Episode3:HUG US WE PART
その日は里琴と2人で街へ繰りだす。当時は流行っていたプリクラを撮れば、カラオケで歌を歌い、ゲーセンで気が済むまで遊び、洋服屋で語り合いながらも購入するモノを悩みに悩んで選ぶ。
不思議と里琴は大金をいくらでも持っているようだ。将星の稼ぎだけでこんな贅沢ができる訳でもない……だとしたら。
「里琴って何の仕事をしているの?」
「それは秘密だよ」
「教えてくれたっていいでしょ。家族も同然じゃん」
「だって……それを知ればコムルミも逃げるんでしょ?」
「逃げる?」
「こうやって一緒に遊んでくれるだけで嬉しいの。ホント」
「そっか……でも、私も私でわがままを言ってイイかな?」
「なに?」
「私も彼氏欲しいなぁっていうか」
「あぁ……コムルミも欲しくなった?」
「うん、すごく羨ましくて。それに私はこのまま指をくわえているだけだとさ、いつか里琴のことを憎んでしまいそう」
「そんなことはさせない」
「えっ」
里琴から流美の唇が奪われる。
それは街中心ビルの最上階の店。そこから見える夜景がこの2人を包むように感じられた。
「どんな夏休みよりも最高の夏休みにしてあげる」
この夏休みで決心がついたら学校を辞めよう。
その決断の時が迫っていた時のこと。
流美と里琴が自宅アパートの前に差しかった時。
将星がそこで男数人から暴行を受け続けていた。
彼は血塗れの状態。
すぐに里琴が「やめて!」と両手を広げて制止に入ろうとする。
しかし、グループの中心にいた男が大声でその里琴へと怒鳴る。
「お前!!! 言ったよなぁ!!! ボディーガードが欲しいってよぉ!!! お前に俺がどれだけ貢いでいるか知ってないワケじゃねぇだろう!? なぁ!? その恩恵で俺以外の男……それも俺の子分だぞ!? それがどういう意味なのか知っているだろうなぁ!!!」
男が振り上げた拳に里琴は目を奮わせて閉じる。
だが、その後に聞こえたのは「五味さん!?」という男たちの悲鳴。
このグループの中心人物であろう五味は流美の背負い投げをくらってKOする。続けざまに別の男が流美を背後から襲うが流美の殴打をまともにくらう。
「怪物……怪物だ―――――――――――!!!!!」
そう言って残り2名の男達は逃げ去る。
「将星!! 大丈夫!?」
「はぐ……ルミチャ……やばい……死にそう……」
将星を介抱する流美。
「里琴!!! 救急車を呼んで!!!」
「え……あ……何番だっけ?」
「119!!! 早くしろよ!!! バカヤロウッ!!!」
里琴は震える手で119へ電話をかける。のちほど110番へ流美が里琴から電話をとって連絡することになる。
将星は一命を取り留めたようだ。
病院で里琴は泣き続けた。
「大丈夫。アイツは死んでないようだよ」
「違う……流美がウチから離れていくのが怖いの!」
「えっ」
「ウチはあの五味っていうヤクザの男の女になって稼いでいたの。でも、いつか捨てられることがあるなら好きになれる男が欲しいって……」
「それでボディーガードで将星の奴を……でも、何でそれで私が里琴から離れるって話になるの?」
「今までもそうだった!! ウチが五味の女だからって見限られた!!」
「里琴……私は里琴を見捨てないよ。将星だって見捨てない。これからも仲良く友達でいようよ」
2人は自然と抱擁を交わす。
しかし、皮肉にも将星はこの出来事を機に2人と縁を切った。
流美は里琴を見捨てることはできず。また家出したままの自分を今更変えようとも思えず。そのまま里琴の家に居候することにした。
実家にある物は少しずつ新居へ持っていく。もっとも彼女が持っている物などほとんどないが。
母親は着実に廃人に向かっているようだ。その面倒をみる気にもならない。
だから学校へ通学することも適わなくなる。
「これから姉妹だね。本当の家族だよ。里琴」
流美と里琴の奇妙な青春はまだここからだった。
あの事件から間もなく一人の刑事が家にやってくる。
「事のあらましは聞いているよ。本当ならば2人とも逮捕されるべき件だけど、2人とも救われるべき女の子でもある。ああ、申し遅れたね。広島県警生活課の刑事、片岡純也だ」
そう言った彼は警察手帳をさりげなくも誇らしげに見せつける。偉そうだなと流美は呟いてもみせたが、幸い聞こえなかったようだ。
「それで……これからについてそれぞれに面白い話があってさ」
「面白い話?」
「ああ、そうだ。まず黒人の君のほう、小室さんと言ったね?」
「黒人は余計だよ。訂正してくれ」
「わかった。悪かった。訂正する。俺の友人でジムを経営している奴がいてさ。すごく君に興味を持っている。ここ広島から離れた長崎のほうになるのだけど、どうだ? いくだけいってみないか?」
「考える。里琴はどうなの? 里琴も報われる話があるっていうの?」
「ああ、君のほうは未成年だしね。具体的な話は数年後になる。が、大阪の方で元警察官のママをしている御方がいてねぇ。そこのママが君に興味を持っているときたワケだ」
「なんだよ、そのどっちも怪しい話は」
「流美。いいよ。今は何の宛てもない。その……刑事さん。ウチはそこに行けば、五味から護られるのでしょうか?」
「アイツはだいぶ長いこと、ムショの中にぶちこまれるからな。心配なんかない。ただ、どっちとも逃げ道はもうないぞ? 安藤さん、君のご家族は貴女のことを2度と家族として迎え入れてないつもりだし……小室さん、君は……」
そこで流美は自身の母の死を知る。
その夏休みはあまりにも刺激的だった。どこか非現実的なようでありつつ、現実的でもあった。
広島駅の新幹線口。流美と里琴は長く抱き合って揺れる。
それぞれの不安を紛らせるように。
海底のクラゲでも舞うように華麗に泳ぐ。
誰がみていなくてもただ生きる為に。
涼時(SAMURAI BLACKS.):まず……大怪我を負ってしまって大変な心配をかけてしまった事を心からお詫びします。怪我の回復自体は順調でサンブラの活動へは思ったよりも早く合流ができそうだと……はい。すず監督にはすぐに連絡を入れました。おれ自身は俳優として何か傷跡を残したいと思っていて。そういう……なんだろうな。焦りとかあったと思うんだけど……この役を演じて「ああ、おれだな」って思っちゃう部分もあったりして。色々驚きでした。劇中でおれの背中の墨も披露しちゃう場面があるんですけど、怖がるのかな?と思って変なポーズの一発芸をしてみた大ウケしちゃって。はい。なんか思い出に残りました。まぁそんな将星くんのリアルも観て楽しんで貰えたらと思います。おれは五味さんに感謝しています。




