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トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


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EP 5

非課税(密輸)友好条約の締結

「よし! これでどうじゃ!!」

ガンドフがバンッ!と作業机に叩きつけたのは、分厚い羊皮紙の束だった。

そこには、ドワーフの公印と、ガンドフの『内務官』としてのサインが既にデカデカと記されている。

「ドンガン地下帝国とポポロ村における、『包括的技術・物資交流に関する友好条約』じゃ! どうじゃ大地、ダイヤ嬢! 条件に不満はないじゃろ!?」

ガンドフが鼻息を荒くして差し出してきた条約書を、俺はエプロン姿のまま、腕を組んでジッと読み込んだ。

「えーっと……『ポポロ村はドンガン地下帝国に対し、サケスキー、肉椎茸、陽薬草、およびポポロシガーを優先的に供給する。また、大地とダイヤは定期的に技術顧問として助言を行う』……ふむふむ」

「うむ! その対価として、我が国からは『最新鋭の魔導ライフル』『魔導誘導バズーカ』、そして先ほどダイヤ嬢が再設計してくれた『新型・魔導戦車プロトタイプ』などの兵器一式を、惜しみなく提供しよう!」

「戦車!? 本当にいいの!?」

「構わん! ダイヤ嬢の神がかった設計図のおかげで、我が国の軍事力は飛躍的に向上するからな。プロトタイプの数台くらい、安いもんじゃ!」

ダイヤが「やったぁぁっ! これで村の防衛力がカンストするわ!」と飛び跳ねて喜んでいる。

だが、俺はオカン(村の家計管理者)として、非常に現実的な問題に直面していた。

「ガンドフさん。条件は破格だし、ありがたいんだが……一つ大きな問題がある」

「なんじゃ? 出し渋るなよ、ワシはもうあの『肉椎茸』と『サケスキー』なしでは生きていけん体になっておるんじゃからな!」

「いや、そうじゃなくて『流通ルート』だよ」

俺は地図を取り出してテーブルに広げた。

「ポポロ村は、ルナミス、レオンハート、アバロンの三国に囲まれた緩衝地帯だ。地上を通ってドワーフの兵器を運び込めば、間違いなく三国の関税(莫大な税金)を取られるし、最悪『ポポロ村が武装蜂起する気か!』と軍隊を差し向けられるぞ」

「む……確かに、地上の連中の目はうるさいからな」

「それに、こっちから酒や葉巻を輸出するにしても、正規ルートを通せば中間マージンをガッツリ中抜きされる。これじゃあお互いに旨味が少ない」

俺が現実的なコストの話をしてため息をつくと、ガンドフは片眼鏡モノクルをキラリと光らせて、ニヤァ……と非常に悪い顔をして笑った。

「カッカッカ! 大地よ、お主は賢いが、少し『クソ真面目』すぎるのう。……国境も関税も、完全にスルーできる『最高の輸送ルート』が、すでにあるではないか」

「え?」

ガンドフが太い指で指し示したのは。

先ほど、俺のホイールローダーとダイヤの削岩機で、無断でブチ抜いた『地下の巨大な風穴』だった。

「……あの穴から、直接やり取りしろってことか?」

「左様! あの穴を拡張し、トロッコのレールを敷けば、地上の三国の目を完全に欺ける! 関税率ゼロ! 中間マージンゼロ! お互いの利益率100%の、究極の『地下直通ルート』の完成じゃ!」

「それって……つまり……」

俺の背筋に、冷たい汗が流れた。

ガンドフの言っていることは、要するに国家間の——。

「『密輸ブラックマーケット』じゃないか!!」

「人聞きの悪いことを言うな! これはポポロ村とドンガンの『非課税タックスヘイブン特区』じゃい! さぁ、サインを! サインをするんじゃ大地!」

(い、いや、さすがにマズいだろ! 俺はただの農業高校生だぞ! いくらなんでも密輸なんていう国際犯罪に手を染めるわけには……!)

俺が良心とコンプライアンスの間で激しく葛藤していると、ガンドフが懐からチラリと『純度100%のミスリルインゴットの束』を見せつけてきた。

「……サケスキー樽1つにつき、このミスリルを付けよう。非課税で、な」

「…………」

オカンの脳内で、猛烈な勢いで電卓が弾かれた。

(ルナキンでの外食費……ヒロインたちの爆食いによる食費……来月のタロウマートでの日用品の買い出し……それに、万が一またFXで借金を背負った時のための裏金……)

「…………大地?」

ダイヤが不思議そうに俺の顔を覗き込む。

俺は数秒の沈黙の後、スッ……とエプロンのポケットから、ネギオから貰った特注の『ポポロシガー』を取り出し、ガンドフに差し出した。

「……まずは一服、どうですか。ガンドフさん」

「お? これが噂のポポロシガーか。どれ……」

ガンドフが葉巻を咥え、火を点ける。

紫色の煙を深く吸い込んだ瞬間、ガンドフの目がカッ!と見開き、パワードスーツごと「ふおおおおおおっ……!」と崩れ落ちた。

「な、なんじゃこの極上の香りは! 脳の疲労が溶けていく……! 徹夜の疲れが、まるで世界樹の温泉に浸かっているかのように癒やされていくわい!!」

「ふっ。ポポロ村の特産品、気に入ってもらえて何よりです。……いいでしょう。その『非課税(密輸)ルート』、ポポロ村村長代理として、この赤木大地が乗りました」

「大地ィ! お主、最高じゃあぁぁっ!!」

俺は悪魔に魂を(村の財政のために)売り渡し、ガンドフの差し出した条約書に、力強くサインを書き込んだ。

こうして、ただのスローライフ農村だったポポロ村は。

地下帝国との強固な密輸ルートを確立し、現代の軍隊すら顔負けの『超重武装・永世中立テロリスト国家』への道を、ルビコン川を渡る勢いで突き進んでしまったのである。

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