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脱出

ちょっと病気にかかって更新が遅れました。

1階へと落ちた俺達は混乱と共に早速その場を後にすることにした。


「キキーキ!(大丈夫ですか?! 班長!)」


先輩たちが2、3人がかりでバイパーさんをおぶって逃げる。


「待て! 逃げすか!」


後ろからライダーマスクの声がするがバイパーさんを担いだ先輩たちは気にせずに逃げる。


「「「キキッキ!(これでも喰らえ!)」」」


俺と残りの先輩たちは足止めのために適当に重火器や爆弾、その辺にある物を適当に投げつける。

パリィン!窓ガラスを割って先に逃げる先輩たち、だがバイパーさんが重くてなかなか持ち上がらない。


「みんな、俺を置いて逃げろ。」


「キーキキ!(そんなことできるわけないでしょう! さぁ!頑張ってください。)」


どうやら先程のライダーキックは不発になると思われたが、ライダーマスクはあの状況で態勢が不安定な状態で足を踏み切り不完全ながらバイパーさんに蹴りを入れていたらしい。

バイパーさんの胸は蹴りと熱で赤く焼きただれている。


「キーキー!(俺が時間を稼ぎます!)」


俺は一人後方に戻りライダーマスクに戦いを挑む。


「ふ、威勢がいいな。しかしそれだけでは勝てん!」


ライダーマスクの猛攻を俺はただ避けることしかできない。


(だが、それでいい! 俺の目的は時間稼ぎだ!)


ライダーマスクの攻撃は鋭く早い、歳を取り引退したとはとても思えないその動きには感銘さえ受ける。

だが、この後ライダーマスクの動きは急速に劣化することになる。


「はぁ!」


ライダーマスクが俺がちょこまか逃げるのに嫌気がさしたのか、足元の瓦礫を蹴り散弾銃の様に飛ばしてくる。


「キキー!?(くそう!?)」


俺はそれを両手で何とか防ぐのだが、その間にライダーマスクは一気に俺との距離を詰める。


(やられる!)


ライダーマスクの渾身の右ストレートが突き刺さり俺は壁を突き破り一気に外へと運び出された。


(追撃される。逃げなければ・・・)


そう思い体を動かすが思う様に動けない。

逃げたいのに逃げられない。

そんな状況で俺がやきもきしていると壁の向こうからゆっくりとライダーマスクが現れた。


(だ・・・ 駄目だ・・・・ 俺はもう・・・・)


そう思い俺は死を覚悟してライダーマスクの動きをただ見守る。

だが、ライダーマスクは壊れた壁に手を置いて猫背の状態で腰を擦りそれ以上動こうとしない。


「キ…キ…(ゴホ! ゴホッ!)」


俺はマスク内で吐血して思わず一瞬ライダーマスクから視線を外してします。


(もうだめだ・・・・)


覚悟を決めて目をつぶり待つこと数瞬。

ライダーマスクからの追撃はなかった。

俺は顔を上げてもう一度ライダーマスクを見ると先程と同じ位置から動こうとはしていなかった。


(まさか・・・)


「説明しよう! ライダーマスクはあまりに激しい運動を続けるとギックリ腰を起こしてしまうのだ!」


俺はどこからともなく聞こえてくる神ナレーションを聞いたおかげか。

生きる希望を取り戻しゆっくりと匍匐ほふく前進でゆっくりと逃げていく。


タッタッ・・・


「これはいったい・・・・」


そんな俺の前に何者かが立ち上がった。

その顔は逆行の光で見えなかったが、マスクをつけた戦闘員ではなさそうだった。


「HAHAHA ミスターライダー! 手を貸そうか?」


「おお、スーパーマンか、すまない。お願いするよ。久々の戦闘で腰をやってしまってね。」


「HAHAHA お互い歳は取りたくないね~。」


目の前に立つ男はどうやらヒーローらしく、ライダーマスクと楽しげに話している。


(万事休すか・・・・)


