第14話 ふつうの人
齋藤拓真の名前が気になって、
いつの間にか、
どんな人か確認するようになっていた。
遠くから、
ほんの少し見るだけ。
そうすると、
あれ、と思った。
ふつうの人じゃん。
背が飛び抜けて高いわけでもない。
目立つ顔でもない。
教室の端っこで、
友達と笑っているだけの男子だった。
なんで、モテてんの。
不思議だった。
少し、違和感を持った。
正直に言うと、
私は面食いだった。
だから、
同じ学年の齋藤拓真の隣にいる正源司学人の方が、
好みだった。
きれいな顔をしていた。
見ているだけで、満足できた。
放課後、
テニスラケットを持って、
ふたり並んで歩いていく。
両方を交互に見るのが、
日課のようになっていった。
その後ろ姿とすれ違う。
最初は、
たまたまだと思っていた。
次の日も、
その次の日も、
同じ時間に、同じ場所で。
気づいたら、
それがいつの間にか、
いつもの日常になっていた。
私は、
なんとか出世して、
図書委員から昇格して、
図書委員長になっていた頃だった。
本の貸し出しカードを整理しながら、
窓の外を見る。
あの時間になると、
ランニングしているふたりが通る。
見ているのか、
見てしまっているのか。
自分でも、よくわからなかった。
齋藤拓真との出会いは、
こうして始まった。
好きとかじゃなく、
ただ、気になるだけ。
そう思っていた。
そして、
一番の青春で、
ほんとうの地獄は、
ここからが始まりだった。
高校一年生の春、
それは訪れた。
ずっと好きだと聞かされていた
相澤莉奈と、
齋藤拓真、
そして、私。
三人が、
同じクラスになったのだ。
黒板に貼り出された名簿の前で、
私は、
しばらく動けなかった。
仲の良いメンバーや
初めてのメンバーごった返していた中に、3人。
その頃の私は、
なんにも考えていなかったので、
それが不運な事に全く気づいていなかった。




