第十三話 答え
幸雄の判決から15日後。
Y崎は弁護士の仕事を続けていた。その日の仕事を終え帰路の途中、
背後から足音が近づいて来ていた。その足音は
Y崎が曲がり角を曲がってもまだ追って来る。
恨みを持つ者の襲撃だろうかとY崎は警戒し、
カバンの中に手を伸ばし防犯スプレーを握りしめた。
追い続けてくる足音の主が痺れを切らすようにY崎を呼んだ。
「よう、コメンテーターさんよ」
その声は聞き覚えのある声だった。Y崎は背後を振り向いた。
Y崎
「!あなたは……」
Kさん
「俺の事、まだ覚えてるか?」
そこに居た人物は幸雄を私人逮捕したKさんだった。
Kさん
「検察から聞いたよ。あんた中々やるねえ、俺のSNSのアカウント
特定したらしいな。追い詰めてくれるじゃねえか」
Y崎
「何?どういう事?」
Kさん
「あんたに事件の真相を教えてやろうと思ってな、
今日は答えを見せに来てやったんだよ」
Y崎
「…答えって何よ?」
Kさん
「あんたの後ろに居るよ」
そう言われY崎が後ろを振り向いた時、
Y崎
「あ、あなた!」
Aさん
「……有罪判決で残念ね、コメンテーターさん」
そこには被害者Aさんが立っていた。
Y崎
「……あなた達、何が目的なの?」
AさんとKさんは徐々に横並びになりY崎と向き合い話し始めた。
Aさん
「私達、痴漢冤罪被害者の会に参加してるのよ。そこで知り合ったわ。
あなたの息子の痴漢は、私達が仕組んだ捏造よ!」
Y崎
「!……何ですって?」
Aさん
「……私は父さんが痴漢冤罪で逮捕されて、そのせいで私の家族は
メチャクチャになったわ。父さんは仕事も無くなって、
稼ぎも無くなって……ホントに耐えられない毎日だったのよ……
あなたSNSで言ってたわよね?
例え冤罪でも間違えられた男に非があるって、
だからあなたに冤罪被害にあうって事がどれだけつらいか、
どれだけ苦しいか、分かれせてやろうと思ってこの人と手を組んだのよ」
Y崎
「…本当なの?」
Aさん
「本当よ。あなたの息子の行動パターンは探偵を雇って調べたわ。
それでこの人と一緒にあなたの息子と同じ電車に乗って近くに立って
痴漢を捏造してやったのよ」
Y崎
「……そんな…酷いわ!」
Kさん
「因みに、あんたの息子、駅に降りたら逃げただろ?
あれはな、俺がわざと力を抜いて逃げるように仕向けたんだよ。
今なら逃げれるって、息子さんにそう思わせる為にわざと。
少しでも罪を重くさせて実刑にする為にな」
Y崎
「…何の為にそんな事したの?」
Aさん
「あなたに復讐する為に決まってんじゃない!
何が冤罪でも間違えられた男に非がある、よ。よくそんな事言えるわね!
あなたのSNSの投稿見た時思ったのよ。
この女、痴漢扱いされた男がそのあとどうなるかなんて考えた事
一度も無い奴なんだろうなってね。
だから私が分からせてやろうと思ったのよ。
息子が痴漢で逮捕されるっていう一番分かり易いやり方でね」
Y崎
「…その為に幸雄を利用したって言うの?」
Aさん
「そうよ。どう?大切な人が痴漢冤罪にされる気分は?
苦しいでしょ?悔しいでしょ?納得いかないって思わなかった?」
Y崎
「・・・・・」
Aさん
「あなたの息子、会社クビにならなかった?私の父さんみたいに。
どうだった?世界中の人達みんな敵に見えなかった?
誰もあなた達に味方してくれなかったんじゃない?
皆痴漢したって決めつけて来なかった?
裁判でもそうよ。被害者の証言ばかり聞いて、
被告の証言は全く聞かなかったんじゃない?」
Y崎
「・・・・・」
Aさん
「はっきり言っておくわ。
この国はね、女の味方はするけど男の味方はしないのよ。
あなたみたいな人が居るから!
テレビでコメンテーターなんかやってるから!
……どう?痴漢冤罪被害にあうって事がどういう事か、
少しはわかったかしら?
もう判決から14日以上経ってるから控訴も出来ないわね。
……このまま、私達と同じ苦しみを味わうといいわ……」
AさんとKさんは去って行った。
Y崎は離れて行く二人に何も言い返せず、その場に立ち尽くすしか無かった。
つづく




