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トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


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EP 16

伝説のマグローザ出現と、大地の水産無双

「ギョルルルルルルルゥゥゥッ!!」

海を割って現れた伝説の魔獣『マグローザ』が、耳をつんざくような咆哮を上げた。

白銀の鱗は月光を反射してギラギラと輝き、大人が丸呑みできるほどの巨大なあぎとからは、凶悪な牙がズラリと覗いている。

「ひぃぃぃぃっ!! 化け物だァァァッ!」

「船が沈むぞ! 総員、退避ィィッ!」

甲板に駆けつけてきた班長や荒くれ者の船員たちが、マグローザの圧倒的な威容を前に、武器も持たずに蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。

「だ、大地……! 逃げて……!」

「あんなの、勝てるわけないわぁ……ッ!」

船酔いと恐怖でへたり込むヒロインたち。

だが、俺はエプロンの紐をキュッと締め直し、大きく息を吸い込んだ。

「逃げる? バカ言え。あいつは化け物じゃない。金貨3000枚の『借金返済チケット』であり、極上の『晩飯のおかず』だ!」

俺はカシャッ!とチタン合金棒を最大まで伸ばすと、船のへりに飛び乗った。

「ギョルルゥゥッ!」

マグローザが、俺を(というより、俺の足元にいる虹色のゲロを吐いたヒロインたちを)目掛けて、猛スピードで突進してくる。

五十メートル超えの巨体による、質量兵器のような体当たり。まともに食らえば、絶望丸は真っ二つだ。

だが、俺は全く動じない。

農業高校では、畑を耕すだけではなく『水産』の授業もキッチリ履修しているのだ。

巨大な魚を扱う基本は、力任せに引っ張ることではない。魚の泳ぐベクトルを利用し、陸へと誘導すること。

「無双流・水産奥義——『一本背負い(大物釣り)』!!」

俺はチタン棒の先端を、突進してくるマグローザの上顎の硬い骨の隙間にピンポイントで引っ掛けた。

そして、激突のコンマ一秒前。

自らの重心を極限まで沈め、マグローザの持つ凄まじい突進の運動エネルギーを、チタン棒と自らの体を支点にして『真上』へと変換する!

グルンッ!!

「ギョ、ギョェェェェッ!?」

マグローザの巨体が、自らのスピードを利用されて空中に跳ね上げられた。

五十メートルの超巨体が、宙返りを打ちながら俺たちの頭上を飛び越え——。

ズッドォォォォォォォンッ!!!!!

絶望丸の巨大な甲板の中央に、腹を見せてモロに叩きつけられた。

船全体が震度6クラスの激震に見舞われる。

「ウソだろオイ……!」

「あのバカデカいマグロを、棒一本で背負い投げたぞ……!?」

逃げ惑っていた班長たちが、腰を抜かしてその光景を呆然と見上げている。

だが、マグローザはまだ死んでいない。甲板の上でビチビチと巨大な尾ビレを打ち付け、暴れ狂っている。このままでは船が破壊される。

「よし、陸に上げたからには、鮮度が命だ!」

俺は跳躍し、暴れるマグローザの脳天(急所)へと舞い降りた。

包丁で魚を捌く前に行う、鮮度を保つための最重要工程。

「オカン特製——『神経締め』!!」

ドゴォォォンッ!!

俺が脳天の急所に向けて全力で突き立てたチタン棒の衝撃が、マグローザの脊髄を一瞬にして破壊した。

ビクゥッ!とマグローザの巨体が一度だけ大きく跳ね、その後、完全に動きを止めた。

「……即死……だと?」

「なんちゅう力や……バケモンかあいつ……」

静まり返る甲板。

だが、俺の『家庭科(水産加工)』の時間はまだ終わっていない。

俺は船の壁面に備え付けられていた、鯨の解体用に使われる巨大な包丁(もはや大剣)を片手で引き抜いた。

「よく見ておけお前ら。魚の三枚おろしは、骨に沿って刃を入れるのが基本だ。力はいらない、包丁の重さと滑りを活かすんだ」

俺はマグローザのエラ蓋に巨大包丁を突き立て、そのまま尾に向かって一気に走り抜けた。

ズバババババババッ!!

硬い鱗ごと、完璧なラインで身と骨が切り離されていく。

背中側、腹側、そして裏面。

流れるような刃の軌跡は、もはや芸術的ですらあった。

「……すげぇ……」

わずか三分。

五十メートルの巨大魔獣は、見事なまでに美しい『赤身』『中トロ』『大トロ』の巨大なブロック肉と、綺麗な中骨へと解体されてしまった。

「ふぅ……。血抜きも完璧だ。極上のマグロ肉だぞ」

俺が額の汗を拭い、切り分けたばかりのツヤツヤと輝く『大トロのブロック』を掲げて見せた。

「…………」

「…………ゴクリ」

さっきまで船酔いで虹色のオロロを吐き、死にかけていたはずの四人のヒロインたち。

彼女たちの瞳に、再び強烈な光(食欲)が宿っていた。

「だ、大地……それ、お刺身で食べたら……絶対美味しいわよね……?」

「大トロ……醤油弾くくらい脂が乗ってますぅ……ジュルリ」

「借金も返せるし……お腹も満たせる……最高ですわ♡」

「お前ら、現金すぎるだろ」

俺は呆れながらも、思わず笑みをこぼした。

「班長! この『伝説のマグローザ』の切り身、金貨3000枚の価値は十分にあるな!?」

俺が声を張り上げると、腰を抜かしていた班長が、ガタガタと震えながら何度も頷いた。

「あ、ある! あるどころか、こんな完璧に血抜きされた極上品、金貨5000枚でも買い手がつく! あ、あんたたち、借金完済だァァァッ!!」

「「「やったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」

夜の海に、ヒロインたちの歓喜の叫びが響き渡った。

FXでの大暴落、チンチロリンでの大敗北、そして虹色の船酔い。

地獄の底まで落ちた俺たちは、マグローザの一本釣りという究極の『水産無双』により、見事、一夜にして金貨3000枚の借金をチャラにすることに成功したのである。

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