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極秘任務

 実家に帰った俺は姪がグレた驚きの事実を知って兄と儀姉にお説教をした。




(遅くなったけど二人にはきつくお説教をしたし、これで次からはあんなことにはならないだろう。)




 俺は一応、姪の晶にこのことを報告しようと晶の部屋に向かう。


 晶の部屋は俺が実家に住んでいた時と同じ場所にあるそうだ。


 俺が出て行ってから部屋の位置を変えていないらしい。




 晶の部屋の位置は以前俺が使っていた部屋の真横なのだが、この部屋は兄貴たち夫婦の部屋や俺の父母の部屋と距離を取ったところにある。


 その上、リビングやダイニングといった場所から遠く広い敷地の端の方にある離れの様な場所だ。


 なぜ、こんな遠い場所なのか?


 歳の離れた兄夫婦や両親と俺が距離を取りたがったからだ。




 その理由は簡単だ。


 俺だけが『超能力を使えない』からだ。


 実はうちは家系は代々超能力が使えるヒーローを生業なりわいとする一族の分家にあたる。




 そんなわけで、うちの家族は基本的に超能力が使える。


 そして、結婚した相手もなぜか超能力が使える人なのだ。


 秋穂義姉さんや俺の母も超能力が使える。




 まぁ使えるだけで戦闘に向いている訳ではないのでヒーローなのは兄だけだが、それでも力の大小はあれど超能力を使えるのだ。


 俺以外は・・・




 そんなわけで、俺は家族から距離を置くために共用のリビングやお風呂などの日常生活でよく使う場所が集中する玄関近くの中央の場所から一番遠い部屋を使っていた。


 晶は子供の頃は俺を兄のように慕っていたのでその時に「俺の部屋の近くがいい」と駄々をこねて俺の部屋の真横に自室を持ったのだが、俺が家から出て行ってもまだ使っているらしい。


 この家はでかいけど人はあまりいないのでもっと近い場所にすればいいと思うのだが・・・




 そんなことを思いながら晶の部屋の前を横切って自室に向かう。


 晶に兄たちへのお説教の報告の前に自室に荷物を置くためだ。


 なんでも、部屋はそのままにしているらしい。




 まぁ部屋は腐るほどある上にほとんど使われていないからな。


 よく使う中央に近い部屋ならともかくこんな使いにくい部屋を片付けるのは面倒だったのだろう。


 晶の部屋の前を通ると中から明るい曲と女の子の声が聞こえる。




 克兄さんが言っていたアニメを見ているという話は本当だったようだ。


 部屋から漏れ出ている音楽と声から日曜の朝にやっている『光の戦士 プリティシャイン σ(シグマ)』というアニメだと分かった。




 俺はよく知らないがアニメックスで放送していた劇場版を一度だけ見たことがある。


 歴代のプリティシャイン達がたった一人の悪の怪人をボコボコにする内容は見ていて痛々しかった。


 俺も悪の組織に属している以上はあんな結末を迎える日が来るかもしれない。




 ちなみに、プリティシャインは光の精霊から力を渡された少女たちが闇の怪人を倒していく話なのだが、彼女たちの攻撃方法はすべて肉弾戦による戦闘だ。


 初代プリティシャインはボクシング。


 二代目のα(アルファ)はキックボクシング。


 三代目のβ(ベータ)はムエタイだったな。


 現在のσ(シグマ)はプロレスの技を使う。




 光の精霊の力はどこで使うのだろうか・・・


 なかなか謎の多い作品だ。


 えっなんでそんなに詳しいのかって?


 劇場版を見てなんで魔法を使わないのか気になってググったからさ!




