おやつとおまけ
昨日、やるって言ってたのに更新忘れてました!ごめんなさいm(*_ _)m
「――甘くてうまうまですね……!」
おやつのみかんゼリーをご機嫌そうに口へ運んで味わう明澄は、満足感で頬を柔らかく膨らませていた。
さっきまで落ち込んでいた割に、甘いものには気も表情も緩むという訳だ。
(無邪気なやつめ……)
「明澄」
「どうしました? 私のはあげませんよ」
微笑ましい横顔を眺めているうちに、ふと彼女の唇の端にほんの小さな半透明オレンジ色の固まりがついているのに気づく。
拭いてあげようとしただけなのだが、明澄はゼリーを遠ざけるように守った。
「食いしん坊じゃねぇよ。いや、口元にちょっとゼリーついてたからさ」
「えっ。うわ、はずかしい……」
「ははは。なんだか今日は子供っぽいな」
「そんなことないですう。庵くんの方がよっぽどですよ。あの子にやきもち妬いてたくせに」
比較的毎日穏やかな明澄だが、今日は特にご機嫌だ。そういう日は幼さが戻ってくるので微笑ましくて笑ったら、彼女は唇を尖らせる。
すぐに言い返してくるのはいつも通りだが。
「やきもちじゃなくて敵意だぞ」
「そんなの根本は同じでしょう。仕方ありませんね、庵くんは」
小気味よくおどける庵に、呆れと愛おしさを孕んだ溜め息を吐く明澄は手にしていたゼリーとスプーンを皿の上に置く。
それから、間半人分の距離を下から覗き込むよう、猫が擦り寄ってくるみたいに縮めてきた。
上目遣いの瞳には艶やかな光を宿していて、庵は思わず生唾を飲んだ。
「……ねぇ。して……あげましょう、か……?」
最近あまり重ねることのなかった唇でか細くもはっきりと、その気を伝える明澄にきゅっと心臓が高鳴る。
先刻の愚痴を聞かれていたらしい。両親は買い物に出かけているし、今と思ったのだろう。彼女から言い出すのも珍しく誘い出すような口調の割にその耳は赤い。
なのに平静を装ったのは庵の悪い所だった。
「なにを?」
「それを、女の子に言わせるならしません」
聞き返した庵の愚行に明澄が、つんと背く。
ここでまた失策を重ねる訳にはいかない。
キスはしたいし、明澄に触れたい。
そう思った時には明澄へ迫っていた。
「うそうそ。したいです……てかする」
すうっと伸びた右手が明澄の顎を持ち上げ、若干強引に顔を寄せて唇を奪った。
ぱちりと瞳を大きくさせた彼女は「んむ……!」と喉を鳴らして、びくうっと体を揺らす。
反対の腕で腰から支えつつ彼女を引き寄せて、その唇の柔らかさを味わい続けた。
明澄は委ねるようにしながらも、されるがままで彼の胸に手を添えて受け入れては、普段より長い口づけに息継ぎを頑張っていて、それが庵に火をつける。
ゼリーの甘い味を堪能するように啄んだり、唇で舐め合って気付いた時には静かなリビングに荒い息だけが木霊するようだった。
「……し、……ぬかと思いました」
唇に当てた手。人差し指第二関節の腹で押さえて余韻を鎮める彼女は、息を整えながら真っ赤になった顔で見上げる。
上気した頬にまだ荒い吐息、乱れた髪が少し汗ばんだ額に張り付いたそこはかとない事後感はとても煽情的だった。
「すまん。そんなに苦しかった?」
「ち、ちがいます。あんな風な庵くん見た事なくて……どきっとしちゃって。今のはちょっとメロすぎました」
「ふむ。今後はメロい男として売っていくか」
「だ、駄目ですっ。そんな事したらただでさえかっこいいのに、庵くんがモテモテになっちゃいます……!」
ジョークだが、明澄には通じなかったのか焦った様子でぶるぶると首を振るのが可愛らしくて、つい目元と口元が緩む。
嫉妬されるのは時に気持ちが良いものだと庵は目を細めて、軽く笑みを落とした。
「はは。流石にそんな訳ないって……」
愛おしく困っている明澄に悪戯をしたくなって、まだ唇が乾かないうちに、言い終えて間もなく明澄の唇に自分のものを重ねた。
明澄もちょっとは準備していたのか、驚く事はなかったが、それでもか弱く鳴くように喘ぐ。
押し当てた唇は深くを求めず、数度食んで離れれば、弱々しく明澄が睨んだ。
「味を締めましたね?」
「喜ぶと思って」
二人の間には互いの弱点も喜ぶ事も少しずつ晒されており、明澄はリードされる方が性格的にも気持ち的にも嬉しい方であると判明している。
それに意外と強引なのも嫌いじゃないというか、好きかもしれないというのもここ最近で露出しているくらいだ。
庵が悪い顔でにやっとすれば、なんだかんだ嬉しいのが隠せない明澄はきゅうと目を瞑っては悔しがっていた。
「くっ。悪い男になりましたね……! 悔しい」
「でも良い感じ?」
「はい、とっても……」
瞑っていた目をゆっくり開いて、恥ずかしそうに頷く。
それがまた愛らしくて、そっと庵が肩に手を置く。今度の明澄は察して再び瞳を閉じ自らから顔を寄せてきて、庵はそれに優しく口づけた。
そうして、食べかけのゼリーそっちのけになったが、それを知っているのはこの二人といつの間にか庭に戻ってきてこちらを眺めているあの黒猫だけである。
両親がいない所では、水着になったりとか色々してますねー。
もう早く『――自主規制――』してもいいんだよ?





