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トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


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EP 15

絶望の船酔いと、高貴なる虹色の撒きオロロ

「イカサマだ! 今のは絶対にシゴロ賽(4・5・6しか出ないサイコロ)だろ! 俺の目は誤魔化せないぞ!」

俺はヒロインたちを庇うように前に出て、班長の胸ぐらを……掴む前に、チタン合金棒でどんぶりの中のサイコロを弾き飛ばした。

「おいおい、言いがかりはやめてくれよオカン兄ちゃん。サイコロならほら、ちゃんと『1』も『2』も『3』もあるぜ?」

班長がニヤニヤしながら、床に転がったサイコロを拾い上げて見せた。

……クソッ、すり替えやがった。

どんぶりに投げ入れた瞬間には確かにシゴロ賽だったが、回収するコンマ一秒の間に、袖口に隠し持っていた通常のサイコロとすり替えたのだ。完全なプロのイカサマ師の業である。

「証拠がねぇなら、負けは負けだ。お前ら、これで前借りの1万Kも全損。さらにシゴロの二倍払い分で、船底でも『多重債務者』の仲間入りだなァ! 明日からマグロのハラワタ漁り、馬車馬のように働いてもらうぜェ!」

周囲の屈強な荒くれ者たちが「ギャハハハッ!」と下品な笑い声を上げる。

「あ……あぁ……」

「私の、私の愛と富が……海の藻屑に……」

キャルルとリーザが、真っ白な灰になって床に崩れ落ちた。

ダイヤとルナも、完全に瞳のハイライトを失い、口からエクトプラズムのようなものを吐き出しかけている。

(……自業自得とはいえ、さすがに不憫になってきたな)

俺がため息をつき、ポケットに死守していた自分の1万Kでとりあえず水と毛布を買ってやろうとした、その時だった。

——ズグゥゥゥゥゥンッ!!!

「うおっ!?」

絶望丸の巨体が、荒波にぶつかって激しく上下に揺さぶられた。

立っていられないほどの横揺れ。遠洋に出たことで、海流が本格的に荒れ始めたのだ。

「うっ……!?」

その瞬間、床に這いつくばっていた四人のヒロインたちの顔色が、真っ白から『ドス黒い青紫色』へと一気に急変した。

考えてもみてほしい。

彼女たちは、公爵令嬢であり、次期女王であり、村長であり、トップアイドルである。

これまで空調の効いた部屋でぬくぬくと暮らし、揺れる船底のタコ部屋などという最悪の環境を経験したことなど一度もないのだ。

そこに、密室の強烈な魚の腐臭とタバコの煙、そして——『一夜にしてFXで3000万円溶かした上に、チンチロでさらに借金を背負う』という、人間の精神を破壊するのに十分すぎる極限のストレス。

それらが、激しい船の揺れと化学反応を起こした結果。

「おえぇぇぇぇ……っ! だ、大地ぃ……世界が……チャートみたいに大暴落してるわぁ……」

「お腹の中の……レバニラが……強制ロスカットされそうですぅぅ……ッ!」

「うっぷ……公爵家の……威信が……逆流……っ」

「自然の摂理が……口から出ますわぁぁ……ッ!」

「おいバカ! ここで吐くな! 俺の1万Kで買ったトイレットペーパーが全部ケツフキ(吐瀉物処理)に消えるだろうが!!」

俺はオカンの反射神経で四人の襟首をまとめて掴むと、猛ダッシュで船底の階段を駆け上がり、甲板デッキへと飛び出した。

「ほら、海に向かって吐け!! 風下に立つなよ!!」

ザパァァァァンッ!!

冷たい潮風が吹きすさぶ夜の甲板。

手すりにしがみついた四人の美女たちは、もはやアイドルの尊厳も王族の誇りも投げ捨て、大海原に向かって大きく口を開けた。

「オロロロロロロロロロロォォォォォォォォッ!!!」

「ゲロロロロロロロォォォォォォッ!!」

四人同時の、壮絶なマーライオン。

通常ならば目を覆いたくなるような惨状だが……そこは異世界最高峰の美少女たちである。

彼女たちの口から海へと放たれたそれは、前夜の『極上レバニラ定食』や、ルナキンで胃に詰め込んだ高級食材の魔力が混ざり合い、なぜかキラキラと発光する『虹色の吐瀉物』となっていた。

(……アイドルって、本当に虹色のゲロを吐くんだな……)

俺は現実逃避気味にそんなことを思いながら、背中をさすってやるため、エプロンのポケットから水筒(チタン合金棒)……ではなく、本物の水筒を取り出して蓋を開けた。

「はい、うがいしろ。胃液まで吐き出すと後が辛いからな。……全く、お前らは本当に手がかかる……」

「ぐすっ……大地ぃ……ごめんよぉ……」

「もう……ギャンブル、しませんぅ……」

涙と鼻水(と虹色のキラキラ)で顔をぐしゃぐしゃにしながら、キャルルたちが俺にすがりついて泣きじゃくる。

借金地獄の果ての、船酔いオロロ。

完全にプライドをへし折られた彼女たちを見て、俺の胸にもようやく「なんとかしてやらなきゃな」というオカンの庇護欲が湧いてきた。

——だが。

俺たちが感動(?)の反省会をしている間にも、彼女たちの放った『高貴なる虹色の撒きオロロ』は、暗い海中へと深く、深く沈んでいき……。

その強烈な魔力と極上の栄養価カロリーが、海の底で眠っていた『とんでもないモノ』を目覚めさせてしまっていた。

ゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォッ……!!!

「……ん? なんだ?」

船の揺れとは違う、海そのものが震えるような重低音。

甲板の下から、不気味な泡がボコボコと浮き上がり始めた。

「お、おい! 海面が光ってるぞ!!」

「レーダーに巨大な影! こ、こいつは……まさか!?」

見張りの船員たちが、パニックを起こして叫び声を上げる。

ザッバァァァァァァァァァンッ!!!!

俺たちの目の前で、海が真っ二つに割れた。

天を突くほどの巨大な水柱と共に姿を現したのは、全長五十メートルは下らない、山のように巨大な魚影。

全身を白銀の硬い鱗に覆われ、巨大な口からは鋭い牙が覗く、大海原の絶対的覇者。

「で、出たァァァァッ!! 『伝説のマグローザ』だァァァァァッ!!」

「嘘でしょ!?」

「あんなの……船ごと一呑みですわぁぁッ!?」

胃を空っぽにしてへたり込んでいるキャルルたちが、悲鳴を上げる。

まさか、彼女たちの『虹色のオロロ(撒き餌)』が、金貨3000枚の価値を持つ伝説の魔獣を直接一本釣り(ダイレクトアタック)してしまったのだ。

「……なるほど。借金返済のターゲットのほうから出向いてきてくれたってわけか」

俺は水筒の蓋を閉め、代わりにカシャッ!とチタン合金棒を最大まで伸ばした。

「おい、お前ら! すっこんでろ。ここからは——俺の『解体ショー』の時間だ」

揺れる甲板の上。

エプロン姿の農業高校生が、伝説の巨大魔獣を前に、不敵な笑みを浮かべて棒を構えた。

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