 ちなみに、光の妖精は登場するが何もしないという存在そのものが謎の生き物だ。




 俺は自室に荷物を置いて部屋を出て晶の部屋の前に立つ。




 コンコン。




 障子しょうじの角の木の部分を叩いてノックする。


 すると中から「はい、どうぞ」という返事と共にアニメの音が消える。


 俺は障子をゆっくりとあけて中に入る。


 アニメは一時停止状態で止まっていた。




「克兄さんから聞いていたけど、最近アニメや漫画を見ているんだって?」




 俺はまずは軽くテレビ画面に映ったアニメを見ながら話を始める。




「ああ、いやこれはその・・・」




 晶は何か困っているのか照れたように頬を赤く染めて俯いてしまう。




「恥ずかしがることないさ。俺も学生時代はアニメや漫画好きだったし、そのことは晶も知ってるだろう?」




 俺は恥ずかしがる晶を励まそうとそう告げると晶は俺を気まずそうに見上げる。




(ああ、昔はアニメや漫画を楽しんでいる俺を叱咤していたから気にしてるのか。)




 俺は晶の心情を悟って「気にすることないよ。」と声をかける。


 晶はこちらの意図を察したのか少しだけ微笑んだ。




「面白いか?」




「モノによる。面白いものは面白いし面白くない物は面白くない。」




 俺の質問に晶は辛辣に答える。


 どうやら今見ているプリティシャインσはお気に召さないようだ。




「私的にはプリティシャインはε(イプシロン)が面白かった。」




「へぇそうなんだ。」




 残念ながらそれがどんな奴かは覚えていない俺にはそう返すことしかできなかった。




「他にはどんなの見てるの?」




「そうだな。アニメだと『とある家系の奇妙な冒険』とか面白いね。漫画はもうすぐアニメになる『七大罪』が好きかな。」




 そして、俺と晶はアニメや漫画の話をして盛り上がった。


 それはまるで小学生時代に一緒に好きなアニメを見ていた子供時代の様に楽しい時間だった。




「それじゃ、俺はそろそろ部屋に戻るよ。」




 俺は1時間ほど晶と話をして部屋を出ることにした。




「どうかした?」




 晶はまだ話したりないのか、名残惜しそうに俺を見上げる。




「晶はすっかりアニメ好きになったなぁ~。」




 俺はそんな風に晶をからかうと彼女は頬を赤く染めて恥ずかしそうに顔を背ける。




「そろそろ、ご飯の時間だよ。」




 俺はそう言って晶の部屋にある時計を指さした。


 晶は俺の指の先にある時計を見て「あ・・・」と小さく呟いた。


 どうやら時間を忘れて俺との対話を楽しんでくれていたらしい。




「ああ、そうそう。兄さんたちにはお説教しといたから今度からはあんなことにならないと思うよ。」




 俺は去り際に晶にそう言った。


 晶は最初はどういう意味か分からなかったようだが、途中で気づいたのか。


「よくアレを注意できますね。」と苦笑いを浮かべる。




(まぁ確かにあの行動を注意するには少し勇気がいるよね・・・)




 俺は今になって「よく注意できたな」と思いながら部屋を後にする。


 晶もテレビの電源を落として俺の後に続いて2人でダイニングへと向かう。




「そういえば、なんでアニメ見るようになったの?」




 俺はなんとなく気になって晶にそう尋ねた。


 昔は俺が「面白いから」と勧めても絶対に見なかったのになぜ最近になってみるようになったか気になったからだ。




「ええっと、友達がそう言うの好きで・・・かな?」




 晶は答えにくそうにそう言って話そうとはしなかった。


 なんだかものすごく訳有りのように見えるがこれ以上は聞かない方がいいのかもしれない。


 晶も年頃の女の子だ。


 きっと友達付き合いか、もしくはそう言うのが好きな彼氏ができたのかもしれない。




(克兄さんは晶を溺愛しているからなぁ~・・・)




 もし「晶に彼氏ができただなんて話になったら大変なことになりそうだな」と思いつつ俺は天井を見上げて晶の成長を喜びながら少し寂しくなった。




「いや、徳兄さんの思ってるのとは違うよ?」




 晶は俺の思考を読んだのかそう指摘する。




(ふ・・・ 隠さなくてもいいのに恥ずかしがり屋さんめ!)




