのを見て1人で助けに行ってボコボコになって帰って来た起きの言い訳は「転んだんだ」と言っていた。

私が川に大事にしていた帽子を風で飛ばされて落としてしまった時も川に飛び込んで取ってくれた。

まぁ、帽子を取ったのはいいけど自力で戻って来れなくて近くを通った大人たちに助けられていたけれど・・・

その時も「帽子を取ろうして飛び込んだ」とは言わなかった。

きっと私に気を使ってくれたのだろう。


今は大人になり、傭兵としての逞しい肉体を手にしている。

そんな兄があんなにまで傷ついているのだ。

きっと何かあるに違いないと思い、私は兄の後をつける。


本当は昨日届いた段ボールの中身を見れると幸いなのだけれど、兄は「新開発のライダースーツだったよ。今度仕事で使う予定だったものが届いたみたい」と言ってまた嘘をついた。

私は知っている。

兄は嘘をついていると申し訳なさそうな顔で笑うのだ。

昔から見てきたあの顔を昨日もしていた。


本当に根の真面目な嘘をつけない人だ。

そんなところが素敵ではあるのだけれど、私は心配せずにはいられない。

そうこうしている内に徳兄さんが誰かと話をしている。

何かの情報交換かも知れないので私は近づいて話を盗み聞きする。


そして、わかったことは徳兄さんが『公衆電話を探していること』と『公衆電話のある新しくできた駅』に向かうことだった。

私はチャンスだと思った。

いつ帰ってくるかもわからない行動の読めない状況では部屋を漁れないが、行き場所がわかっていればどれくらいの時間がかかるかは予測できる。

電話をどのくらいするのかは定かではないがそれはどうでもいい。

今から家に帰れば兄の部屋を漁り何をしているのかを調べて元に戻す時間は十分にある。


(よし!)


意を決して私は自宅に戻ると兄の部屋を捜索した。

いや、正確にはしようとした。


「こら晶!」


自宅に帰り透明化を解いて早速、兄部屋を漁ろうと廊下を走っている所を母さんに見つかってお説教を受けてしまった。

この時に「徳兄さんの為なの!お願い見逃して!」と言ったのが駄目だった。

母さんは私が兄のことについて調べようとしていたことを察してしまいひどく怒られた。


こうして、午後に徳兄さんが出かけた後も母さんの監視は続いた。

私は深く反省してリビングで勉強することにした。

夏休みの宿題を片付けに入ったのだ。

私は必死に夏休みの宿題をやった。

母さんがこちらを見ていると宿題について質問する。


分からなければ自室から教科書やノートを取りに行って勉強に励んだ。

そんな私を見て母さんは「頑張ってね」と言ってジュースとお菓子を出してくれた。

そのタイミングで私は「ここにいると邪魔だから部屋に戻るね。いちいち、部屋に教科書とか問題集とか取りに行くの面倒だし」と言って自室に戻った。

母さんも「そうね。私じゃあんまり力に慣れないしね」と言って家事に戻っていった。


母さんは数学は得意なのだが暗記モノはもうほとんど覚えていないし物理ももうあまり覚えていないみたいなので聞いても分からなかった。

だが、私はそれを知っている。

知っていて行動を起こしたのだ。


これで母さんの監視は外れ、私は自室で1人で勉強ができる。

私の部屋はこの広い家の隅の方にあり人はほとんど来ない。

これから日が傾くので母さんは徳兄さんの為に手の込んだ料理を作るだろう。

そうなれば、徳兄さんが返ってくるまでは誰も来ないだろう。

徳兄さんがいつ帰ってくるの家は分からないが徳兄さんの部屋の物の位置や物が隠せる場所は把握している。

なにせ、兄さんがいなくなった後の定期的な部屋の掃除は私がしていたのだ。

すぐ隣の兄の部屋まで辿り着いてしまえば問題はない。


そして、私は兄の部屋に入って室内を漁った。

急いでいたので多少荒らしてしまったがまぁ、仕方がないだろう。

だが、おかげでお目当ての物はすぐに手に入った。


資料に目を通すと私の予想通り、普通の企業ではやらないことが書いてあった。

資料に書いてあったのは『違法薬物』『製造元の調査』そして『戦闘のためのスーツ』や最後には『援軍』という文字の羅列があった。

兄は何か危険な仕事をしている。

私の予想は現実味を持った事実となった。


就職先を見つけられなかった元傭兵の兄は企業スパイ、もしくは民間警備会社や大きな探偵企業にでも入社したのだろう。

そう考えればあの傷やアザも納得がいく。


(よし、証拠があるんだ。部屋を片付けてからこれを持ち出して兄さんを問い詰めれば・・・)


ドサ・・・


資料を手に持っていると何かが崩れ落ちる音がした。

恐る恐るその方向を見やると障子の隙間から兄がへたり込んでいるのが見えた。


「徳兄さん・・・・?」


私は驚きを隠すこともできず。

ただ、そう呟いていた。

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