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悪の組織の活動

晶のことについて書いてなかったので(改定後)としておりますが改定はいたしておりません。

俺は久寿玉に教えて貰った通りの道を進んで駅に着き。

目的の公衆電話で電話をかける。

公衆電話は人通りの少ない所にある上に使用者などいないので話を聞かれる心配もない。

病院にある公衆電話の様に人通りの多い周りを囲う物のないものだったらどうしようかと心配していたが、どうやら杞憂だったらしい。


カチカチ プルルル プルルル カチャ


「はい。こちら。子供の希望、第八支局です。ご用件はなんでしょうか?」


電話の向こうから受付のお姉さんの声が聞こえる。

この人たちはただの受付なので悪の組織のことは知らない。


「すみません。私は子供の希望、第八支局、悪の組織課の智坂徳と申します。支局長につないでもらえますか?」


俺は自分の配属されている課を言って支局長=支部長を呼び出してもらう。

悪の組織課とは悪の組織、匿名希望☆第八支部のメンバーが在籍する課だ。

悪の組織課のメンバーの主な仕事はアニメや特撮の悪の組織のフィギュアやおもちゃなどの開発だ。

戦闘員の中でヒーローの監視などの仕事についていない人がここで仕事をしている。


「少々お待ちください。」


テルテルリ~ン テルテルリ~ン


受付の人の返事の後に妙な音が聞こえてくる。

これが会社で使っている電話の保留音なのだろう。


ガチャ


「はい。こちら第八支局の支局長だ。用件は分かっている。任務のことだな?」


待つこと数十秒で支部長が出てくれる。

おまけに、俺の用件もすでに理解してくれていた。


「はい。この任務なのですが、この土地でやって大丈夫なのですか?」


俺に渡された資料には悪の組織に関する事項が全て抜けていたので分かっているのは『この町のどこかの工場で違法なドラッグが作られていること』と『そのドラッグが他のエリアで売られている』ということだ。


「うむ。まずはそのことからだが・・・ 回線を替えよう。この会社の回線は盗聴されないが、君の使っている公衆電話では傍受される恐れがある。悪いが人目のつかない場所に移動してかけ直してくれ。」


「わかりました。」


カチャリ


俺は一旦電話を切ってから携帯でかけ直す。

そもそも、人通りのいない閉鎖空間にいるのだからわざわざ公衆電話を使う必要もなかったのだ。


ピポパ プルルル プルルル ガチャ


「うむ。こちら支部長だ。さて、話の続きだが君は自身の兄であるフレイムバサラの協会での立場を知っているかね?」


支部長は重苦しい真剣な声で俺に尋ねてくる。


「ええっと、特殊災害能力保有者と指定されて強制的にヒーローを引退させられたとしか知りません。」


俺は支部長の質問に少し怯えながら答える。

支部長の声に圧倒されたのだ。


「そうか。ならもっと正確な情報を言おう。まず、君のお兄さんはヒーローを引退してはいない。」


「・・・?」


俺はよくわからず首を捻る。

克兄さんは現在はヒーローを引退して火力発電所で働いている。

そんな兄がヒーローをやめていないというのはどういうことだろうか?


「協会が認定した特殊災害能力保有者っていうのはヒーロー活動の自粛を謳っているけどね。実際は能力が危険すぎる者を戦わせずに戦力としては確保しておくための建前なんだよ。実際、君の兄は協会から広大な活動範囲を言い渡されている。」


支部長はそう言ってため息をついた。

活動範囲とはヒーローが活動を行う範囲だ。

ヒーローは基本的にこの範囲内でのみ活動を行う。

悪の組織でいう縄張りみたいなものだ。

これを決めていないと都市部のみにヒーローが集中して地方から悪の組織に侵略されてしまう。


そのため、協会はいくつかのエリアにヒーローを分散して配置している。

実力的に未熟な者やヒーロー以外の仕事がある者(小学生のリリカルハニーや高校生のブレザーハーツなど)のためにそれらが活動する以外の時間帯で活動するヒーローが存在するため複数名でこの活動範囲を守る者達もいる。


「だが、君の兄は違う。フレイムバサラは・・・ いや、Sクラスのヒーローは基本的に一人で活動範囲を守っている。なぜなら、彼らは単独で悪の組織を壊滅させることができるからだ。おまけに、圧倒的に強いから悪の組織の人海戦術での時間差攻撃も通用しない。そのため、彼に限らずSランクのヒーローが活動する範囲内には悪の組織は存在しない。危険だからだ。」


この危険というのは悪の組織として活動することがではない。

俺の兄に全力を出させると街そのものが危険なのだ。

その昔、フレイムバサラの能力でできた炎の発する熱量だけで海に直径2km以上の巨大な穴を作り上げた。

悪の組織としてはその力を街中で使わせるわけにはいかないのだ。

なぜかって?


考えても見てほしい。

例えフレイムバサラを倒して街を手に入れてもだ。

その街がフレイムバサラとの戦いで焼け野原になり何もない荒野が広がっていたとして、それは勝利だろうか?