 俺は鼻で笑いながら晶もまだまだ子供だなと微笑む。




(うわ~・・・ 兄さん完全に勘違いしてるよ・・・)




 そんな徳の後姿を見て晶は頭を掻くのだった。








「ごめんな。晶。」




 昼食時に克兄さんは晶に今までのことを謝った。


 秋穂姉さんも克兄さんに続いて謝る。




「いいよ。もう慣れたし。」




 晶はもうすっかり慣れた感じで適当に返事を返す。


 晶の中ではもうあきらめていて慣れ親しんだ日常になっていたのだろう。


 本当に気にしていない風な感じだ。




(これならわざわざお説教する必要なかったか? いや、俺がここで生活するからどっちみち必要か。)




 ともかく、これで兄夫婦の家庭内でのモラルに反するテロ行為はもう起こらないだろう。


 俺はそうめんを食べながらこれからのことについて考える。




(とりあえず、今まで通りの生活をする方向で行こうと思うけど。一応、渡された資料を読んでからもう一度考えようかな。)




 もしかすると会社と協会の話し合いの結果以外に持ち帰ってできる仕事が入っているかもしれない。




「ああ、そうだ。徳君。さっき荷物が届いていたわよ。」




 食事の途中に秋穂姉さんが今思い出したかのようにそんなことを言い出した。




「荷物? どこから?」




「会社から徳君宛みたいだったわ。荷物は玄関に置いてるからね。」




 秋穂姉さんはそう言って玄関の方を指さした。


 俺はそれにつられて玄関の方を向くが扉が閉まっているので荷物は見えない。




「あとで見ておくよ。」




 そう言って俺は食事に戻ったのだった。








 食事を終えて玄関に向かい荷物を持って自室に戻る。


 届いた荷物は正方形の大きめの段ボール箱だった。




「ねぇ、それなに?」




 晶も食事を終えたようでダイニングから廊下に出て来てそう尋ねる。




「わからん。開けて見ないことにはな。」




 届いた荷物の内容は『社外秘の資料』となっていた。


 社外秘の資料を普通に配達でお届けしていいのだろうか?


 もし俺の家族が見て内容を知ったら引退したフレイムバサラが出動することになるぞ?


 引退しても能力が衰えていない俺の兄の能力はSランクだ。


 襲撃を受ければ第八支部は壊滅。




 下手をすると匿名希望☆自体が消滅するだろう。


 俺の家族にヒーローがいるから信用されているのだろうか?


 それにしても不用心な・・・




「中身が気になるね・・・」




 晶は目を輝かせて俺を見つめて「早く開けよう」と眼で訴えてくる。




「お前には見せない。」




「ええ! ケチだなぁ~。」




 晶は拗ねて様にそう言って口を尖らせる。




「社外秘なんだから見せられるわけないだろう。」




 俺はあきれたようにそう言って晶を宥める。




「社外秘の資料が郵便で届くわけないじゃん。本当はアニメのボックスじゃないの?」




 晶は俺に疑いの眼差しを浮かべている。


 もしかして、最近の通販サイトでやってくれる中の品の内容がわからない様にしてくれる使用だと思っているのだろうか。




(それなら『パソコン部品』として届くのでは・・・)




 実際にやったことがないので本当かどうか知らないが「そういうのがある」とは聞いたことがある。


 まぁ「宅配テロ」という言葉を最近聞くのでもしかしたら今はやっていないのかもしれないが・・・




 ともかく、俺は自室に戻って箱を開ける。


 無論、晶は部屋から追い出した。


 晶は追い出される時に「全年齢向けの奴じゃないの?」などといっていたがそもそもそんなのが会社から届くわけないだろう。


 さすがの宅配サービスも送り主の欄を変えることはできない。




 そんなわけで俺は自室で一人で箱を開ける。


 中にはフルフェイスのヘルメットとライダースーツが入っていた。




(なんだこれ?)




