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緊急会議

スーパーマンジュニアの襲撃から三日ほど経過したところで、悪の組織の匿名希望☆の第八支部では緊急の会議が開かれていた。


「第八支部の幹部諸君。忙しい中集まってくれてありがとう。実は今日は緊急の用件で集まってもらったんだ。まずは、こちらの話を聞いてほしい。」


第八支部の主な怪人や科学者のトップなど、第八支部を運営する幹部連中を一堂に集めて、第八支部支部長はそのような出だしから会議を始めた。


「まずは、この間のスーパーマンジュニアが我が支部の戦闘員を攻撃した件から話を始めよう。中山君。調査の結果を報告してくれ。」


「はい。まずはこれをお聞きください。」


支部長に促されて中山と呼ばれた女性秘書がモニター画面に何かの映像をを映し出す。

その映像は真っ暗で何も映ってはいないが、声だけがスピーカーから流れた。

すっぴーかーから流れてくる音声は、スーパーマンジュニアに智坂が襲われた時の話のやり取りだった。


実は密かに職員内に裏切り者がいないかをチェックするために、一定階級以下の職員には無断で盗聴器をつけていたのだ。

やがて、襲撃が終わったのか。

スピーカーからは何の音も聞こえなくなった。

その時点で女性秘書の中山は再生した盗聴記録を停止した。



「先程聞いてもらって分かってもらえたと思いますが、今回の件は被害者である智坂徳氏が悪の組織の一員だとばれたわけではなく、スーパーマンジュニアの完全なる暴走です。故に、智坂氏には落ち度はなく、寧ろこの戦闘前の盗聴記録から完全な好青年である調べはついています。」


「つまり、智坂君への治療のための偽装工作と病院を移した後の処置は正当なものだと?」


女性秘書の話が一旦区切られたところで、一人の中年怪人が意見を放つ。

その意見は、智坂氏への医療行為をする事は正当な理由があるのかというものだった。


「はい。彼は本部のマクシャールさんに気に入られていますし、実力や事務処理能力、隠密性は戦闘員としてどれも上位戦闘員並みです。ですので、今回の治療でその能力を回復してもらい。また、いち戦闘員として活躍してもらうことは我が組織の為になると判断します。」


女性秘書はあくまでも、智坂への治療は必要だと述べる。

その意見に、支部長、ネイル、バイパーの三人も肯定的に首を縦に振った。


「しかしだね。改ざんや隠ぺいには莫大なお金がかかるんだよ?それでも行うのかね?」


中年の怪人は智坂への治療をさせまいと話を持っていく。

これは彼が支部長と敵対する存在だからだ。

彼は実績と実力がないために支部長に慣れず、未だに怪人として第一線で活躍している。

そんな彼は実績と実力でその地位を手にした支部長に嫉妬していた。

彼は智坂のことをよくは知らないが、支部長への嫌がらせになるのならと智坂への医療行為を何とか中止に持っていきたいようだった。


「そんなことよりよ。なんでモグーラとバット、メタルコングの3人は来てないんだ?」


中年怪人と支部長の対立を余所に、ジャガーの怪人ジャガーはそう言って3人の怪人の席が空いていることを指摘する。


「それをいうなら地中工作部隊のドリル隊長も来てないぞ。」


地上制圧部隊のタンク隊長もそう言って同じ部隊長であるドリルがいないことを指摘する。


「実は今回の招集はそっちがメインなんだ。他にもいくつか案件があったが、先にそちらから説明してしまおう。」


支部長はそう言って女性秘書に視線を送る。

女性秘書は支部長の意図を理解してすぐにモニターに必要な映像を出した。

出された映像は街を縦に割った上から住宅、地面、水道管、下水管、地中が書かれたものだった。


「実は、我が第8支部のエリア内に地下帝国の陽動部隊がちょっかいを出しに来てな。」


「地下帝国の奴らが?!」


支部長の話に一番食付いたのは中年の怪人だった。

彼は地下帝国との派閥争いに参加した経験があったのだ。

ただ、特に因縁とかはなく。

悪の組織、匿名希望☆の勝利で終わっている。


だが、現在は組織も悪の組織同士の派閥エリアが増えて、怪人達もヒーローとの戦いで負傷や死亡している。

正直、今総力戦となれば勝てるかどうかは怪しい。

そんなわけで、会議室内には不穏な空気が流れる。


「落ち着いてくれ。今回はあくまでも相手の目的は陽動だ。そのため、相手は正規部隊ではなかった。ただ、奴らの目的が上下水道管の破壊という極めて迷惑な物だったので阻止するためにこの席に来ていない。バット、モグーラ、メタルコング達とその直属の部下達、さらに地中工作部隊を送り込みこれを阻止しようとしたのだ。」