そして、これはヒーロー側であるフレイムバサラや協会側も同じだ。

守るべき町と下手をすればそこに住む人々を犠牲にしてまで得た勝利に意味はあるのか?


答えは『NO』だ。


征服するもの。

あるいは、守るべきもの。

このどちらかが残っていないと勝利とは呼べない。

それを無視する活動はただの破壊と殺戮だ。


そんなわけで悪の組織も正義の味方も街に被害を出すことは極力避けたい。

そんなわけで、正義の味方側は危険な能力や力を持つヒーローに活動範囲を与えるが活動を自粛させ、悪の組織はそう言ったヒーロー達のいる場所での活動をしない。


「そんなわけで、君のお兄さんの活動範囲内には悪の組織はいないよ。だから、そこでの活動は問題ない。」


支部長は長い説明を終えて喉が渇いたのか。

話し終ると電話の向こう側で水か何かを飲んだ。


「なるほど・・・ でも、そんなことしないといけないんですか?」


支部長の説明で現在のこの街の事情と兄の立場などは分かったが、なぜ俺に違法薬物の生成所の捜査やその破壊を命じるのかがわからない。

そのことを疑問に思っての質問なのだが、支部長は「はぁ」と溜息を一つついてから話し出した。


「私もこんなことはしたくないんだけどね。悪の組織の存在しない街ではそういった違法薬物の生成や販売などをする組織が生まれるのだよ。そして、そういった組織は潰さなければならない。私たちの住む街を守るためにね。」


支部長の声からは遺憾の意が感じ取れる。


「その違法薬物を扱う組織は悪の組織とは違うのですか?」


俺はなぜそんなに残念そうなのかわからず、支部長に問う。


「全く違う。」


支部長からは強く念を押す様な声で答えが返ってくる。


「違法薬物を売買する組織の目的はお金を儲けることだ。しかし、我々悪の組織の目的は国家の制服による現状の改善だ。国を良くするには今ある物を壊して新しく作るのが一番早い。国の中からゆっくりと変えていくには時間が合かかり、我々も世代を交代することになる。そうなれば長い時間の中で目的や思想に歪みが生じる。そうしないためには今すぐに国を変えるための行動を起こさなければならない。それを行うための悪の組織なのだよ。」


支部長はそう熱く語る。

確かに、現状の我が国の国家の体制では改革に時間がかかる上にそこに行くまでに余計な邪魔が入る。

それを変えるために悪の組織はテロ行為に近い形で街や人を襲っている。

それは決して褒められたものではないだろう。

だが、ただ職欲しさに戦闘員となった俺より目的を持って悪事を働く支部長は真っ当に思えた。


「違法薬物の蔓延は街を守る警察が抑えることはできるが、そのアジトを突き止めて破壊するには時間がかかる。証拠やら手続きやらが必要になるからな。」


「ヒーローが何とかしてくれるのでは?」


「ヒーローは戦闘にならないと動かない。彼らの持つ力は軍隊と同じく戦時にしか役立たない。その点、我々悪の組織は違法な調査や強行手段でどこにでも攻撃をかけられる。わかるね?」


支部長の言葉にはどこか重みの様なモノが存在した。

警察でも正義の味方でもない。

悪の組織だからこそできる仕事。

それは違法な犯罪者たちの違法な手段による処罰を意味する。


俺は思わず息をのんで言葉を失う。

人を殺すのは別に初めてじゃない。

俺は戦場を経験してこの手で何人もの人を殺している。


銃撃による射殺だけでなく、ナイフによる刺殺、接近格闘で相手の首の骨を折ったり紐状の物で絞殺したりと経験豊富なお兄さんだ。

童貞ボーイじゃない。

だから、今回だって普通にできるはずだ。


心の中ではそう思いつつ、本当にできるか不安になる。

なにせ、これから行うのは・・・

いや、行うべき行為は互いに殺し合う為の戦争ではなく、一方的に相手を殺す虐殺でなければならないのだ。

殺されるからその前に殺さなければ・・・

もう思って戦ってきた戦場と、今回すべき内容はきっと違うものだろう。

そんな場所に俺が行って何ができるのか。

不安で心が押しつぶされそうになった。


「まぁ怪しい施設の情報は渡した資料に書いてあるし、援軍が必要なら部隊を編成するからまた連絡してくれたまえ。では、健闘を祈る。」


ガチャリ


支部長はそう言って電話を切った。

俺は返事も何も返せないまま、ただ茫然とその場に留まることしかできなかった。


数分後。


俺はなんとか正気を取り戻して資料にあった違法薬物を製造する工場を回ることにした。


「すみません。バイク下さい。」


俺はATMでお金を下ろして近くのバイク屋さんで普通二輪のバイクを買った。

免許は高校時代に夏休みに合宿に行ってすでに取得済みだ。

お金は今まで稼いでもほとんど使わなかったし、以前入院した時に協会の人にもらったお金もあるので問題ない。


せっかく戦闘服がライダースーツなのだ。

バイクに乗らない手はないだろう。

俺は購入したバイクを家に運んでもらってからライダースーツやヘルメットをかぶり、出かける。


工場は製薬会社の工場や何かの研究所などの十数ある工場が対象だ。

まずは、場所の確認を行うために工場へと向かい確認をする。

違法なことをしている工場なので山奥の奥まった場所にあるか。

外から死角となるところになる場所に工場があるのかと思ったが、まぁ工場で作るものは大抵社外秘なので何を作っているかはわからない。


(そもそも輸入している可能性もあるからここで作っていない可能性も・・・)