 俺はよくわからないがとりあえず中の服を取り出す。


 すると中からひらりと一枚のメモが出て来た。




『これを着て頑張れ。性能は戦闘服と同等になっている。』




 とだけ書かれていた。


 これだけでは内容が全く理解できなかった俺は支部長から渡された資料を開けることにした。




 資料①の内容を要約。


 智坂徳を襲撃した犯人は不明。


 智坂徳に個人的な恨みがあるのかも不明。


 ブレイブハートのメンバーを3人倒したことから犯人の戦闘能力はヒーローと互角と認定。


 犯人の捜索と確保は協会が行う。


 智坂徳は犯人の確保。もしくは、犯人の狙いが『智坂徳』で無いと断定できるまで身を隠すこととする。


 その間の会社の負担、智坂徳への給与は協会が保証する。


 追加事項として『智坂徳』の警護体制を整えられる状況になれば帰宅することも可能。




(うん。この資料はあんまり関係ないな・・・)




 資料②の内容を要約。


 極秘指令。


 身を隠す場所をフレイムバサラが住むF県F市にせよ。


 そこで現在、違法に製造されているドラッグ(通称『D』)の製造場所と製造している会社を調査せよ。


 交戦時には後で届ける特殊装備『ライダー型戦闘服』を使用せよ。




(これか・・・)




 まさかの事態に俺は驚きを隠せない。


 まさか、悪の組織の範囲エリアを超えて俺に活動せよとはいったいどういうことだろうか。


 下手をするとここを縄張りとする悪の組織と開戦することになる。




 それほどの危険があるのになぜ違法に製造されたドラッグの製造元を暴かなければならないのか?


 俺にはよくわからなかった。




(とりあえず、支部長に連絡して事情を聴こう。)




 そう思って携帯電話を手に取ってから俺はその手を止める。


 実家は木造の平屋だ。


 風通しがよく夏でも涼しい構造になっているこの家は壁はともかく扉は障子や襖ふすまで仕切られている。


 つまり、音がよく漏れる。




 こんなところで電話をすればその内容は筒抜けだろう。


 俺は資料をしまってから出かけることにした。




 場所は音漏れのしない閉鎖空間でかつ電話をしても怪しまれない場所。


 ビジネスホテルが最適、なんだが・・・


 残念ながら俺の実家は田舎にあるのでそんなものはない。




(公衆電話は・・・)




 残念ながら最近は数が減ってめっきり見なくなった。


 携帯の普及のせいだろう。


 まぁ便利になったから減るのは当然なのだろうがこういう時は非常に困る。


 公衆電話の周りにあるカバーは中の音をある程度防音してくれる。


 小声で話せば内容は外に漏れることはないだろう。




(ううむ・・・・ 困ったな・・・)




 俺は途方に暮れて歩いていると「おおい!智坂~!」と背後から俺を呼ぶ声が聞こえる。


 振り返るとそこには中学時代のクラスメイトがいた。




「久寿玉くすだま!ひさしぶりだなぁ~。」




「ああ、本当にな。」




 俺は久しぶりのクラスメイトとの再会に喜びを感じる。


 久寿玉は仕事の途中なのかスーツ姿に鞄を持っていた。


 こんな田舎で営業の仕事だろうか?




「どうしたんだ?こんなところで。」




 久寿玉は俺が困っていることを察したのかそう尋ねてくる。


 いや、平日の昼間から仕事をしていない俺を見て尋ねてきたのかもしれない。




「いや、実は公衆電話を探してるんでだけど見当たらないんだ。」




 俺は久寿玉に一応、聞いてみる。


 ここにいるということはこの辺のことを俺よりもよく知っているかもしれない。




「ああ、公衆電話な。駅に行けばあるぞ。」




 そう言って久寿玉は東の方を指さした。




(おかしいここから一番近い駅は北の方にあるはず・・・)




 俺は眉間に皺を寄せて昔のことを思い出す。




「そっちに駅なんてあったか?」




 やはり、思い出せないので俺は久寿玉に聞くことにした。




「ああ、お前は知らないのか。半年前に完成した新しい駅があるんだよ。駅の近くはでっかいデパートや観光用の施設や新しくできた住居が立ち並んでいるんだぜ。」




 久寿玉はそう言って俺にそこへの行き方と公衆電話の場所を教えてくれる。




「じゃ、俺は仕事の途中だから」




「おう、忙しい中ありがとう。」




 俺は久寿玉にお礼を言って別れるのだった。

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