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突入

あれから二日の訓練を終えて、ついに今日。

作戦を実行するときが来た。


突入時刻は13:00ジャスト。

この時刻に突入する理由は昼の休憩終わりでお腹の中で消化活動をしているため、ヒーローの動きが鈍いだろうということと警備の交代時間だという二点だ。


俺はバイパーさん達と共に裏口から突入するため物陰に隠れて待機している。


「「「「・・・!!%&%」」」」


表の方で警備員たちが騒ぎ出した声がする。

陽動班が正面から突入したのだろうと推測できる。


「!」


俺達の班の突入隊の隊長が手で後方の部隊に合図を送って中に突入していく。

裏門のドアのカギは早朝の内に解除済み。

後は突入するのみ。

先頭の部隊から次々と中に突入していく。


突入する部隊は全部で二つ。

突入後は左右に分かれて警備会社の中を捜索する。

目的はヒーロー用に開発された兵器の発見と奪取、できなければ破壊。


バイパーさんの部隊を先頭に俺も警備会社の中へと突入し、入ってすぐの右側の通路を進み二階、又は地下を目指す予定だ。

階段の位置は外からの監視では見えない位置にある様で場所がわからないのだ。


「お前たち! そこで何をしている!」


「「「「「「!」」」」」


俺達の後に続いて突入していた部隊がどうやら見つかったらしい。


「キーキー!(お前たちは先に行け!)」


「キキー!(了解しました)」


俺は突入しかけていた部隊の一人から先に進めと言われ、それを先行する部隊に伝える。


「キキー!(了解した!)キーキー!(元々突入後は分散するんだ。進め!)」


「「「「「キキー!(ラジャー!)」」」」」


バイパーさんの言葉に皆、了解の意を返して俺達は先へと進む。


「キーキー!(止まれ!)」


先頭を行く隊員が何かを見つけたらしい。


「キーキー!(二階への階段を発見! ただ、警備の者たちが一階正面玄関に行くために階段を下りてきています。 どうなさいますか?!)」


「キーキー!(第一班はここで待機。人通りがなくなってから上階へ進め! それ以降は私に続け!)」


バイパーさんは第一班を残し先へと進む。

今回の作戦でバイパー班は全員で9名いる。

それをあらかじめ3名ずつで分けて3つの班で構成されている。


バイパーさんは第二班に所属し、俺は第三班だ。

俺達は階段を求めて別のルートを探す。


「キーキー!(止まれ! エレベーターを発見した。 こいつを使うぞ!)」


「「「「「キキー!(ラジャー!)」」」」」


俺達は上階から警備員がエレベーターを使って1階に下りた後、開いたドアに飛び込み上階を目指す。

エレベーターに乗り扉を閉めると3階から呼び出しボタンが押されたのか。

勝手に3階のマークが光りだす。


「キーキー!(2階ボタンを押せ!2階で降りてまた階段を探す。ドアが開いた瞬間、ヒーローと鉢合わせたら全滅する!)」


「「「「「キキー!(ラジャー!)」」」」」


先程から「キーキー」言っているだけだがこれは俺達の着ている実戦用戦闘服の効果だ。

この実戦用戦闘服は見た目は訓練用と同じだが、若干軽いのに防御や攻撃力は訓練用の2倍はある。

そして、口元には暗号化機能と耳元の暗号解除機能によって普通にしゃべるだけなのに周りには「キーキー」言っているようにしか聞こえないという優れものなのだ!