そこまで考えてから頭を横に振る。

この付近の工場で作られている可能性があるからこそ俺に調査の命令が出たのだ。

そういった希望的観測はやめよう。


俺は気を取り直して工場の周りを回って様子を窺うのだった。


(やはりというか、なんというか・・・)


初日一日目の成果はゼロだった。

分かったことはここら辺の工場で作られた製品は一旦、ある外部倉庫に運ばれてから各所に運ばれるということだ。

多分、組織もこの外部倉庫までは辿り着いたがそこから先の生成工場の場所までは特定できなかったのだろう。

余程ガードが固いのだろうか。


(とりあえず、日も傾いて来たしか得るか。)


俺は工場を後にして家に帰ることにした。






「今さっきの奴は以前からうちを嗅ぎ回っているところのスパイか?」


工場の一室で窓の外の智坂の行動を見ながらひとりの男が呟いた。


「いえ、以前まで嗅ぎまわっていた連中との関連はまだ。ですが、可能性は高いかと・・・」


サングラスをかけた坊主頭の男がそう答えを返す。


「そうか。なら、前の奴ら同様に素性を調べてお引き取り願え。」


男はそう言って窓のカーテンを閉める。


「わかりました。」


坊主頭の男はそう言ってドアから外に出ていくのだった。






俺が実家に着きバイクを適当な場所に止めると中に入る。


「あら、そのバイクどうしたの?」


庭で洗濯物をしていた秋穂姉さんにそう聞かれた。


「当分、ここで生活することになるから買ったんだよ。街中までは遠いからね。」


「そう。」


俺の言葉に秋穂姉さんは気にした風もなく頷いた。

秋穂姉さんもこの家に嫁いできた後でだが、車の免許を取っていたので「不便だから仕方がない」と思っているのだろう。

実際に、新しく出来た最寄駅までですらかなりの距離を歩かなければならないのだ。

俺がバイクを欲しても特に不思議はない。

車だったら置くところに困るから相談が必要かもしれないが、バイクならば自転車を置く場所に置けば問題はない。


そんなわけで、俺はバイクを駐輪スペースに置いて家の中に入る。


「ふぅ、疲れた。」


8月のうだるような暑さのせいだろうか。

汗で服がべたついている。

俺は風呂場に行ってシャワーを浴びる。


アニメやドラマではこういう時に姪の晶に出くわしてラッキースケベ的なイベントが起こるが、残念ながらお風呂に入っているかどうかは脱衣所の前の扉が閉まっているかどうかで確認するのがこの家のルールなのでそんなことにはならない。


風呂から上がり、タオルで体を拭いてから下着とジャージを着て自室に戻る。


(あれ? 部屋の電気がついてる?)


俺は昼間出かけたのでつけた覚えのない電気がついていることが気になり部屋の扉をそっと開けて中の様子を見る。

するとそこには、無言で俺の持って帰ってきた極秘資料を見ている晶の姿があった。


(な、なぜ晶が俺の部屋で俺の荷物を勝手にあさっているんだ?!)


極秘資料には悪の組織のことは書いてはいないが、それでも極秘任務として違法なドラッグの内容が書いてある。

表向きはただのおもちゃを作る会社の会社員でしかない俺がそんなものを持っているのはどう考えてもおかしい。

だからちゃんと資料は荷物の中にしまった筈だった。

いや、入っていた。俺は他の人が明けない様に封筒にわざわざテープを張って封をしたのだ。

しかし、無残にも資料の入っていた封筒は破かれていた。


(なぜ晶がこんなことを?! まさか、俺の正体に気づいているのか?!)


俺はその場に固まって動くことができない。


(実はみんな気づいてないフリをして家族みんな俺が悪の組織に勤めていることを知っていて、晶はその証拠を探しているとか?! だとすれば、ここが俺の墓場に?! いかん。すぐにでも支部長に連絡して組織のみんなを逃がさないと! はっ! そういえば、兄貴はどこだ?! まさかもう、支部に向かったのか?!)


思考は勝手にどんどんと悪い方に進み俺はその場にへたり込む。


(どうすればいいんだ?! わからない・・・ 俺にはもう何が何だか・・・)


俺は両手をついて地面を見つめながらこれからどうすればいいのかもうわからない状態になっていた。


「徳兄さん・・・・?」


俺が地面に両手をついてへたり込んだために部屋の中に居る晶がこちらに気づいて小さく呻くような声を上げる。

顔をあげると、扉の隙間から俺を見て驚きの表情を浮かべる晶の顔が見えた。

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