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トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


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EP 4

 ダイヤの兵器開発談義と、狂信のドワーフ

ガンドフの案内で足を踏み入れた『王立魔導技術研究所』は、男のロマンと狂気が入り混じったカオスな空間だった。

むせ返るような機械油の匂い、壁一面に無造作に貼られた設計図、そして床に散乱する謎の金属パーツ。

「さぁ、見てくれ! これがワシの最高傑作にして、最大の悩みの種……超重魔導戦車『ドンガン・ジャガーノート』のプロトタイプじゃ!」

ガンドフが誇らしげに(しかしどこか悔しそうに)指差した先には、巨大な砲身を何本も生やした、まるで鉄のハリネズミのような巨大な戦車が鎮座していた。

「でっか……。これ、本当に動くのか?」

「動くには動くが……問題だらけでな。主砲を撃つと、凄まじい反動で車体のサスペンションが自壊してしまうんじゃ。それに装甲を厚くしすぎたせいで重すぎて、泥濘地でいでいちではキャタピラが沈んで身動きが取れん……」

ガンドフが頭を抱えて愚痴をこぼす。

ロマンを詰め込みすぎた結果、実用性を完全に度外視してしまったマッドサイエンティスト特有の失敗作だ。

「……ふぅん。無駄が多すぎるわね」

その時。

ドンガン・ジャガーノートを見上げていた公爵令嬢ダイヤの瞳が、ギラリと猛禽類のような光を放った。

「だ、ダイヤ?」

「貸してちょうだい!」

ダイヤはガンドフの作業机から木炭ペンをひったくると、机の上に広げられていた巨大な設計図に、猛烈な勢いで修正の線を引き始めた。

【ウェポンズマスター】のユニークスキル。

それは剣や槍といった冷兵器だけでなく、『兵器ウェポン』と定義されるもの全て——大工道具から最新鋭の魔導戦車に至るまで——の構造を直感的に理解し、最適解を導き出すという反則級のチートである。

「いい? まずこの副砲塔、全部いらないわ。死重デッドウェイトになってるだけよ。それから装甲! なんで全部垂直の四角い箱型にしてるの? 装甲板に角度をつけて『斜め(傾斜装甲)』にすれば、敵の魔法弾の衝撃を逸らすことができるから、鉄板を薄くしても防御力は上がるわ!」

「け、傾斜装甲……!? 装甲を斜めにして威力を逃がすじゃと!?」

ダイヤの容赦ないダメ出しに、ガンドフが目玉を飛び出させて驚愕する。

「主砲の反動が逃げ切ってないのは、車体の重心設計が甘いからよ。砲塔の位置を15センチ後方にズラして……そう、家の『大黒柱』の重心を計算するのと同じ要領よ。ここを起点に応力を逃がすの!」

「せ、戦車を木造建築のノリで再設計しておる……!」

凄まじい速度で戦車のシルエットが洗練されていく。

さらに、俺は設計図の『足回り』を見て、エプロンのポケットに手を入れて口を挟んだ。

「キャタピラの接地圧が高すぎるんだ。重機やトラクターと同じだよ。泥に沈むなら、履帯キャタピラの幅を1.5倍に広げて、地面に接する面積を増やせばいい。あと、車輪を独立させてサスペンションのストロークを長く取れば、荒れ地でも反動を吸収できるぞ」

「と、とらくたぁ……? 農業機械の走破性を、戦車の足回りに応用するじゃと……!?」

ダイヤの『戦闘的・構造的直感ウェポンズマスター』と、大地の『農業・建設重機の知識(車両系建設機械免許)』。

二つの異質なチートが、一枚の設計図の上で奇跡の化学反応を起こす。

ササササササッ!!

「よし、完成よ! これが最適解! バーニング・設計図・ブレイクゥゥッ!!」

ダイヤが木炭ペンを置き、ドヤ顔で腰に手を当てた。

「…………」

「…………」

ガンドフは、修正された設計図を食い入るように見つめ——やがて、ワナワナと両手を震わせ始めた。

無駄な副砲を削ぎ落とした、低く滑らかな傾斜装甲のシルエット。

反動を完璧に殺す絶妙な重心バランス。

そして、どんな悪路でも走破できる強靭でしなやかな足回り。

「おおおおおお……ッ!!」

ガンドフの目から、滝のような涙が溢れ出した。

「なんという洗練された機能美! 砲の反動、車体の重量配分、泥地での走破性……ワシが十年かけて、血反吐を吐きながら解決できなかった欠陥が、わずか五分で完璧に最適化されておる!! お主ら……お主らは一体何者なんじゃァァァッ!!」

「言っただろ、ただのオカンと、大工(公爵令嬢)だよ」

俺が呆れたように言うと、ガンドフは設計図を胸に抱きしめ、俺とダイヤの足元に猛烈な勢いでスライディング土下座をかました。

「頼む!! ワシから、いや、ドンガン地下帝国からの正式な要請じゃ!! ポポロ村と我が国で、直ちに『技術提携パートナーシップ』を結んでくれい!!」

「えっ、村と国で?」

「お主らの知識とセンスがあれば、我が国の魔導兵器は百年の進化を遂げる! 対価はいくらでも払おう! 金か!? ミスリルか!? それとも最新鋭の武器か!!」

完全に俺たちの知識と技術に脳を焼かれたマッドサイエンティストは、よだれと涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、懇願の声を上げた。

こうして、ただキノコ畑を広げようとしていたポポロ村の地下開拓は——ドワーフの地下帝国ドンガンを巻き込んだ、壮大な『密輸・軍事同盟』へと発展していくことになる。

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