表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/38

EP 12

現実逃避の朝食と、ルナミス金融の豚島くん

カランコロン……♪

翌朝。ポポロ村の街道沿いに新しくオープンしたばかりの、ルナミス帝国発祥の24時間営業ファミレス『ルナキン』。

その窓際のボックス席で、俺は優雅にモーニングセットの目玉焼きトーストを頬張っていた。

「いやぁ、ファミレスのモーニングってのは、どうしてこう落ち着くんだろうな」

俺がコーヒーをすすりながらご満悦なため息をつく一方で、向かいの席に座る四人のヒロインたちは、文字通り『お通夜』のような顔をしていた。

彼女たちの前には、それぞれ頼んだはずの『メガ盛りモーニングステーキセット』が湯気を立てている。

普段なら三秒で平らげるほどの食欲魔人である彼女たちが、フォークすら持たず、ピクリとも動かない。

全員の目の下にはドス黒いクマができ、その瞳からはハイライトが完全に消え失せていた。

「おい、どうしたお前ら。せっかく俺が奢ってやるって言ったのに、一口も食べてないじゃないか。徹夜でゲームのやりすぎか?」

「…………ねえ、大地」

村長のキャルルが、虚空を見つめたまま、幽鬼のような声でポツリと呟いた。

「ここらへんに、飛び出してくる『猫』……見かけなかったかな……?」

「は? 猫? いや、村には何匹か野良猫がいるが……」

俺が首を傾げると、隣に座っていたダイヤが、フラフラと立ち上がりかけた。

「……猫じゃ、轢かれる前に助けちゃうかもしれないわ……。ねえ大地……暴走トラックとか……ブレーキの壊れたダンプカーとか、走ってないかしら……?」

「私も、暴走トラックに轢かれて『異世界転生』したいですわぁ……♡」

ルナが、完全に焦点の合っていない瞳で、ニッコリと微笑みながら恐ろしいことを言った。

「転生したら……今度こそ、借金のない世界がいいわ……。初期スキルは何がもらえるのかしら……息をするだけで口座にお金が振り込まれるスキルがいいわね……ぐへへ……」

「な、何を言ってるんだお前ら!?」

俺はたまらずテーブルをバンッ!と叩いた。

「お前ら、すでにファンタジーの異世界ここの住人だろうが!! これ以上どこに転生する気だ!? 現実逃避も大概にしろ!」

俺のオカン的ツッコミにも、彼女たちは「ははっ……現実……そうね、これが現実……」と乾いた笑いを漏らすだけだった。

(……おかしい。いくら徹夜でゲームをしたからって、ここまで魂が抜け殻になるか?)

俺の胸に、嫌な予感がよぎる。

結局、四人はステーキを一口も食べず、俺がタッパーに詰めて持ち帰ることになった。

***

ズズズ……と足を引きずる四人を引き連れて、村長宅のシェアハウスへと帰還した時だった。

——ドンドンドンドンドンドンッ!!

「……ッ!?」

玄関の木製の扉が、蝶番がぶっ壊れんばかりの凄まじい勢いで叩かれた。

村人の遠慮がちなノックではない。明確な敵意と、暴力的なまでの『圧力』を伴った打撃音だ。

「な、なんだ朝っぱらから?」

俺が不審に思いながら扉を開けると——そこには、異常な威圧感を放つ一人の男が立っていた。

丸太のような太い首、はち切れんばかりの筋肉が詰まった巨体。

派手な柄物の半袖シャツの上からでも分かる凶悪なガタイに、坊主頭。そして、目元には冷酷な光を放つ丸メガネ(サングラス)をかけている。

「……おう。オラッ、開けろや」

男は、ドスの効いた関西弁じみたイントネーションで低く唸り、ズカッと土足で玄関に踏み込んできた。

「な、何ですかあなたは! ここは村長の家だぞ!」

「村長ォ? ああ、知っとるわ。俺はルナミス金融の『豚島ぶたじま』ちゅうもんや」

豚島と名乗ったその男は、丸メガネの奥の冷たい目で、俺の背後に隠れてガタガタと震え出した四人のヒロインたちをねめつけた。

「おたくの村長はんと、その後ろのネーチャンたち……。ゆうべ、ウチの会社のFX口座で、えらい派手に飛ばしてくれましたなァ」

「えっ……FX?」

「純金100キロの証拠金を全損させた挙句、強制ロスカットの『追証おいしょう』が払えとらん。……金貨3000枚や」

「さ、三千万円!?」

俺は素っ頓狂な声を上げ、振り返ってキャルルたちを見た。

四人は「ひぃぃぃぃっ!」と悲鳴を上げ、お互いに抱き合ってガクガクと震えている。

「ちょ、ちょっと待ってください! ゲームの負け金が金貨3000枚!? そんなの、ただの詐欺——」

「詐欺やとォ?」

豚島が一歩前に出る。

それだけで、大気が軋むような凄まじいプレッシャーが俺たちを襲った。こいつ、ただの取り立て屋じゃない。裏社会を力で生き抜いてきた、本物の修羅のオーラだ。

「ゲームちゃうぞ。ウチは正規の魔導金融業者や。同意書にはキッチリ『元本割れのリスク』も『追証の義務』も書いたるわ。……お前ら、借りたもんはキッチリ返してもらうで」

豚島が、懐から分厚い借用書を取り出し、ドンッ!と壁に突き刺した。

そこには、キャルルたちの魔力認証サインがハッキリと刻まれていた。

「……終わった。私の人生、終わったわ」

「お母様、お父様……公爵家の恥さらしをお許しください……」

キャルルとダイヤが、その場に膝から崩れ落ちる。

のどかな村のシェアハウスが、一瞬にして闇金ウ〇ジマくんの債務者ルームへと変貌してしまった。

「トイチ(十日で一割)の利息がつく前に、耳揃えて返してもらうで。……払えんのやったら、臓器売るか、裏社会ダークウェブのマグロ漁船に乗ってもらうしか——」

「——私が責任を取りますわ!!」

絶望の淵で、突如としてルナが立ち上がった。

彼女の目は、完全にイカれていた。

「る、ルナ!? お前、どうする気だ……って、なんだそれ!?」

俺は目を剥いた。

エルフの次期女王たるルナの手に、どこから取り出したのか、ギラリと光る『医療用メス』が握られていたのだ。

「はい♡ 大地さんの腎臓を、このメスで取り出して売ればいいんですの♡」

「はあァァァ!?」

「私の『超回復魔法』があれば、大地さんの腎臓なんて数秒で元通りに再生しますわ! つまり、無限に取り出して無限に売れる、最強の錬金術ですの! さぁ大地さん、ちょっと横になって……♡」

「ひぃぃぃぃぃぃっ!! やめろ馬鹿ァァァッ!!」

俺は全力でルナから距離を取った。

「コンプライアンス違反だろ!! 倫理的にもプラットフォーム的にも完全アウトなBAN行為だ!! 世界(小説)が打ち切りで終わるわァァァッ!!」

異世界スローライフは完全に崩壊し、借金地獄と無限臓器売買の恐怖が、ポポロ村の朝を血に染めようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