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第十話 質問

 SNSの投稿だけでは証拠としては不十分、それはY崎自身も

理解していた。だが弁護士として、幸雄の母親として、

出来る事、可能性がある事は全部やっておきたいとY崎は思い

KさんのSNSのプロフィールや投稿の画像を印刷し、

書類にまとめた。




第四回公判 被告人質問


Y崎

「新たな調査結果を入手しました、ご覧下さい。

今日用意した書類は、被告人を私人逮捕したKさんの

SNSのプロフィールと過去の投稿を印刷したものです。

このようにKさんは痴漢冤罪に対して強い嫌悪を持っています。

そして被告の母、つまり私への批判の投稿から

私へ強い恨みを持ってる事が予測できます。

以上から、私への攻撃の為に私の息子、つまり

被告人の痴漢を、捏造したと言えます」

検察

「異議あり!すべて弁護人の一方的な推測であり、

捏造したという証拠にはなりません!

この書類からわかる事はKさんが痴漢冤罪を嫌悪してる事、

それだけです。今回の痴漢事件とは一切繋がりません!」

裁判官

「……弁護人の提出した証拠は信用性に欠ける為、

不採用とします」


 Y崎が用意した書類は証拠としては扱われなかった。

それはY崎自身も予測していた。Y崎にこれ以上出来る事は

この書類の情報が裁判官の判決に少しでも響くように、

幸雄の無罪に傾くように願う事だけであった。


裁判官

「それではこのまま被告人質問を始めます」


 Y崎が息子の幸雄に質問を重ねて行く。


Y崎

「……あなたは被害者Aさんに痴漢をしましたか?」

幸雄

「いいえしてません」

Y崎

「Aさんの後ろに立ってた時左手と右手はどうなってましたか?」

幸雄

「左手はつり革を握って、右手は下ろしてました」

Y崎

「Aさんは触ってる手を確認して腕、顔、と視線を上げて

あなたの顔を確認したと言ってますが、そのような動作はありましたか?」

幸雄

「いいえ、いきなり後ろの僕の方を振り向いて

やめて下さいって言いました」

Y崎

「私人逮捕したKさんはあなたがAさんに痴漢してる途中の手を掴んだと

言ってますが、間違いないですか?」

幸雄

「いいえ、何も触って無い右手を突然掴まれました。その後

一方的に痴漢にされました」

Y崎

「Aさんは、犯人、つまりあなたが謝りもせず罪も認めていないと

言ってましたが、なぜあなたは謝らなかったのですか?」

幸雄

「簡単です。僕は痴漢なんてしてないからです。

謝る理由が最初からありません」

Y崎

「以上で私からの質問を終わります」




 続いて検察からの質問が始まった。


検察

「あなたは痴漢をしてないと断言できますか?」

幸雄

「はい、断言できます」

検察

「Aさんは触った手を腕、顔、と視線を追って確認したと言ってますが、

Aさんが嘘をついてるという事ですか?」

幸雄

「そうです。被害者は嘘をついてます」

検察

「私人逮捕したKさんも、あなたが痴漢してる途中の手を掴んだと

言ってますが、Kさんも嘘をついてるという事ですか?」

幸雄

「そうです。Kさんも嘘をついてます」

検察

「面識のない二人が、二人とも嘘をついてるという事ですか?」

幸雄

「そうです。二人とも嘘をついてます」

検察

「そもそも、二人が嘘をつく理由がありますか?」

幸雄

「あります。僕はコメンテーターでもある母さんの息子だから、

母さんのアンチから報復や嫌がらせなどの攻撃として

痴漢を捏造された可能性があります。

さっき母さん、弁護人が提出した書類にも

Kさんが母さんに恨みを持ってる事が書いてるたと思います」

検察

「……質問を変えましょう。あなたは電車から降りた後

Kさんを振り払って逃走しましたね?」

幸雄

「……はい、逃げました」

検察

「痴漢してないのなら、何故逃げたのですか?」

幸雄

「痴漢に間違えられたらこの国じゃ勝ち目は無いと思って

怖くなってパニックになって逃げました。

痴漢したからじゃないです」

検察

「では逃走した事は認めるんですね?」

幸雄

「・・・・・」

検察

「答えないという事でしょうか?」

幸雄

「……逃げました」

検察

「私からの質問は以上です!」




 そして被告人質問は終わった。

出来る事はすべてやったが、裁判官の判断が無罪に傾いたかは、

Y崎は自信を持てずにいた。

直前に用意したKさんのSNSの投稿、あの情報をあと一歩の所で

確実な証拠として形に出来なかった事を、

Y崎は悔やむ事しか出来なかった。


つづく

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