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トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


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EP 5

第1回・ポポロ村『家計と命』の戦略会議

ドスゥゥゥゥンッ!!

夕食後、シェアハウスのリビングの机が、へし折れんばかりの悲鳴を上げた。

「毎月恒例、世界樹さまからの仕送りよ! 今月も純金100キロ、ちゃーんと届いたわ!」

エルフの次期女王ルナが、さも「実家から野菜が届いた」くらいのテンションで、麻袋いっぱいの眩い金塊をテーブルにぶちまけた。

「で、出たぁぁぁ! 世界樹の過保護年金!!」

村長のキャルルが頭を抱えて胃の辺りをさする。

どうやらポポロ村の村長が抱える最大のストレス要因は、この『月に一度の純金爆撃』らしい。

「ふふふ……ふふふふっ!」

その金塊の山を見て、リーザの目が完全に『¥』マーク(この世界なら『G』か)に変わっていた。

「ねえルナちゃん! この金塊を元手に、ルナミスパーラー(パチンコ屋)に行きましょう! ルナちゃんの念動力で銀玉をV入賞させまくれば、無限に稼げるわ! これぞ絶対無敵のタダ活……名付けてコンフィデンス・マーメイド計画よ!!」

「ちょっと待てリーザ! その前に私の武器のメンテ代の借金を……っ! 明日にはゴルド商会の取り立てが来るのよぉっ!」

タダ活アイドルと、貧乏令嬢が金塊に群がろうとする。

「ストォォォォップ!!」

バンッ! と机を叩く音が、リビングの騒ぎを一瞬で静まらせた。

家庭科のエプロンをビシッと身につけた俺である。

俺はエプロンのポケットから、日本の『家計簿(大学ノート)』と『電卓』、そして『指し棒』を取り出した。

「お前ら、ちょっとそこに正座しろ。第1回、ポポロ村・家計戦略会議を始める」

俺の背後に謎の凄み(オカンのオーラ)を感じたのか、ルナ、リーザ、ダイヤの三人がビクッと肩を揺らし、素直に床に正座した。キャルルだけは「大地、やっちまって」という顔で俺の背後に立っている。

「まずルナ。お前の善意は認めるが、この狭いポポロ村の経済圏に純金100キロを流通させたらどうなるか分かるか?」

「えっと……みんなお金持ちになってハッピー?」

「違う! 『ハイパーインフレ』が起きるんだよ!」

俺は黒板代わりに空中に魔法の光を走らせ(エプロンの謎機能だ)、グラフを描く。

「金が急激に増えれば、金の価値は暴落する。昨日まで銅貨1枚で買えていたパンが、明日には金貨100枚出さないと買えなくなる。ポポロ村の経済は一瞬で崩壊、ルナミス帝国や獣人王国との貿易バランスもぶっ壊れて、最悪、世界大戦の引き金になるんだぞ!」

「せ、世界大戦……!?」

「ルナ、この金塊はキャルルと一緒に地下室に塩漬け(封印)してこい。お前の仕送りは劇薬だ」

「は、はいぃ……!」

世界樹の寵愛を受ける次期女王が、俺の経済理論の前に震え上がった。

次に、俺は指し棒の先をリーザに向けた。

「次にリーザ。お前の『コンフィデンス・マーメイド計画』だが、ただのゴト行為(犯罪)だ。ルナミス帝国の内務省(オルウェルとかいう監視の鬼がいるらしい)を舐めるな。監視カメラ網でバレて、村ごと制裁されるぞ。ギャンブルは胴元が勝つようにできてるんだ、大穴狙いはやめろ」

「うぅ……でも、アイドルには衣装代とか……」

「アイドルの基本は地道な営業とファンサービスだ。パンの耳ばかり食ってないで、村の畑仕事を手伝って正当な日当と野菜を稼げ」

「は、はい……(ぐすっ)」

タダ活アイドルが論破され、涙目で頷く。

最後に、俺はダイヤを見下ろした。

「ダイヤ。お前、Sランクの実力があるのになんでそんなに貧乏なんだ?」

「だ、だって……魔導バズーカの弾薬費とか、クリムゾンアーマーの維持費が……。戦場のあらゆる武器を一斉展開する『大斬撃』を一回撃つと、金貨百枚くらい飛ぶのよ……っ!」

「典型的な『自転車操業』だな。経営破綻まっしぐらだ」

俺はため息をついた。

「お前、『ウェポンズマスター』のユニークスキルを持ってるんだろ? だったら、高価な魔導部品を外注するんじゃなくて、自分で素材から作れ。DIY(日曜大工)の精神だ」

「で、でも鍛冶なんて……」

「俺が『危険物取扱』の知識と、無駄を省いた『クラフツマン』の心得を教えてやる。弾薬の調合から武器のメンテまで、原価率を極限まで下げて、利益を出せる賞金稼ぎになれ」

「だ、大地……っ!」

ダイヤが感動の面持ちで俺を見上げる。

俺は家計簿をパタンと閉じ、全員を見渡して宣言した。

「いいか。今日からこの家の財政は、俺とキャルルで管理する! お前らの生活は『お小遣い制』だ! 畑仕事、掃除、武器の自作、それぞれのノルマを達成した分だけ、俺が作った『三食の美味い飯』と『お小遣い』を与える! 文句ある奴はいるか!」

「「「ございません……っ!!」」」

三人の美女が、三つ指をついて平伏した。

その横で、村長のキャルルが「ああ……ずっとこういうオカン(管理者)が欲しかったのよ……」と感動の涙を流している。

かくして、強大すぎる力とポンコツすぎる経済観念を持ったヒロインたちは、農業高校生・赤木大地の『オカン独裁政権』のもと、健全で文化的な生活を強制されることとなったのである。

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