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トイレの扉を開けたら異世界でした。ハズレ(?)スキル【家庭科】とチタン棒で、大陸最恐のポンコツ美女4人のオカンになります!?  作者: 月神世一


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EP 8

キュイン!脳が焼かれる音と、地獄のハイエナアイドル

キュインッ! キュイィィィィンッ!!

ジャラララララッ!! ピロリロリロリィィン!!

「…………ここは、魔界か?」

ルナミスパーラー・ポポロ支店の店内に足を踏み入れた俺は、あまりの光景に絶望の声を漏らした。

タバコの煙(※魔導葉巻)と、鼓膜を破らんばかりの電子音。そして、台に向かって一心不乱に銀玉を弾き続ける、完全に目が死んだ農民たち。

そんな地獄の光景の中で、一際やかましい音を立てているシマ(列)があった。

新台『CR異世界転生トラックでドン』のコーナーである。

「いっけえぇぇぇっ! トラック! もっとスピード出して私を轢きなさァァァイッ!!」

台をバンバンと叩きながら、血走った目で画面を凝視しているのは、公爵令嬢のダイヤだった。

液晶画面の中では、疲れ切った社畜の男が交差点に差し掛かっている。そこへ、猛スピードで突っ込んでくるダンプカー。

『ドーン!!』

画面が暗転し、無音になる。

……ハズレか? とダイヤが息を呑んだ、その瞬間。

『おめでとうございます。あなたには特別なスキルを与えましょう』

液晶画面に、神々しい後光と共に『女神ルチアナ(この世界の創造神)』が全画面でカットインした。

パチンコにおける最強の確定演出である。

キュイイイイイイイイインッ!!

ピカピカピカピカッ!!

「あぁぁぁぁぁっ……!! キュイイインですわぁぁぁぁっ!!」

けたたましい確定音と強烈なフラッシュを全身に浴びて、ダイヤが恍惚の表情で天を仰いだ。完全に脳の報酬系ドーパミンを焼かれた、重度のギャンブル依存症の顔だ。

借金に苦しむ公爵令嬢が、一発逆転のギャンブルという最悪の沼に頭まで浸かってしまった瞬間である。

「お、お前ら……本当に公爵令嬢かよ……」

俺が頭を抱えていると、足元でカサカサ……と不気味な音がした。

見下ろすと、そこにはジャージ姿の少女が、四つん這いになって床を這いずり回っていた。

「ぐへへ……落ちてる、落ちてるわぁ……」

リーザだ。

彼女は両手にガムテープを『粘着面を外側』にしてグルグル巻きにしており、ゴキブリのような素早さで床を這い回っては、客が落とした『銀玉』をペタペタとくっつけて回収していた。

「一個四円……百個拾えばサバ缶と交換できる……! 他人の不幸(落とし玉)は蜜の味……私こそがパチンコ屋の清掃員ハイエナ……ぐへへへっ!」

「やめろォォォッ!!」

俺はたまらずリーザの首根っこを掴んで引っ張り上げた。

「トップアイドルの尊厳はどこに置いてきた!? 床を這いずって他人の銀玉をガムテープで拾うなんて、タダ活どころかただの奇行だぞ! 保健所に通報されるわ!」

「放して大地さん! あそこの角台の下に、三発(十二円)落ちてるのよォォォッ!」

リーザが手足をバタバタさせて抵抗する中、今度は別のシマから怒声が上がった。

「おいコラ客ァ! ちょっと事務所までツラ貸せや!!」

見ると、エルフの次期女王ルナが、屈強な黒服の店員二人に両肩をガッチリと掴まれていた。

「えっ? な、何ですか乱暴な! 私はただ、純粋に遊戯を楽しんでいただけですわ!」

「とぼけんな! 銀玉が物理法則を無視して、空中で直角に曲がってV入賞(大当たりの穴)に入りまくってただろうが! ゴト行為(不正)は犯罪なんだよ!!」

「ち、違いますわ! 私の念動力テレキネシスが、銀玉の軌道を善意で少しだけサポートしただけで……ひぃっ! だ、大地さん助けてぇぇぇ!」

ズルズルと裏の事務所へ連行されていく次期女王。

もはや擁護のしようがない、完全なる物理チート(犯罪)である。

「あーっはっはっは! パチンコって面白〜い! こんなに簡単に銀玉が増えるなんて、村の財政も安泰ね!」

その横では、村長のキャルルがドル箱(玉を入れる箱)を山のように積み上げ、ウサギ耳を上機嫌に揺らしながらハンドルを握っていた。

完全にビギナーズラックで味を占め、パチンコに狂ったダメ村長の姿がそこにあった。

「…………」

俺は、エプロン姿のまま、騒音と狂乱の渦巻くパチンコ屋の中心で、静かに天を仰いだ。

「もうカオスだよおおおおッ!!」

俺の悲痛な叫びは、けたたましい軍艦マーチにかき消された。

「誰も農作業しないし! 次期女王は連行されるし! 公爵令嬢は脳を焼かれてるし! アイドルはガムテープで床を這いずってるし!! この村の第一産業(農業)、完全に崩壊したじゃないかァァァッ!!」

異世界スローライフはどこへやら。

俺たちポポロ村の住人は、資本主義の生み出した『魔の遊技場』に、完膚なきまでに敗北しようとしていた。

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