2階で降りた後に俺達はビルの裏口方向に移動して階段を探す。

先程、1階にあった階段の場所に行けばその上に行く階段があると思ってだ。

しかし、そこには1階に下りる階段はあっても3階に上る階段はなかった。


「キーキー!(1階と2階で作りが違う。これは怪しい!行くぞ!)」


ビル内の複雑な構造を見てバイパーさんは噂程度だった新技術の開発とチェックがなされている可能性が確信へと変わったのだろう。

声には少し歓喜の感情が混じっていた。

俺達はその先も誰にも見つかることなく無事に進み。

ついに厳重に閉鎖された怪しげな扉を見つける。


「キーキー!(どうだ。開きそうか?)」


「キーキー!(ダメだ。パスワード式であることは判るがパスワードが判らない。)」


「キーキー!(こういう時のために解除システムを持つ機器を持ってきているだろう。)」


「キーキー!(いけません!このロックは一度失敗すると警報が鳴る仕組みです。総当たりで解除コードを打ち込む危機では開くことはできません!)」


「キーキー!(くそう!どうすればいいんだ!)」


先輩やバイパーさん達の声からは明らかに焦りの感情が見て取れる。

マスクで表情が見れないがきっと緊張と焦りで汗まみれだろう。


「キーキー!(爆破しましょう。)」


「「「「キーキ?!(何を言い出すんだ新人)」」」」


俺の発言にその場にいる全員が俺を見て驚きの声をあげる。


「キーキー!(大丈夫です。爆薬の量と爆破の位置を正確に行えば少量の爆薬で開けられます。

今はどこも交戦中ですので多少の爆音は聞き流れるでしょう。)」


「・・・・キー、キー(よし、やってみろ。)」


バイパーさんは少しばかり逡巡した後、そう言って俺に任せてくれた。


「キーキー!(爆薬の調整は俺に任せろ。)」


「キーキー!(お願いします。)」


元解体屋の先輩に爆薬の量を任せて俺は扉の構造を探る。

10分後、必要部位に爆薬を取り付けて俺達は少し離れたところに移動する。


「キー!(やれ!)」


バイパーさんの合図で爆破スイッチを押し、爆破する。

バンっと小さい音が鳴るとドアの必要最低限の部位破壊に成功。

固く閉ざされていた扉は少しだけ開いた状態で止まっていた。


「「「キーキ!(せ~の!)」」」


俺達は力を合わせて少しだけ開いた扉を人が入れる大きさまで開いた。

置け放たれた扉の中には研究員と思われる者達が逃げ惑っていた。

いや、爆破の衝撃の後、別の扉から逃げ去ったのだろう。


中には先程までいたと思われる研究員の白衣や人がいたと思われる痕跡が複数見つかる。


「キーキー!(中に人がいたようだ。1分以内に手当たり次第に使えそうな武器の奪取と破壊を行う!

やれ!)」


「「「「「キキー!(ラジャー!)」」」」」


「おっと、そいつはさせられね~な。」


「「「「「「キーキー!(何やつ!?)」」」」」」


不意に掛けられた男の声に振り向くと先程爆破した扉の向こうに一人の中年男性が立っていた。

年齢は約50代の少しお腹が出たおじさんだった。


「キーキー!(貴様は! 初代ライダーマスクの本郷!)」


「「「「「キキー?!(何だって~!?)」」」」」


「ほう、俺のことを知っているのか。」


男は俺達にしか聞こえないはずの暗号化された言葉を理解しているような素振りで俺達に語りかける。


「キキキー!!(相手は一人だ!怯むな殺れ!)」


「「「「「キキー!(おっしゃー!!)」」」」」


俺達は元々持っていた重火器や近くにある新兵器っぽい物を手に取り男にぶっ放した。

いくら元ヒーローとはいえ、変身していないのならばただの人!


これで終わった・・・


皆がそう思った時だった。


「せいや! とう!」


初代ライダーマスク本郷が最も近くにいた戦闘員二名を投げ飛ばしていく。

投げ飛ばされた仲間は別の仲間に当たり計4名が攻撃できない。

いや、その間にさらにもう一人で壁に激突させ俺へと向かって来る。


(この距離では重火器よりこっちの方がいい!)


俺は手に持った重火器を投げ捨てて腰に差していた軍用ナイフを取り出して応戦する。


「遅い!」


しかし、さすが初代ライダーマスク本郷!

