第18話 生徒会選挙の幕は、上がった
高校デビューに、憧れていた。
中高一貫だから、
校舎も、
顔ぶれも、
ほとんど変わらない。
それでも、
新しい蛍光ピンクの靴を履いて、
私は、期待でいっぱいだった。
家は、変わらない。
学校の環境も、変わらない。
でも、
何かは、
変えられるかもしれない。
それが、
生徒会の選挙だった。
その幕は、
ついに、上がった。
壇上に立った私が、
何を喋ったのか。
正直、
よく覚えていない。
頭の中は真っ白で、
ただ、
原稿のどこかを
必死に追っていたと思う。
それでも、
結果は、悪くなかった。
兄弟の票も入って、
結構な数の票が集まった。
四百票を超えていた。
逆転できるかもしれない、
と思った。
でも、
結果は、敗戦だった。
私は、
書記長には、
なれなかった。
そして、
一年間、
敗北の象徴として、
ふつうの一般役員をすることになった。
学年を飛び越えて選挙に出ることは、
この学校では、
初めての試みだった。
だから、
みんな、
固唾をのんで
結果を見守っていた。
学年が下の子が、
書記長に選ばれたことは、
学校の歴史の中で、
一度もなかった。
私は、
その壁を、
越えられなかった。
家に帰ると、
母は、
すでに知っていた。
「生徒会に出るなんて、聞いてない」
玄関に立った私に、
そう言った。
「兄弟に、泥を塗った」
声が、
だんだん大きくなる。
何を言われても、
私は、
黙っているしかなかった。
罵声は、
夜になっても、
止まらなかった。
靴箱の中で、
蛍光ピンクの靴が、
そこだけ、
やけに明るく見えた。




