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トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


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EP 7

無双流・護身棒術『野分』

「おいおい、なんだあのヒョロガキは」

俺が一人で前に出ると、広場を占拠していた偽装傭兵部隊の男たちが、下品な笑い声を上げた。

「ここは俺たち『漆黒の牙』が制圧した! 抵抗するってんなら、その棒切れごとハチの巣にしてやるぜ、ええ!?」

部隊の隊長らしき、顔に傷のある大男が一歩前に出る。

その手にはルナミス帝国製の旧式魔導銃が握られており、他の部下たちも一斉に剣や斧、銃口をこちらに向けた。

一触即発。三十対一という絶望的な状況だ。

背後からキャルルの「やっぱり私が……!」という焦った声が聞こえるが、俺は片手でそれを制した。

「一つだけ聞いておく」

俺は地面に潰れた『太陽芋』を一瞥し、静かに口を開いた。

「この芋を育てるのに、どれだけの時間と手間がかかってるか知ってるか? 土を耕し、種を蒔き、草をむしり、獣から守って、ようやく実る命なんだぞ」

「はっ! 農民の泥遊びの苦労なんか知るかよ! たかが芋っころだろうが!」

大男が嘲笑し、足元にあった芋を再びドスッと蹴り飛ばした。

「……そうか。なら、農業いのちの重さ、体で教えてやる」

俺はチタン合金棒を斜めに構え、すぅっと深く息を吸い込んだ。

祖父ちゃんから叩き込まれた、無双流の教え。

『刃は命を絶つためにある。だが棒は、命を活かし、争いを収めるためにある』

「やっちまえ!!」

隊長の号令と共に、先陣を切った五人の大柄な傭兵が、怒号を上げながら大剣と戦斧を振りかざして突っ込んできた。

俺は動かない。

相手の間合い、踏み込みの速度、重心のブレ。その全てを、俺の目はスローモーションのように捉えていた。

香取神道流の鋭い振り。そこに、宝蔵院流槍術の『引き』の動作をシームレスにブレンドする。

「無双流・護身棒術——壱の型『野分のわき』」

俺のチタン棒が、疾風の如く宙を舞った。

狙うのは相手の肉体ではない。振り下ろされる武器の『重心』と『軌道』だ。

カキンッ! グルンッ!

「なっ!?」

先頭の男が振り下ろした大剣の腹にチタン棒を滑り込ませ、俺は手首を捻って力学的なテコの原理を発生させた。

相手の腕力と突進力が、そのまま螺旋の回転力へと変換される。

「うわあっ!?」

男の手からすっぽ抜けた大剣が、空高く弾き飛ばされた。

だが、俺の動きは止まらない。

足さばきは円を描き、台風(野分)のように周囲の敵を巻き込んでいく。

タンッ、タタンッ!

斬撃をいなし、斧の柄を巻き込み、銃身を弾き上げる。

相手の力を利用しているため、俺自身の筋力はほとんど使っていない。圧倒的な技術と間合いの支配による、完全な武装解除術だ。

カラン、ガラン、ドサッ!

「ひっ!?」

「ば、馬鹿な! 俺たちの武器が……!!」

ものの十秒。

俺の周囲には、武器を失い、手首を押さえて呆然と立ち尽くす傭兵たちの姿があった。

一滴の血も流れていない。だが、彼らの牙は完全にへし折られていた。

「な、なんだと……!? クソガキが、魔術も闘気も使わずに俺たちを……っ!」

隊長の大男が顔を真っ赤にして激昂し、自身の魔導銃の銃口を俺の眉間にピタリと向けた。

「調子に乗るなよ! 武器が弾き飛ばされようが、この距離なら必中だ! 死ね!!」

男の指が引き金にかかる。

その瞬間。

俺の奥底で眠っていた『窮鼠、龍を退ける』ほどの気迫——自己犠牲すら厭わぬ守護の精神が、一気に爆発した。

「——撃てるものなら、撃ってみろ」

俺は姿勢を低く落とし、チタン棒の切っ先を隊長の喉元へと向けた。

同時に、俺の全身から放たれる凄まじいプレッシャーが、広場の空気を物理的に重くした。

「……あ……、……ぇ……?」

隊長の顔が、恐怖で引き攣った。

彼の目には、俺の後ろに『巨大な龍があぎとを開いて自分を喰い殺そうとしている』幻影がハッキリと映っていたはずだ。

それは殺気ではない。圧倒的なまでの『格の違い』から来る、魂の屈服。

カチャリ、と。

男の手から魔導銃が滑り落ち、地面に転がった。

「ヒィィッ……!! ば、化け物……っ!!」

隊長は腰を抜かし、尻餅をついて後ずさった。

他の傭兵たちも、俺から放たれる龍の如き気迫に当てられ、武器を拾うことすらできずにガタガタと震えている。

「……勝負あり、だな」

俺はチタン棒をカシャッと縮めて『水筒』に戻し、リュックのポケットに突っ込んだ。

静まり返った広場。

背後で見ていたキャルルたち四人は、信じられないものを見るような目で俺を見つめていた。

「だ、大地……」

「一滴の血も流さず……帝国軍の小隊を、ただの棒一本で完全制圧しちゃったわ……」

「あれが……私のオカン(プロデューサー)……っ!」

キャルルの頬が赤く染まり、ダイヤの体が震え、リーザが謎の尊敬の眼差しを向けている。

こうして、ポポロ村を火種にした『世界大戦』の危機は、一人の農業高校生の手によって未然に(かつ平和裏に)防がれたのである。

「さて、と」

俺は震え上がっている傭兵たちを見下ろし、ニッコリと笑いかけた。

「芋を踏み荒らした落とし前は、きっちりつけてもらうぞ。リーザ、出番だ」

「はいはーいっ!」

ここから、俺とリーザによる『地獄の強制農業労働』が始まるのだった。

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