第15話 生徒会に入りたかった理由
第15話 生徒会に入りたかった理由
高校デビューを果たしたかった。
陰でひっそり佇んでいるだけの
図書委員のままでは、
どうしても嫌だった。
生徒会に入りたかった。
理由は、
かっこいいからでも、
内申のためでもない。
家に、
私の居場所がなかったからだ。
中学の頃から、
家では毎日のように言われていた。
「大根足」
「おしりでかい」
鏡を見るたびに、
その言葉が
自分の体にくっついているようだった。
制服のスカートの丈を
直すことすら、できなかった。
「あんたは馬鹿だから」
それも、
口ぐせのように言われた。
けれど、
テストの点数が悪くても、
なんとも言われなかった。
良くても、
「まぐれでしょ」で終わる。
親にとって子どもは、
自分たちの働きバチだったから、
私の進路など、
どうでも良かったのだ。
勝手に産んでおいて、
おかしな話だ。
私を馬鹿だと言う親の方が、
本当は、偏差値が低かった。
それを知ったのは、
ずっとあとのことだ。
当時の私は、
それを知らなかった。
知っていたとしても、
言い返せなかったと思う。
言い返した日の夜が、
もっとひどくなることを、
体が覚えていたから。
兄弟にも、
毎日のように言われていた。
「死ね」
朝のあいさつみたいに、
当たり前に。
最初は、
傷ついていた。
そのうち、
傷つくことにも
疲れてしまった。
やりたいことは、
何ひとつ、させてもらえなかった。
部活は禁止。
放課後の寄り道も禁止。
門限は、
一分でも遅れたら
家の空気が変わる。
時間を、
全部、
家に縛られていた。
反抗する方法が、
私にはなかった。
だから、
決めた。
家の中で
自分を好きになれないなら、
家の外に、
自分を好きになれる場所を作る。
それが、
生徒会だった。
生徒会に入るには、
まず、
執行委員にならなければならない。
希望者は、
何人かいた。
でも、
私は本気だった。
誰よりも、
その席が欲しかった。
そして、
勝ち取った。
無事に執行委員になれた。
嬉しかった。
けれど、
それだけでは、
収まらなかった。
もうひとつ、
狙いがあった。
先輩を抜かして、
書記長になりたかった。
行事ごとに、
「優勝は、〇〇グループです!」
そう言ってみたかった。
大勢の前で、
名前を呼ばれる側ではなく、
呼ぶ側になりたかった。
そのためには、
生徒会選挙に出ることが
必須だった。
私は、
生徒会に入ることに
必死だったわけではない。
家で、
いじめられすぎて、
生きることに
必死だっただけだ。
だから、
よく知らない担任の先生に、
書記長の立候補の紙を
差し出した。
手が、
少し震えていた。
「……わかった。出しておくよ」
先生は、
それだけ言った。
こうして、
私は、
なんとか選挙まで漕ぎつけた。
そんな私の隣で、
悠々自適に
執行委員になっていたのが、
齋藤拓真だった。
必死で席をつかんだ私と、
ふつうの顔で、
そこに座っている彼。
まだ、
知らなかった。
その「ふつう」が、
私にとって、
いちばん遠いものだったことを。




