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第六話 被害者Aさん

【解説】

『検察官とは

容疑者の犯罪を立証する為に起訴(裁判を起こす)するか判断し、

裁判で被告人が有罪であると立証する存在。

被害者の味方として裁判で争う。


弁護士とは

被告人の無罪を主張し、被告人を守る存在。

被告人の味方として裁判で争う。

裁判では弁護士は弁護人と呼ばれる。


容疑者は起訴されると呼び名が容疑者から被告人となる。』




 検察からの起訴が始まり、Y崎は検察側に取り次いでもらい

事実確認の為、被害者Aさんに会う約束を得た。

約束の日、都内某所の喫茶店にてY崎が待っていると

一人の女性が現れた。


Y崎

「Aさんですか?」

Aさん

「……はい」

Y崎

「初めましてY崎と言います」

Aさん

「知ってます。テレビ出てますよね」

Y崎

「あ、それはどうも、どうぞ座って話しましょうか」


 Y崎と被害者Aさんはテーブルを挟んで互いに向き合って座った。

Aさんは疑念の表情を隠す事も無く無言でY崎に視線を送る。

Y崎が質問を始めた。


Y崎

「今日はお越し頂き有難うございます。思い出したくない事も

あるでしょうがご協力お願いします」

Aさん

「……はい」

Y崎

「Aさんから事件の一部始終をお聞かせ願えますか?

出来るだけ詳細に教えてくれると助かります」

Aさん

「電車に乗ってたらいきなり後ろからお尻を触られたんです。

後ろを見てその触った人に向かって、やめて下さいって言いました。

そしたら横の男の人がそいつの手を掴んで止めてくれたんです。

そのあと犯人は駅のホームに出たら逃げて行ったんです。

その人がまた捕まえてくれたから良かったですけど、

本当に許せません」

Y崎

「……そうですか。よく思い出して欲しいんですが、

本当に人の手で触られましたか?例えばカバンが当たって

それがお尻を触られたと思ったとか、そういう事は無いですか?」

Aさん

「絶対ないです。それ警察にも何度も聞かれました。

いい加減にして下さい。あの感触は絶対カバンじゃありません。

確かに人の手の感触です。だって、ただ当たっただけとかじゃ無くて

手の平で触ったり撫でたりした感触が確かにありました。

絶対触ろうとしてる時の触り方です間違いありません。

それにその時犯人はカバンは持って無かったですよ。

絶対手で触ってます」


 Y崎は先日の幸雄との面会での幸雄の証言を思い出した。

幸雄

「確か左手はつり革で、右手は空いてたと思う」


Y崎

(…証言に矛盾は無いわね)

「そうですか、Aさん、触った手が今回の被告、犯人の手だと

自信を持って言えますか?例えば他の人が触っていて

それで真後ろにいた犯人に触られたと思ったとか…」

Aさん

「それも絶対無いです。私、触られた時、

振り向いて私のお尻触ってる瞬間の手をこの目で見て

その手から腕、顔って追って見て確認したから絶対あの犯人です

間違いありません。私、前から思ってたんです。

痴漢にあったらちゃんと犯人見つけなきゃって、

痴漢冤罪しちゃったら可哀想だからって思ってたんです。

……あなたと違ってね」

Y崎

「……そ、そうですか……あ、あの、

犯人を取り押さえた男性とは面識はありますか?」


 その時、Aさんの表情が険しくなった。


Aさん

「…いえ、知りません。私を助けてくれた善人です」

Y崎

「…そうですか……今日はわざわざ来てくれてどうも…」

Aさん

「ねえ!」

Y崎

「……はい?」

Aさん

「疑ってるの?……私だけじゃなくて、私を助けてくれた男性まで?」

Y崎

「……申し訳ありません、これも弁護士の仕事の…」

Aさん

「何であんな犯人を弁護するのよ!?

あんたテレビでもSNSでも散々言ってたわよね?

痴漢は許さないって、痴漢撲滅なんとかにも参加してるんじゃないの?

それなのに自分の息子が痴漢で逮捕されたら罪を認めさせるどころか

弁護士になって庇うの?」

Y崎

「……そ、それは……」

Aさん

「自分で矛盾してるって思わない?そんなんだから週刊誌に

手の平返しとか書かれるのよ!自業自得よね!」

Y崎

「お、落ち着いて下さい……」

Aさん

「そうやってこっちがバカみたいに上から目線な態度がムカつくのよ!

……ねえあなたSNSで言ってたわよね?

痴漢冤罪は挙動不審な男に非があるって…それなのに

息子が逮捕されたら息子は冤罪ですって言ってたわよね?

私が悪いと思ってるんでしょ?私の勘違いだって思ってるんでしょ?」

Y崎

「・・・・・」

Aさん

「あんたみたいな二枚舌女に天罰が下ったんじゃない?

どう?大切な人が冤罪被害にあった気分は?……」


 そう言うとAさんは立ち去って行った。

Y崎はその場を動けずうつむき続ける他なかった。


つづく

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