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トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


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EP 8

アイドルの呪い(バフ)と、強制農業労働

「ひっ……! あ、あんた、俺たちをどうする気だ……!?」

腰を抜かした傭兵の隊長が、ガタガタと震えながら後ずさる。

俺はエプロンのポケットから、ポンポンッ!と三十人分の『クワ』と『スコップ』を取り出し、彼らの足元に放り投げた。

「どうするも何も、芋を踏み荒らしたんだから、労働で返してもらうだけだ。安心しろ、命までは取らない。……ただし、ノルマを達成するまでは帰さないぞ」

「ろ、労働……?」

ポカンとする傭兵たちを尻目に、俺は振り返ってリーザに声をかけた。

「リーザ! みかん箱の上に立て!」

「はいはーいっ! 私のステージね!」

リーザはどこからともなく木箱(みかん箱)を持参し、広場の中央にスッと立った。

パンの耳と茹で卵で生き延びていた地下アイドルにして、海中国家シーランの人魚姫。彼女が深呼吸をした瞬間、その場の空気がピンと張り詰めた。

「ポポロ村のみんなー! そしておいたをしちゃった迷える子羊さんたちー! 絶対無敵のタダ活アイドル、リーザのスペシャルライブ、始まるわよっ! ミュージック、スタート!」

リーザが指を鳴らすと、どこからともなく謎のキラキラした幻聴(BGM)が響き始めた。人魚姫の魔法だ。

『愛!アイ!愛!アイ!ラ〜ブラブ! マネー!マネ!ローン!ダーリン!グ!』

突き抜けるような、それでいて魂を直接揺さぶるような圧倒的な歌声。

リーザの本気の歌『Love & Money』だ。

「な、なんだこの歌……!?」

「頭が……いや、体が勝手に熱くなってきやがる……っ!」

傭兵たちがざわめく中、俺の体にも異変が起きていた。

『Love & Money(愛と活力)』のバフ魔法。腐っても人魚姫の歌声は、対象の身体能力とテンションを強制的に限界突破させる恐るべき効力を秘めている。

「……おおおおおっ!!」

俺の奥底に眠っていた『農業への情熱』が、人魚のバフを受けてマグマのように煮えたぎり始めた。

「全員、クワを持てェェェッ!!」

俺が腹の底から絶叫すると、バフでハイテンションになりつつも、俺の『龍の気迫』に恐怖していた傭兵たちが、ビクゥッ!と跳ね起きて一斉にクワを握った。

「いいか! 土作りは農業の基本だ! お前らが踏み荒らした太陽芋のうねを修復し、さらに村の西側にある荒れ地を今日中に開墾する! クワの入れ方が浅い! もっと腰を落とせ! 大地の鼓動を感じろォォッ!」

「「「サー、イエッサー!!」」」

帝国軍の精鋭(?)であるはずの偽装傭兵部隊三十人が、一糸乱れぬ動きで畑を耕し始めた。

「そこのお前! 土の塊が残ってるぞ! 団粒構造を作れ! 水はけと通気性を良くしないと良い芋は育たん!」

「は、はいぃぃっ! 団粒構造、作りますぅぅっ!」

「気合いが足りない! そんなんじゃミミズにも笑われるぞ! 歌に合わせろ! イチ、ニッ、サン、シッ!」

『ダイヤが欲しい♪ 土地も欲しい♪ 貴方のとキャッシュで生きていけるぅ〜!』

「「「ウオォォォォォッ!!(ザクッ! ザクッ!)」」」

リーザの強欲なアイドルソングをBGMに、三十人の男たちが涙と汗を流しながら荒れ地を猛スピードで耕していく。

俺も先頭に立ち、チタン棒をクワに持ち替えて、彼らの三倍のスピードで土をひっくり返していく。

「もっとだ! もっと深く! お前たちの罪を土に還せ! 新しい命(野菜)の苗床を作れェェッ!」

「「「俺たちの罪を!! 土に還すゥゥゥッ!!」」」

恐怖による支配と、アイドルソングのハイテンションバフ。

二つの異常な相乗効果により、傭兵たちの間に「謎の一体感」と「農業への目覚め」が生まれ始めていた。

彼らの筋肉は躍動し、顔は恐怖と感動でぐしゃぐしゃになりながらも、ただひたすらに土と向き合っている。

***

「……ねえ、キャルル。あれ、何を見せられてるの?」

「……分からないわ、ダイヤ。でも、あんなに嬉しそうに涙を流しながら畑を耕す帝国兵、私、初めて見た……」

「大地の農業知識と、リーザちゃんの歌……恐ろしい洗脳、じゃなくて、相乗効果ね……」

遠巻きに見ていたヒロイン三人は、ドン引きを超えて、もはや神聖な儀式でも見ているかのような顔で震えていた。

そして、数時間後。

日が暮れる頃には、村の西側にあった広大な荒れ地は、見事なまでにフカフカの黒土が広がる『極上の畑』へと変貌を遂げていた。

「ハァ……ハァ……やった……やり遂げたぞ……!」

「俺たち……なんて美しい土を……っ!」

クワを杖にして立ち尽くす傭兵たちは、夕日に照らされた真新しい畑を見て、肩を抱き合いながら男泣きしていた。

もはや彼らの中に、村を襲撃しようとした時の邪悪な気配は微塵も残っていない。あるのは、一仕事終えた農家の清々しい達成感だけだ。

俺は肩で息をしながら、エプロンで汗を拭った。

「……よし。ノルマ達成だ。お前ら、よく頑張ったな」

「あ、赤木のダンナァ……!!」

「……泥を落として、広場に集まれ」

俺は夕日を背に受けながら、ニッと笑って親指を立てた。

「ペナルティはここまでだ。手伝ってくれた礼に、最高の『肉じゃが』を食わせてやる」

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