「しようとしたということは失敗したのですか?」


ネイルは支部長の言葉を聞き真剣な顔つきで質問を投げかける。


「地下帝国の陽動部隊ははっきり言って全滅だろう。ただ、こちらが送り込んだ部隊も全滅した。」


支部長の言葉にその場にいる全員が息をのんだ。

地中での戦いが激化して全員、土に埋もれて死亡という悲しい結末を想像したのだ。


「だが、問題は彼らが誰の手によって全滅したかにある。」


支部長の言い方ではどうやら原因は他にある様だった。


「誰の? 戦いが激化して地中に埋もれたとかじゃないんですか?」


それを問い詰めるべく、ネイルはさらに支部長に質問を投げかける。

第8支部はこのようにして基本的に支部長にネイルが質問を投げかける形で進んでいく。


「実はな。先日の黄金と白銀の戦士が戦闘に乱入して地下帝国の部隊と我が第8支部の送り込んだ全部隊を壊滅させたのだ。」


「「「「な、なんだって~~!!」」」」


その言葉に、皆が一斉に悲鳴を上げる。

確かに、地下帝国は他の悪の組織のエリアを勝手に荒らす迷惑な連中だ。

だが、ヒーローの打倒という点では悪の組織と地下帝国は合意している。

例えいがみ合う戦の最中でもヒーローが出てくれば手を取り合うだろう。


地下帝国の陽動部隊がどの程度の戦力だったのかは知る由もないが、怪人3人に特殊部隊の派遣ということを鑑みて相当の戦力があったはずだ。

それほどの戦力があってヒーロー二人に壊滅させられるだなんて本来はありえない。


「それでな。つい先ほど、本社から連絡があった。内容は黄金と白銀の戦士が我々のエリアを去るまで悪の組織としての活動を休止せよというもの。そして、黄金と白銀の戦士の情報だ。」


支部長がそこまで言い終わると、女性秘書はモニターの画面を別のものに変更する。

変更された画面には黄金と白銀の戦士の画像が出ている。


「この二人はヒーロー界のPTA。モンスターゴールドとペアレントシルバーだ。その実力はヒーローランクS!」


「「「「「「・・・!」」」」」」


その言葉にその場にいる全員が息をのんだ。

ヒーローランクとは悪の組織が勝手につけたヒーローの強さのランク付けである。

基本はF~Aまでの6段階にそれぞれにプラス 無印 マイナスの判定が付くので6×3の18段階評価なのだが、Sはそれらを超える規格外に与えられる特別なランクだ。

単純に戦闘能力の高さだけでランク付けされた者から特殊な能力面でランク付けされた者までいるのでその評価は絶対ではないが、Sランク以上は文句なく危険だ。

Sは英語のスーパーのSを取っているのだが、これを冠するヒーローはヒーローを超えたヒーローという悪の組織からすると「こんなのどうやって倒すの?」的な存在である。


ちなみに、魔法少女リリカルハニーはランクD、ブレザーハートは5人揃ってランクDマイナス。

現役を退いたライダーマスクやスーパーマンはBプラスの判定である。


それらを超える圧倒的存在ランクSが今、この町にいる。

その事実に怪人達も各部隊の隊長たちも言葉を失い呆然となった。

その重たい空気を切り裂くように支部長が話を続けた。


「この事態に我が第8支部はこの二人が去るまでの間、無期限の活動停止を行う。ただ、ヒーローたちの監視やモンスターゴールドとペアレントシルバーの2人の監視は引き続き行う。余った人は他に仕事を振るのでそれを行てくれ。」