俺は一縷の希望を打ち砕かれ、逃げる気力をなくしてしまう。


「ん? なんだ。私が止めを刺す前に死んでしまったのか? 動かないぞ?」


スーパーマンはそう言って俺の頭を踏みつけてボールのように転がす。

俺は抵抗もできずになされるがままだ。


「待て! スーパーマン! 俺達が相手だ!」


遠くから誰かの叫び声が聞こえる。

だが、俺の意識はそこで途切れた。




脱出作戦時の援護として俺は部下と共にすぐそばのビルに潜み隠れていた。

作戦開始からわずか30分しか経っていないはずだが、作戦目標のビルからは爆弾による轟音と何かが崩れた様な音が響き渡った。

俺は部下と共に現場に即座に向かった。

するとそこには窓から脱出をはかるバイパー部隊の姿があった。

周りに戦闘の痕跡もいくつか見られた。


即座に俺達はバイパー部隊の撤退の手伝いをする。


「ネイル。新人が一人。ライダーマスクに戦いを挑んでいる。助けに行ってはもらえないだろうか。」


バイパーさんは俺にそう言ってから気絶してしまう。


「バイパー部隊の新人って智坂じゃね~か! 皆、行くぞ!」


俺は半数の部下にバイパー部隊の撤退をさせつつ、残りの部下と共に智坂の救出へと向かった。

智坂の居場所は案外すぐに分かった。

なにせ、すぐ近くから壁がなにかに破壊される破壊音が鳴り響いたのだ。


俺達はビルの角を曲がり智坂の姿を視認する。

智坂はライダーマスクだけでなく、あの超人スーパーマンも相手にしていたのか。

地面に倒れ伏しピクリとも動かない。


「キー!キー・・・(どうしますか。もう死んでいるかもしれませんが・・・)」


「行くに決まってるだろが! 仲間を最後まであきらめないのが匿名希望☆、第八支部の掟だ!」


俺はすぐさま怪人の姿に変身して戦闘態勢に入る。


「俺はスーパーマンとやる。第一部隊はその援護を! 残りの部隊はライダーマスクを集中砲火だ!」


「キキー!(了解しました!)」


部下たちの集中砲火と共に俺はスーパーマンに一気に駆け寄る。


「おっと、これはまずいな。」


俺に駆け寄ってくると思われたスーパーマンだが、なぜかライダーマスクに駆け寄って壁に開いた穴からビルの中に入って行った。


「キギー?!(なぜ逃げるんだ?!)」


「分からんがこれはチャンスだ!」


俺は智坂に駆け寄り持ち上げて肩に下げるとその場を離脱するため、部下の下へと駆ける。


「おっと、逃がさないよ!」


そんな俺の背後にスーパーマンは一瞬で飛び出してくる。


「こいつどこから!!」


俺は左手で牽制の一撃を放つ。

だが、スーパーマンはそれを難なく交わして拳を振り上げる。


「遅い!」


「ふ!」


「何だと?! ・・・ぐは!!」


スーパーマンは俺の速度を否定する言葉を述べるが俺が手に力を込めて爪を伸ばしてさらにその爪が高速でスーパーマンの脇腹に突き刺さると驚愕の声と共に壁に激突し悲痛な声を上げる。


「智坂を頼む。しんがりは俺に任せろ! 撤退するぞ。」


俺は部下の一人に智坂を渡してスーパーマンに向き直る。

壁への激突後、部下から重火器での集中砲火を受けているにも関わらず、スーパーマンはダメージを受けた様子がない。


「ふ、やってくれるな。」


それどころか、平然と口を開いて喋り出す。


「く! 化け物め!」


俺は両方の爪を伸ばして攻撃を行う。

俺の怪人としての能力は爪の硬化と伸縮、そして伸縮した爪を自在に動かすというものだ。


「ふん! わかっていればどうということはない!」


スーパーマンは俺の十本の指から放たれた攻撃をやすやすと避けて俺へと近づいてくる。


「くそう!これならどうだ!」


俺は足の爪も伸ばして二十本の爪で攻撃を仕掛けるも、スーパーマンの進撃を止めることはできない。


「は!」


スーパーマンはついに俺のすぐそばまで接近し右拳を突き出した。


「ぐふう!」


俺は伸ばしていた爪を収束して拳を防ごうと試みるが、スーパーマンの拳は俺の顔面にやすやすと突き刺さり、俺は2、3mほど後退を余儀なくされる。


「お、おのれ!」


「キーキー!(ネイルさんを援護するんだ!)」


俺がもう一度両手の爪を伸ばすと同時にまた部下たちが集中砲火を仕掛けるが、部下たちの放つ弾丸は当たっても効果がなく、俺の爪はすでに見切られたのか、掠りもしない。


「くらえ!」


スーパーマンはまたしても俺に接近すると拳を大きく振るい放ってくる。

俺は今度は足の爪を地面に突き刺して緊急回避を図りスーパーマンの攻撃を躱す。


「HAHAHA やるじゃないか!」


スーパーマンは歓喜に満ち溢れたような笑顔で笑った。


「くそう、引退したビール腹の中年に苦戦するとは・・・!」


そう、スーパーマンはもう引退した中年ヒーローでその体系はヒーローとは言い難い中年太りのおっさんなのだ!