俺の攻撃など意に介さずそのまま突っ込んできてナイフを避けて俺の腹に一撃を入れた後、ナイフを持っていた手を掴んで背負い投げをしてきた。


「ギー!(ぐはぁ!)」


何とか受け身を取ったものの背中から伝わる衝撃に呼吸ができなくなってしまう。

俺が動けにない様に他の人達もどうやら動けないようで、その間に初代ライダーマスク本郷は机の上に載ってお決まりの変身ポーズを始める。


「説明しよう! 初代ライダーマスクは変身前に特殊な変身ポーズを取らなければならないのだ!」


「ライダー! 変身! とぅ!」


初代ライダーマスク本郷は空中で見事なムーンサルトを決めて着地するといつの間にかライダーマスクへの変身を遂げていた。


「キキー!?「馬鹿な!? あの歳でムーンサルトを決めるだと?!」」


「キーキー!(とても引退した爺の動きとは思えないぜ!)」


「ふはははは。 さぁ!どこからでもかかってこい!」


ライダーマスクは戦闘態勢に入り構えるとじりじりと近寄ってくる。


「ギギー!(仕方がない! 俺も変身するぜ!)」


そう言ってバイパーさんは戦闘員服を脱ぎ棄てて異形の怪人へと姿を変えた。

バイパーさんは蛇をモチーフにしているのか、両手と頭が蛇の様になりしかも両手は元が人であったとは思えない長さに変わる。


「ふ。ようやく正体を現したか! いくぞ!」


そこからの戦いはまるで戦隊ヒーローでも見ているかの様だった。

あの伝説化して何年も姿を表に出さない初代ライダーマスクが今、目の前で怪人と戦って老いるのだ。

だが、その姿をあまり喜んでみてはいられない。


何せ俺は悪の組織の戦闘員、バイパー班長が戦っている間にこの研究室内にある資料や兵器を盗み出すか

破壊しなければならない。

二人の激しい戦闘のおかげで勝手にいくつかの兵器は壊れていく。

それを加速させるためと、バイパー班長の援護のために様々な武器をライダーマスクに向けて放つが、効果は今一つの様だ。


「くそう! これでも喰らえ!ポイズンミスト!」


バイパーさんが両手の蛇の口から毒ガスを噴出してライダーマスクに浴びせる。


「無駄だ! 俺にそんなものは聞かない!」


だが、ライダーマスクには効果がない様で構わず突っ込んでくる。


「・・・! なに?!」


「ふははは! かかったな!」


しかし、先程まで悠々と駆けていたライダーマスクの足が止まった。

彼の体にかかった毒が時間と共に硬化して周辺の物とボンドの様にくっついたのだ。


「食らえ! バイパーウィップ! ファング!」


相手の動きが止まるとバイパー班長はこれ見よがしに一方的に攻撃を仕掛ける。

蛇になった両手を鞭のようにしならせての波状攻撃に加えて牙での噛み付き攻撃などでライダーマスクを追い詰める。


「キキー!(さすが、バイパーさん! あの初代ライダーマスクを押してるぞ!)」


「「「キーキー!(頑張れ~! バイパーさ~ん!)」」」


戦闘員の応援にも熱が入るというものだ。

だが、相手はあのライダーマスク。

百戦錬磨の強敵を打倒してきた伝説の戦士だ。油断はできない。

俺は先輩たちと共にそろそろ撤退の準備を始めた。


「はははは! やった! ついに俺も正義のヒーローを倒して幹部入りだ!!」


バイパーさんが勝利を確信してライダーマスクを絞め殺すために両腕を巻き付け締め付ける。


「ぐおおおお!」


ライダーマスクからついに悲鳴の声が上がる。

今までは攻撃を受けても泣き叫ぶことなどなかったあのライダーマスクの漏らした悲鳴に俺達は歓喜した。


((((((勝てる!))))))


皆がそう思った瞬間だった。


「ぐ、ぐわぁぁああああ!!!」


急にバイパーさんが苦しみの声を上げだしたのだ。

何事かと思いバイパーさんの両腕を見るとライダーマスクに触れている部分が赤くただれていた。

よく見るとライダーマスクを覆う毒が蒸発してドンドン気化し消えていく。


バイパーさんは堪らず両腕をライダーマスクから話して後ずさる。


「こ、これはいったい・・・」


「説明しよう!ライダーマスクは現在、新ヒーローのためのスーツ改良テストを受けており、現在スーツの温度を自在に調整することができるのだ。」


「キーキー?!(・・・・! 今の声はいったい?!)」


バイパーさんがライダーマスクに起こった異常事態に疑問を抱くと、なぜか以前も入った説明口調がどこからともなく聞こえてくる。


「キキー!(あ、あれは神ナレーションだ!)」


「ギギギ?!(神ナレーション?!)」


「説明しよう!神ナレーションとは、正義の味方の戦闘中に起こる現象を解説してくれる。神の声なのだ!この声が聞こえると正義の味方の勝利が決まると言われている!」


「キキー!?(また、あの声だ!)」


俺が神ナレーションに驚いている間にライダーマスクはゆっくりとバイパーさんに近付いていく。


「くそう。」


バイパーさんにはもう打つ手がないのか、後ずさることしかできない。


「キー!キー!(まずいぞ! この流れはライダーキックを食らって殺られる流れだ!)」


一人の先輩がそう言った瞬間だった。

ライダーマスクは突然勢いをつけるために走り出す。


「キキー!(いけない! 先輩!!)」


「キー!(分かってる!)」


ライダーマスクがバイパーさんに止めのライダーキックを放つために片足を踏み切った瞬間。

俺達のいた部屋の足場が崩れた。

俺と元解体屋の先輩が仕掛けた爆弾で床ごとごっそり落としたのだ。


「「「「「キキー!(うわ~)」」」」」」


「な! これは?!」


急に足場がなくなりライダーマスクは技を失敗し俺達と共に1階に落ちていった。


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