「「「「「・・・・あ、はい!」」」」」


その場にいる全員が反応が一瞬だけ遅れて返事を返した。

皆、動揺を顕わにして返事はしたが、事態は呑み込めていないものが大多数だった。


「悪いが、話を続けるぞ。呆けた状態のままでいい聞いてくれ。」


支部長はそう言って以降の話を続ける。

内容はスーパーマンジュニアを確保したのは本部の怪人達であったということ。

なんでも、スーパーマンジュニアを洗脳して悪の戦士に仕立て上げるのが目的だそうだ。

そして、それを事前に説明しなかったことへの謝罪などが行われた。

ただ、そんな謝罪よりもランクSヒーローの登場が彼らの心には重くのしかかっている。


そんなわけで、以降の話や智坂の手術の件については何の追及もなく話は終わったのだった。





廊下を歩いていると智坂さんの病室から見知らぬ女性が出て来た。

以前に病院に来ていた彼女さんとは別の女性だ。

年齢は30代ぐらいだろうか。

顔に目立つような皺などはないが、化粧が少し濃いので厚化粧なのか、歳を誤魔化す為の何かをしている。そんな女性だった。


私はいつもの癖で、つい観察者になってしまっていた。

女性は花瓶の水を替えるために出て来たようだった。

智坂さんの意識はまだ戻っていないらしいが、それでも花は病人への贈り物に選ばれることが多い。

飾っているだけで華やかになって薄暗い雰囲気の病室を華やかにしてくれるからだろうか。


女性は花瓶の水を替えるとまた部屋に戻って行った。

横開きの扉はほんの少しだけ開いていた。

私は扉の隙間からそっと部屋の中を覗く。


すると向こうからも誰かが扉の隙間からこちらを見ていたようで目が合ってしまう。


「ええっと・・・・」


私は思わずそう口走って言い訳を考えだす。

悪戯が事前に親に見つかった子供の様な気分だ。


「うふふふ。可愛らしい子ね。徳君のお友達かしら?」


私が「何か良い言い訳はないか」と考えている間に、女性は扉を開いて私に笑みを浮かべながら手招きしてきた。

私は女性の手招きに応じて中に入ると先程、女性が持っていた美しい花が飾られた花瓶が智坂さんの寝ているベッドのすぐそばに置いてあった。


「私の名前は智坂秋穂ともさかあきほ。あなたのお名前は?」


智坂秋穂と名乗る女性は私の名前を聞いてきた。


智坂という苗字。

智坂さんは実は結婚していたのだろうか?

では、以前の人はいったい・・・


私がそこまで思考を動かしたあたりで秋穂さんは私に笑顔のまま歩み寄ると、私の顔や体のラインなどをまるで品定めするかのように見てきた。


「えっと、羽佐間碧はざまみどりです。あなたは智坂さんの・・・」


私は秋穂さんの視線から逃れるために、名前を名乗り話を振った。


「あら、ごめんなさい。うふふふ。こんな可愛い子が妹になったらうれしいなと思ってついね。」


秋穂さんはそう言って私に謝罪した。


(私が妹になったらうれしいってどういうことだろうか?)


私は頭を抱え込んで少しだけ悩んだあと・・・

その意味を理解して思わず赤面してしまう。

智坂さんのことは特に意識してはいないが、仲間内でおそらく3人が智坂さんに淡い恋心を抱いているのだ。

それに、恋人と間違われては意識するなという方が難しい。


なにせ、私はそう言うことに疎いのだ。

見た目が中学生か、最悪小学生に見えてしまう私はそんなことを言われた経験自体がないのだ。


「えっと・・・ 智坂さんには恋人がいるはずですよ? この前に入院した時に服とか持ってきてくれた人がいましたし・・・」


私は赤面した顔を隠しながら秋穂さんにそう言った。


「あれそうなの? でも、おかしいわね。そんな子見ないけど・・・」


秋穂さんはそう言って遠くを見つめている。

きっと記憶の中の病院内での出会いや出来事を思い出しているのだろう。


「やっぱり、そんな子とはあってないわね。徳君が入院した翌日からお世話に通ってるけど、そんな子は来なかったわよ? 本人の意識がないから知らないだけなのか。もしくは、その時だけ人を雇ったか会社の方に手助けしてもらったんじゃないかしら。徳君、実家を頼るのが苦手だから・・・」


秋穂さんはそう言って苦笑する。

智坂さんは実家の人達と仲が悪いのだろうか?


「えっと・・・」


私は秋穂さんにどんな言葉をかければいいのかわからない。

人の行動を観察するために木の葉を集めることはできても、火をつけることはできない。

それが、私という人間だと私は思っている。

事実、こういった場面で気の利いた言葉など出てこない。


「ああ、気にしないで。仲が悪いんじゃなくて距離の取り方がわからないだけだから。なんせすぐると20歳差なのよね~。」


秋穂さんは私の気持ちを察したのか笑顔で笑ってから少し困ったようにそう言って考え込んでしまう。

私には克という人が誰なのかわからなかったが、その人と20歳離れているとどうやら徳さんにはあまり良い事ではないらしい。


「ああ、克は私の夫で徳のお兄さんよ。」


秋穂さんはまたしても私の顔を見て考えを読み取ったのか。

そう言って補足説明をしてくれる。

しかし、それでようやく分かった。


確かに、実家に20歳も歳の離れた兄がいては息苦しいだろう。

秋穂さんは克という人の妻ということは、同い年かそれに近い年齢なのだろう。

だとしたら40代前後だろうか・・・

そう思うとものすごく若い人だなと思った。


「おまけに、うちの娘が4つ下の今年で16になる高校生だから余計なのよね~。」


秋穂さんは窓の外を見ながら遠くを見つめる。

なるほど、兄とは20歳差で姪とは4歳差なのか・・・

非常に複雑な家庭の様だった。


「えっと・・・ とりあえず、私はこれで・・・」


私は徳さんの新しい情報を早速、みんなに話すことにした。

彼女がいないかもしれないことや家族構成などの話は、この退屈な入院生活を彩ってくれそうだなと思ったからだ。


「あら、ごめんなさい。引き留めてしまって・・・ また遊びに来てね。」


秋穂さんは残念そうな顔を浮かべてから笑った。

その笑顔は別れを惜しんでいるからか、儚げに見えた。


ごめんね。秋穂さん。徳さん。

今日は二人をネタにみんなと面白い話ができそうです。

私はスキップしながら仲間たちが待つ病室に帰るのだった。


更新が遅れて申し訳ない。

だが、きっとグダグダな駄文なので読んでくれている人たちは気にしないだろうと信じています。

勝手に信じてごめんね

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