そんなおっさんに苦戦するようでは現役ヒーローになど勝てるはずがないのだ。

俺は自分をそう言い聞かせて奮い立たせ、またも爪による攻撃を放つ。


「HAHAHA! その技はもう効かないよ!」


スーパーマンにはやはり完全に見切られており俺の攻撃はまたも掠りもせず接近を許してします。


「くそう!」


俺が爪を元に戻して拳を振るうとスーパーマンは先程まで前眼にいたはずなのに目の前から一瞬で消えた。


「こっちだ!」


その言葉に振り返るといつのまにか背後に回られていた。

スーパーマンはゆっくりと腰を回転させ力を貯める動きを取る。


「まだだ!!」


「?! なんだと!?」


俺はここで切り札である。全身の皮膚をどこでも爪に変化する能力で背中に複数の爪を作り、一斉に爪を伸ばして攻撃する。

さすがの、スーパーマンのこの攻撃は予測できなかったのか。

反応が一瞬遅れる。


はずだった・・・・


「残念だな。 私でなければいい線行けただろうに・・・」


スーパーマンは今度は俺の正面に回り込み俺に哀れみの表情を向ける。


(これが伝説のヒーローの力か・・・・)


百戦錬磨の猛者が持つ経験値は俺の切り札を見てもないのに予測していたようで、俺はまたしても顔面にスーパーマンの一撃を貰うことになってしまった。


「ぐはぁ!」


俺は数メートル先にある壁に激突して突き刺さる。


「「「「「「キーキー!(ネイルさ~ん!)」」」」」」


遠くから部下たちの悲痛な叫び声が聞こえた。


「お、お前たち・・・ 俺にかまわず逃げるんだ・・・」


「「「「「キキキー(そんなことできるわけないでしょう!)」」」」」」


部下たちは俺に駆け寄り何とか抱きかかえて脱出を図ろうと煙幕を張り走り出す。


「無駄だ。私からは逃げられない。」


だが、煙幕の先ではスーパーマンが待機していた。


「キーキー!(くそう! こんなところで終わっちまうのかよ!)」


「あきらめるのは、まだ早いですよ。」


「キー!キー?!(お前は新人! 起き上って大丈夫なのか?!)」


そんな中、智坂が意識を取り戻したのか。

部下の肩から起き上がり立ち上がった。


「お前は・・・・ 生きていたのか。」


「ふ、あなたが出てきてくれて助かりましたよ。他の人じゃ勝ち目がなかった。」


「なに? 私になら勝てるとでも?」


智坂は勝ち誇ったかのような声のトーンでスーパーマンに語りかける。

そのことが気に障ったのか、スーパーマンの額には青筋が浮かんでいた。


「ふふふ、これを見てもまだそんな態度が取れますか?」


智坂は一枚の写真を胸ポケットから取り出してスーパーマンに見せる。


「こ、これは?! 貴様いったいこれをどこで?!」


「それは言えません。ですが、これをバラされたくなかったら僕たちを逃がしてください。でなければ、数時間後にはこの写真と他にもいろいろ撮った写真が仲間を通じて奥さんに届きますよ。」


「ぬぬぬ、なんと卑劣な・・・」


見せたのはどうやら浮気写真か何からしく、スーパーマンは顔を真っ赤にして口ごもるが、それ以上の行動はしてこなかった。


「逃げましょう。煙幕をお願いします。」


智坂はその行動を無言の肯定と取ったのか。

仲間の一人に煙幕を張る様にお願いした。


「キキー!(了解した!)」


それを聞いた部下の一人がまた煙幕を張る。

俺達はそれに紛れて再度脱出を図る。

この二度目の脱出の先には今度はスーパーマンは現れなかった。

こうして、俺達は辛くも脱出に成功したのだった。


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